●ロックへの旅(第二章):ヒート・ウェーヴ
    (マーサ&ザ・ヴァンデラス:1963)

1960年代に入ると、まるで竹の子のようにガール・グループ(女の子だけのヴォーカル・
グループ)がでてきます。1950年代にもいなかったわけではありませんが、1960年代に入
ってからガール・グループが数多くでてくるのは、ブリル・ビルディングに代表される音
楽制作システムとの関係によるものと思われます。まずはヒット曲を作ろうとする人たち
(作詞家、作曲家、プロデューサー)がいて、それを歌って大衆に届けるガール・グルー
プがいるというシステムです。このようなシステムでまず成功したのがジェリー・ゴフィ
ン&キャロル・キング作の《ウィル・ユー・ラヴ・ミー・トゥモロウ》のシレルズであり
、その後ビートルズがカヴァーした《プリーズ・ミスター・ポストマン》が有名なモータ
ウンのマーヴェレッツ、フィル・スペクターのプロデュースによる《ヒーズ・ア・レベル
》のクリスタルズなどへと続いてくるわけです。

これらのガール・グループのメンバーはみな黒人女性ですが、制作陣(モータウンを除い
た彼らの多くは白人)が白人マーケットを意識していたためソウルフルな印象は殆どあり
ません。彼女達の存在、そして楽曲の多くは、我が国の歌謡曲のサンプルになりました。
そんなガール・グループにおいて、マーヴェレッツの次にモータウンが市場に投入したマ
ーサ&ザ・ヴァンデラスは一味違った存在です。彼女達の歌は、颯爽としておりパンチが
あるのです。そのせいか60年代初期に登場したガール・グループのなかでは、一番ソウル
フルな印象を受けます。それでもどこかポップな香りが消えていないのは、白人マーケッ
トを睨んだモータウンの制作陣によるオブラートにくるまれているからでしょう。《ヒー
ト・ウェーヴ》はそんな彼女達の2枚目のシングルで、全米ポップ・チャート(すなわち
白人間マーケット)の4位を記録しています。

モータウンのファンク・ブラザーズ(彼らが何物か知らない人は映画「永遠のモータウン
」を借りてきて観ましょう)の作り出すビートは、意外なことにロック的です。しかしよ
く聴くと、ジャズとゴスペルの要素を聴き取ることもできると思います(彼らの場合は、
自然とそうなるのかもしれません)。そこに飛び出してくる元気いっぱいのマーサ・リー
ヴスのヴォーカルは、他のガール・グループでは聴くことのできない魅力があります。マ
ーサのパンチのあるソウルフルなヴォーカルが、後にスプリームスを大成功に導くモータ
ウンきってのヒット・チームのホランド=ドジャー=ホランドの作家チームのポップな楽
曲、およびファンク・ブラザーズの”ロックな”演奏とシンクロして、”モータウン”と
しか言いようのない独特の魅力ある仕上がりになっています。聴きどころは、2分を過ぎ
たあたりからのヴォーカルとコーラス。彼女達の実力が分かると思います。

《 (Love Is Like A) Heat Wave 》( Martha & The Vandellas )
cover

Martha & The Vandellas are
Martha Reeves, Rosalind Ashford & Annette Sterling

Instrumentation by "The Funk Brothers" 
Richard "Pistol" Allen(ds), James Jamerson(b), Joe Hunter?(p),
Robert White(g), Eddie Willis(g), Thomas "Beans" Bowles(bs), unknown(per)

Produced   : Brian Holland & Lamont Dozier
Written    : Brian Holland, Lamont Dozier & Edward Holland Jr.
Recorded   : 1963
Released   : July 10, 1963
Charts     : POP#4, R&B#1
Label      : Gordy

Appears on :Come And Get These Memories / Heat Wave ( 2in1 CD )

『Come And Get These Memories』
1.Come and get these memories, 2.Can't get used to losing you, 
3.Moments to remember, 4.This is when I need you most,  
5.Love like yours (don't come knocking every day), 6.Tears on my pillow,  
7.To think you would hurt me, 8.There he is, 9.I'll have to let him go  
10.Give him up, 11.Jealous lover, 12.Old love (let's try again) 

『Heat Wave』
13.(Love is like a) heat wave, 14.Hey there lonely boy, 15.More  
16.Danke schon, 17.If I had a hammer, 18.Then he kissed me,  
19.Wait till my Bobby gets home, 20.Hello stranger  
21.Just one look, 22.My boyfriend's back, 23.Mockingbird

+ Bounus Tracks  

24.Quicksand (stereo single mix), 25.Live wire (stereo single mix),  
26.My baby won't come back, 27.Undecided lover (unreleased stereo mix)


※上記のイメージをクリックすると、Amazonにて購入できます