●ロックへの旅(第二章):ビー・マイ・ベイビー
    (ザ・ロネッツ:1963)

ガール・グループ・ポップの最高傑作のみならず、ロック・ポップス史的にみてもその影
響は計り知れない傑作が、ロネッツの《ビー・マイ・ベイビー(邦題:私のベイビー)》
です。ビートルズのジョン・レノンも、ビーチ・ボーイズのブライアン・ウィルソンも公
式にカヴァーしています(共に、ソロとしてカヴァー)。作者は、レーベル・メイトだっ
たクリスタルズの《ダ・ドゥ・ロン・ロン》や《ゼン・ヒー・キッスド・ミー》といった
ヒット曲でおそらく当時ノリにノッていたアツアツ・カップルのジェフ・バリーとエリー
・グリーンウィッチ、そしてプロデュースも兼ねている御大フィル・スペクターです。ク
リスタルズの連続ヒットでノッていたに違いないこの3人の作った《ビー・マイ・ベイビ
ー》は、ロネッツの代表作であるばかりか、フィル・スペクターというプロデューサーを
代表する作品として有名です。

ロネッツは、ヴェロニカ&エステル・ベネットの姉妹と従姉妹のネドラ・タレリーの3人
組のグループですが、《ビー・マイ・ベイビー》に参加しているのはヴォーカルのヴェロ
ニカのみといわれています。バック・コーラスを努めたのは、残りのロネッツのメンバー
ではなく、クリスタルズの《ヒーズ・ア・レベル》でリード・ヴォーカルを努めたセッシ
ョン・シンガーのダーレン・ラヴと、後にソニー&シェールとして知られるソニー・ボノ
とシェールだそうです。スペクターにとっては、レコーディングの時点ではヴェロニカの
ヴォーカルさえあればよかったわけで、このようなエピソードからプロデューサーとして
スペクターが持っていた権力が想像できると思います。スペクターのプロデューサーとし
ての支配力はバックの演奏にもいかんなく発揮されており、この曲が彼の最高傑作といわ
れるゆえんもそこにあります。

冒頭の「ドンッ、ド、ドン」というシンプルなバス・ドラムのイントロ。複数台のギター
とベース、ピアノ、マラカスによるベーシックなサウンド。アクセントを刻み付けるカス
タネットと厚みをつけるブォーと入ってくるホーン・セクション。途中でヴォーカルから
主役を奪うメロディアスなコーラスと、背景と間奏を彩るストリングス。その凄まじくシ
ンフォニックなサウンドがあいまって爆発するエンディングまで、それはもう見事な曲と
いわざるを得ません。たまらないのは、ゆったりとした前半から「ソー・ウォンチュー・
プリーズ」でミドル・エイトに入りテンポが倍になるような感覚になるところ。そしてヴ
ェロニカの必殺の「ウォ、オッ、オッ、オッ、オー」です(反則ですが、その後のドラム
・ブレイクを映像で観る機会があれば観てみると良いでしょう。ヴェロニカのフェミニン
な可愛さに脱帽するはずです)。非の打ちどころのない、ほぼ完璧なポップスです。

《 Be My Baby 》( The Ronettes )
cover

The Ronettes are
Veronica(aka Ronnie Spector) Bennett, Estelle Bennett & Nedra Talley

Produced   : Phil Spector
Written    : Jeff Barry, Ellie Greenwich & Phil Spector
Recorded   : 1963
Released   : Aug, 1963
Charts     : POP#2
Label      : Philles

Appears on :The Best Of The Ronettes
1.Be My Baby, 2.Why Don't They Let Us Fall in Love, 3.I Wonder, 
4.Baby I Love You, 5.(The Best Part of) Breakin' Up, 6.So Young, 
7.When I Saw You, 8.Do I Love You?, 9.You Baby, 10.How Does It Feel?,  
11.Walking in the Rain, 12.Born to Be Together,  
13.Is This What I Get for Loving You?, 14.Paradise, 15.Here I Sit,  
16.I Wish I Never Saw the Sunshine, 17.Everything Under the Sun,  
18.You Came, You Saw, You Conquered  
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