●ロックへの旅(第二章):イッツ・オール・ライト
    (ザ・インプレッションズ:1963)

ジミ・ヘンドリックスやジェフ・ベックなど、60年代に活躍したギター・ヒーローの多く
に大きな影響を与えたのが、1958年にシカゴで結成されたインプレッションズです。イン
プレッションズは、当時数多くあったゴスペルとドゥ・ワップをルーツにもつ黒人ヴォー
カル・グループのひとつです。そのなかで、なぜインプレッションズがギター・ヒーロー
達に大きな影響を与えることになったのでしょうか。その答えは、インプレッションズの
サウンドを聴けば、誰もがおそらく感じることができると思います。当時、インプレッシ
ョンズのメンバーだった、後のニュー・ソウルの時代をリードする主要人物のひとり、カ
ーティス・メイフィールドの作り出すギター中心のサウンド。カーティスの弾くまろやか
なギターと洗練されたサウンドに、ジミヘンやベックもぞっこんまいってしまったのだと
思います。

そのカーティス・メイフィールドが主導していた時代のインプレッションズのヒット曲で
彼らの初のR&BチャートNo.1となったのが1963年の《イッツ・オール・ライト》です。
《イッツ・オール・ライト》を演奏しているバンドの基本編成は、ギター、ベース、ドラ
ムスというロック・バンドと同じものです。その編成にのせて、カーティスの弾くギター
・カッティングのカッコイイこと。60年代のギター・ヒーロー達が夢中になってしまうの
もわかる気がします。そこにプロデュース&アレンジ担当のジョニー・ペイトによるブラ
ス・セクションが、華やかさを添えています。曲自体は、リードをとるカーティスが「セ
イ、イッツ・オーライ」と歌うと、他の2人が「イッツ・オーライ」と追いかける典型的
なシング・アロング・タイプの曲です。つまり、その場にいたら、思わず拍手をしながら
一緒に歌ってしまうようなシンプルで楽しい曲なのです。

しかし、《イッツ・オール・ライト》のサウンドと曲がもっているフィーリングは、同時
代の他の黒人グループの曲と比較するとビックリするほど現代的なものです。あくまでも
曲がもっている「感覚」の話なので説明しにくいのですが、モータウンやジェームス・ブ
ラウンのサウンドもまだ確立されていないときに、その後20年のソウル・ミュージックを
先取りするような感覚を持っています。いまもって、古さを感じさせません。同時代で同
じような感覚をぼく感じるのは、ジェリー・ゴフィン&キャロル・キングやバリー・マン
&シンシア・ワイルといったブリル・ビルディング系の作家達が作品を提供していたドリ
フターズくらいです。カーティスの持つフィーリングは、”古くならない”という一点に
おいて、それらの作家達よりもより先をいっていたと思います。これはやはり、本質的に
クリエーターであるカーティスの感覚が、オリジナルで新しいものだったからでしょう。

《 It's All Right 》( The Impressions )
cover

THE INPRESSIONS are
Samuel Gooden, Fred Cash & Curtis Mayfield

Written  : Curtis Mayfield
Produced : Johnny Pate
Released : Sep 6, 1963
Charts   : R&B#1, POP#4
Label    : ABC

Appears on :Ultimate Collection The Impressions
1. For Your Precious Love, 2. Gypsy Woman, 3. It's All Right, 
4. Talking About My Baby, 5. I'm So Proud, 6. Keep on Pushing, 7. Amen,
8. You Must Believe Me, 9. People Get Ready, 10. Woman's Got Soul,
11. Meeting Over Yonder, 12. You've Been Cheatin', 13. Man, Oh Man, 
14. We're a Winner, 15. I Loved and I Lost, 16. Fool for You, 
17. This Is My Country, 18. Choice of Colors,
19. Finally Got Myself Together (I'm a Changed Man), 20. Same Thing It Took

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