●ロックへの旅(第二章):ミーン・ウーマン・ブルース
    (ロイ・オービソン:1963)

ロックンロールの立役者達、例えばチャック・ベリーやリトル・リチャードなどの黒人ロ
ックンローラー達、エルヴィス・プレスリーやジェリー・リー・ルイスといった白人ロッ
クンローラー達の殆どは、黄金時代を1950年代に迎えています。しかし、ほぼ同時代から
活動を開始している人で、50年代ではなく1960年代にピークを迎えたロックンローラーが
ひとりいます。ロイ・オービソンがその人です。オービソンのデビューは、エルヴィスと
同じく1955年です。しかし《オンリー・ザ・ロンリー》(名曲!)で初めて大ヒットする
のは1960年のこと。それ以降は、《ランニング・スケアード》、《クライング》、《ドリ
ーム・ベイビー》、《イン・ドリームス》と、ほぼ年に2曲の割合で毎年快調にヒットを
とばしていきます。この《オンリー・ザ・ロンリー》から、ブリティッシュ・インヴェン
ジョンの真っ只中の《プリティ・ウーマン》までがオービソンのピークといえます。

1963年の《ミーン・ウーマン・ブルース》は、《イン・ドリームス》に続くロイ・オービ
ソンのヒット曲です。この曲は、プレスリーが2作目の主演映画「さまよう青春」で歌っ
ているそうです(映画は未見)。同名のアルバムでも、1曲目を飾っています。そんなプ
レスリーのレパートリーをオービソンはカヴァーしたわけですが、ぼくの場合、この曲が
なかったらオービソンのことをロックンローラーと呼んでいたかどうかわかりません。オ
ービソンの特徴は、”ベルベット・ヴォイス”と呼ばれる声の良さにあります。それゆえ
に、ぼくの中でのオービソンのイメージは、ロックンローラーというよりもポップ・シン
ガーに近いものがあったのです。《オンリー・ザ・ロンリー》や《クライング》などのポ
ップス系の曲は言うにおよばず、ヴァン・ヘイレンがカヴァーした《プリティ・ウーマン
》でさえロックンロールというよりポップスの要素を多く感じるのです。

しかし《ミーン・ウーマン・ブルース》は、ぼくのそんなオービソンのイメージを覆した
曲です。オービソンならではの声の良さを活かした、見事なロックンロールなのです。ひ
とりアカペラで「ウーンン、ウェル、アイ・ガタ・ウーマン」と歌いだし、「ミナズ、シ
ー・キャン・ビー(mean as she can be )  」と一気にロックンロールのリズムに持って
いくところは、オービソンの数ある楽曲の中でも、もっともカッコいい瞬間ではないでし
ょうか。最後に演奏を静かに押えてから、「ナウ、レッツ・ゴー、ワン・タイム」でクラ
イマックスにもっていくところはプレスリーを彷彿とさせます。《ミーン・ウーマン・ブ
ルース》は、RCAでプレスリーの後釜とされつつも芽が出なかったオービソンが、プレ
スリーに対する落とし前をつけた曲だったのではないでしょうか。オービソンが、1960年
代にピークを迎えていたからこそできた見事なカヴァーだったと思います。

《 Mean Woman Blues 》( Roy Orbison )
cover

Roy Orbison

Written : Claude Demetrius
Charts  : POP#5

Appears on :The Essential Roy Orbison
Disk.1
1.Ooby Dooby, 2.Go! Go! Go!, 3.Rock House, 4.Uptown,
5.Only The Lonely (Know The Way I Feel), 6.Blue Angel, 7.I'm Hurtin', 8.Lana,
9.Love Hurts, 10.Crying, 11.Candy Man, 12.Dream Baby (How Long Must I Dream),
13.The Crowd, 14.Leah, 15.Falling, 16.Working For The Man, 17.Mean Woman Blues,
18.Blue Bayou, 19.Pretty Paper, 20.It's Over
Disk.2  
1.Oh, Pretty Woman, 2.You Got It, 3.She's A Mystery To Me, 4.California Blue,  
5.The Only One, 6.Ride Away, 7.Crawling Back, 8.Best Friend,  
9.Communication Breakdown, 10.Walk On, 11.That Lovin' You Feelin' Again, 
12.Running Scared, 13.In Dreams, 14.A Love So Beautiful, 15.The Comedians,  
16.Claudette, 17.I Drove All Night, 18.Wild Hearts Run Out Of Time,
19.Coming Home, 20.Life Fades Away

Disk1-1,1-2,1-3:Roy Orbison & Teen Kings
Disk2-11:Emmylou Harris With Roy Orbison
Disk2-19:Roy Orbison with Carl Perkins / Johnny Cash / Jerry Lee Lewis

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