●ロックへの旅(第二章):ウォーキン・ザ・ドッグ
    (ルーファス・トーマス:1963)

《ウォーキン・ザ・ドッグ》は、黒人シンガーのルーファス・トーマスの1963年のヒット
曲です。つねづね思っているのですが、このレコードはもっと高く評価されて良いのでは
ないでしょうか。当時、これだけファンキーなソウル・ミュージックをやっていた人物は
、ジェームズ・ブラウンを除くと他にはいないと思っているのです。マーヴィン・ゲイや
スモーキー・ロビンソン&ザ・ミラクルズを抱えていたデトロイトのモータウン・レコー
ドのサウンドは、”ヒッツヴィル・USA”を掲げていただけあってソウルフルでファン
キーというよりもポップなR&Bといったサウンドでしたし、当時は既にアトランティッ
クから大手のABCに移籍していたレイ・チャールズのサウンドも白人を含む一般大衆向
け(だからこそポップ・チャートで多くのヒット曲を残せた)となっていました。しかし
《ウォーキン・ザ・ドッグ》のサウンドは見事にファンキー、つまりカッコイイのです。

それでもトーマスが我が国のR&Bの世界で評価されないのは、トーマスの肩書きがシン
ガーだけではなく、DJ、司会者、極めつけにコメディアンが入っていることと関係があ
るような気がします。確かにステージでの姿は半ズボンにハイ・ソックス(白いブーツの
場合もあり)なので、カッコイイものではありません。トーマスの経歴はミンストレル・
ショーという黒人芸能に遡るので、道化に徹して人を楽しませるのはトーマスにとっては
普通のことなのでしょう。しかし一度歌い始めると、そんな道化も吹き飛ぶのです。1972
年にロスアンジェルスのスタジアムで行われたスタックスのコンサート記録映画「ワッツ
タックス」を観ると、いかにトーマスが観客をのせることが出来るのかがわかります。ト
ーマスの音楽でいてもたってもいられなくなったソウル・ブラザー&シスターが、観客席
からフィールドに飛び降りて一斉にダンスを始めるシーンは実に見ものです。

トーマスの音楽のサウンドのカッコよさは、そのくらいのパワーを持っているのです。そ
のファンキーでカッコイイサウンドの最初の成功例が、《ウォーキン・ザ・ドッグ》なの
です。ギターとホーン・セクションが大きくフィーチャーされるそのサウンドは、60年代
の半ばにピークを迎えるスタックス・サウンドそのものなのです。そのままオーティス・
レディングやサム&デイヴといった人たちが歌っても、なんら違和感がありません。《ウ
ォーキン・ザ・ドッグ》は、モータウンのに対して”ソウルヴィル・USA”と言われた
メンフィスのスタックス・レコードのサウンドを決定づけた曲と言ってしまってもで過言
ではないと思っているです。ローリング・ストーンズも、《ウォーキン・ザ・ドッグ》を
デビュー・アルバムの中で素早くでカヴァーしています。トーマスの《ウォーキン・ザ・
ドッグ》は、それくらいのカッコよさを持った曲なのです。
《 Walking The Dog 》( Rufus Thomas )
cover

Rufus Thomas(vo)

Instruments by The Mar-keys (maybe)
Wayne Jackson(tp), Charles Axton(ts), Floyd Newman(bs), Steve Cropper(elg),
Lewis Steinberg(elb), Al Jackson(ds) 

Written  : Rufus Thomas
Recorded : August 21, 1963
Released : 1963
Charts   : POP#10
Label    : Stax

Appears on :The Best of Rufus Thomas: Do the Funky Somethin' 
1.Bear Cat (The Answer to Hound Dog), 2.'Cause I Love You, 3.I Didn't Believe,
4.Dog, 5.Walking the Dog, 6.Can Your Monkey Do the Dog, 
7.Somebody Stole My Dog, 8.That's Really Some Good, 9.Jump Back,  
10.Little Sally Walker, 11.World Is Round, 12.Sister's Got a Boyfriend,
13.Sophisticated Sissy, 14.Memphis Train, 15.Do the Funky Chicken,  
16.(Do The) Push and Pull, Pt.1, 17.Breakdown, Pt.1
18.Do the Funky Penguin, Pt.1, 19.Do the Funky Somethin'  

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