●ロックへの旅:レベル・ラウザー
    (デュアン・エディ:1958)

いまの子供達のようにJ−POPで育った世代ではなく洋楽に憧れた世代にとって、ギタ
ー・インスト・バンドといって思い浮かぶのは、おそらくはベンチャーズでしょう。あの
リヴァーヴ(残響音)たっぷりのエレクトリック・サウンドで演奏されるマイナー・メロ
ディと必殺の”テケテケテケテケ”という下降フレーズには、まことに抗い難い魅力があ
ります。しかし、ロックへの旅を続けていくと、ギター・インストといえばベンチャーズ
だけではなく、その周囲には様々なサーフ・インスト・バンド(我らがビーチ・ボーイズ
も数多くのサーフ・インストゥルメンタルを残している)をはじめ多くのギター・インス
ト・バンドがあることに気がつきます。イギリスにも、シャドウズがいます。そして、さ
らに上流をたどっていくと、おそらく彼らの多くが憧れたに違いないギター・インストゥ
ルメンタルを主体としたギタリストがいることに気がつくのです。

そのギタリストはデュアン・エディという人です。この人の名前、洋楽に憧れたみなさん
は聞いたことがあるでしょうか。ベンチャーズは知っていても、デュアン・エディを知ら
ないという人は結構多いのではないかと思います。しかしエディが、その後に続いたロッ
ク・ミュージシャンに与えた影響は、日本人のぼくらが想像する以上に大きいようです。
それを象徴するエピソードとしては、エディが1987年に作ったアルバムに、なんとポール
・マッカートニーとジョージ・ハリスンが参加しているということがあげられると思いま
す(エディのギターを、ジョージのあのスライドが追いかける《テーマ・フォー・サムシ
ング・リアリー・インポータント》は絶品!です)。ベンチャーズのアルバムに、この2
人が参加することがはたして考えられるでしょうか。ビートルズの2人が参加していると
いうだけで、ロックにおけるエディの立場というものがわかると思います。

それではエディのなにが、ポールやジョージの心を捉えたのでしょうか。それは、エディ
が生み出したものが関係しているようです。ロイ・ロジャーズのようなシンギング・カウ
ボーイ(B級映画などでギターを持って歌いだすカウボーイ・スタイルのシンガー)に憧
れてギターを手にしたというエディは、19歳でバンドで働きはじめたそうです。そしてナ
ンシー・シナトラとの仕事で有名なシンガー兼プロデューサー、リー・ヘイゼルウッドと
のコラボレーションにより、1958年から60年代前半まで15曲もの全米ヒットを飛ばすので
す。ヘイゼルウッドとのコラボレーションによってエディが生み出したものは、”トゥワ
ング”と呼ばれることになる独特のギター・サウンドでした。その”トゥワング”・ギタ
ー・サウンドを決定づけたのが、エディの2枚目のシングル《レベル・ラウザー》です。
《レベル・ラウザー》のギター・サウンドこそ、エディが生み出したものでした。

《レベル・ラウザー》は、エディが19歳のときに書いた曲だそうです。この曲は、独特な
ギター・サウンドのシングル・トーン(単音)で弾かれるメロディで始ります。なんでも
、ショーのオープニングをそのようにギターだけで始めることを意識して書かれたそうで
す。そしてギターの高音側の弦を使わずに低音側の弦だけでメロディを弾くというのは、
プロデュースを努めたヘイゼルウッドのアイディアだったそうです。ヘイゼルウッド自身
が、豊かなバリトーン・ヴォイスのシンガーだったので、”低音で弾きたおす”というイ
ンスピレーションがわいたのかもしれません。しかし彼らはシングル・トーンの低音だけ
で弾くだけでは物足りなかったのか、レコーディングに大型の水槽を使い、あの独特のサ
ウンドを生み出したのです。エコーのかかった硬質なギター・サウンドは、水槽の片側に
マイク、片側にアンプのスピーカーをセットしたことで偶然生まれたと言われています。

このサウンドが、60年代に活躍した多くのミュージシャンに衝撃と影響を与えることにな
ったのです。《レベル・ラウザー》という曲は、《月の砂漠》と《聖者の行進》を足して
、そこにゴスペルとカントリーをふりかけたような不思議な印象の曲なのですが、半音づ
つ昇っていく展開には、”ゴスペルに熱狂的になっていくように”身体が反応していきま
す。ギター・サウンドを含め全てが摩訶不思議な印象にもかかわらず、この熱狂的な要素
(ゴスペルのレスポンスを思わせるサックスと人々のコーラスや声による)が入っている
ところが、《レベル・ラウザー》をより一層人々の印象に残る曲にしているのだと思いま
す。おそらくリアルタイムで聴いた1950年代のリスナー達は、楽しく踊らされつつも、あ
まりにも摩訶不思議なサウンドに、「もう一度聴きたい」と誰もが思ったのではないかと
思います。

《 Rebel Rouser 》( Duane Eddy )
cover

Duane Eddy("Twangy-Guitar")


Produced by : Lee Hazlewood
Written  by : Duane Eddy
Released    : May, 1958
Charts      : POP#6
Label       : Jamie

Appears on :Have 'Twangy' Guitar-Will Travel
1.Lonesome Road, 2.I Almost Lost My Mind, 3.Rebel Rouser, 4.Three-30-Blues,
5.Cannonball, 6.Lonely One, 7.Detour, 8.Stalkin', 9.Ramrod, 10.Anytime,
11.Moovin' 'N' Groovin', 12.Loving You

+ bonus  tracks
13.Up and Down, 14.Walker, 15.Mason-Dixon Line

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