●ロックへの旅:ゲット・ア・ジョブ
    (ザ・シルエッツ:1958)

前回のダニー&ザ・ジュニアーズの《アット・ザ・ホップ》を紹介したロックへの旅で、
1969年の8月に行われた伝説的なロック・フェスティヴァルの”ウッドストック”に出演
したオールディーズ・バンドのシャ・ナ・ナの話しを少ししました。リーゼントでヤンキ
ー姿のシャ・ナ・ナが、ラヴ&ピースを謳歌する長髪ヒッピー達の前でがぶちかましたの
がダニー&ザ・ジュニアーズの《アット・ザ・ホップ》だったわけです。今回紹介する曲
も、このシャ・ナ・ナというグループに少し関係があります。《アット・ザ・ホップ》と
同じ1958年初頭のヒット曲の《ゲット・ア・ジョブ》という曲です。この曲の「シャナナ
ァナ、シャナナナナ」というコーラスから、”ウッドストック”に出演したシャ・ナ・ナ
はグループ名をつけたのだそうです。「なんでまた?」と思わず理由を尋ねたくなってし
まいますが、確かに《ゲット・ア・ジョブ》はコーラスが最も印象に残る曲なのです。

まず、曲の冒頭からいきなり「ディディディディ(dip-dip-dip-dip)」ときて、意表をつ
かれます。これまた、「なんでまた、このイントロで始めようとお決めになられたのです
か?」と尋ねたくなってしまいます。すぐにシャ・ナ・ナのグループ名の元になったコー
ラスが続きます。このコーラス部分は伝統的な12小節ブルースの形式になっているのです
が、9小節目で「ディディディディディディディディ」がきて、10小節目は低音で「マ
マママママママ」ときてビックリします。「なんで、ママママなんでしょうか」と再び尋
ねたくなります。「シャナナァナ、シャナナナナ」が4回、「ディディディディディディ
ディディ」、「ママママママママ」、「シャナナァナ、シャナナナナ」2回なのです(わ
かりますか?)。この曲がインパクトを持っているのは、この「ディディディディ〜」、
「ママママママママ」が存在しているからにつきます。

この妙にインパクトのあるコーラスの《ゲット・ア・ジョブ》という曲を歌ったグループ
は、ザ・シルエッツという黒人男性4人組のドゥ・ワップ・グループです。1950年代の黒
人男性コーラス・グループの常として、彼らもまたゴスペルを歌うグループとしてスター
トしています。何度かのメンバー・チェンジを繰り返したのち、リードのビル・ホートン
、テナーのリチャード・ルイス、バリトンのアール・ビール、ベースのレイモンド・エド
ワーズというメンバーに落ち着きます。《ゲット・ア・ジョブ》は、軍隊に入隊した頃か
ら曲を書き始めていたといわれているテナーのリチャード・ルイスが退役後に書いたと言
われている(クレジットはメンバー全員になっている)曲で、ルイスが軍を退役後に故郷
に戻ったときに仕事がなく、母親から「仕事につけ」と言われていた体験からできた曲だ
と言われています。

「なんでまた、そんなときにのん気に歌なんかつくっていたのですか」と聞いてみたくな
りますが、ルイスは《ゲット・ア・ジョブ》だけではなく、《アイム・ソー・ロンリー》
というバラッドも作っていました。《アイム・ソー・ロンリー》は、ザ・シルエッツの最
初にシングル曲となり、《ゲット・ア・ジョブ》はなんとB面だったそうです。しかしデ
ィック・クラークの司会するTV番組で《ゲット・ア・ジョブ》がとりあげられると、こ
ちらのほうが人気が出てしまったというから世の中よくわからないものです。しかし人気
がでた理由は、妙にインパクトの強いコーラスを聞けばわかるような気がします。それに
加えて、《ゲット・ア・ジョブ》には当時の流行のロックンロール的なフィーリングが感
じられます。そのフィーリングはルイスがグループに持ち込んだもののようですが、ロッ
クンロール的なフィーリングがあったことも人気の出た理由の一つでしょう。

ドラム・ブレイクにのせてアカペラで歌うところや、テナー・サックスのソロの部分など
に、ぼくの言うところのロックンロール的なフィーリングを感じることができると思いま
す。それにしても、《ゲット・ア・ジョブ》やはり変な曲といわざるをえません。ルイス
が書いた部分というのは、いったいなんなんだろうと考えてしまいます。おそらくルイス
は、実際に歌詞に乗せて歌われる部分を書いたのでしょうが、この曲に置いて歌詞に乗せ
て歌われる部分は、いわば刺身のつまのようなものです。なんといっても目立つのはコー
ラス部分です。おそらくメンバー全員でこの曲のキモであるコーラス部分を考えた為に、
全員にクレジットが与えられたのでしょう。だとすると、やはり「歌詞に乗せて歌われる
部分は、小節の割り振り方といいなんなのだろう」と思わざるをえません。《ゲット・ア
・ジョブ》は、そんな「なんなのだろうづくし」の曲なのです。

《 Get A Job 》( The Silhouettes )
cover

The Silhouettes are
Bill Horton (lead), Richard Lewis (tenor), Earl Beal (baritone) ,Raymond Edwards (bass) 

Ronnie McGill(ts),unknown(p,b,ds,elg)


Written  by : Richard Lewis, Bill Horton, Earl Beal & Raymond Edwards
Charts      : R&B#1,POP#2
Label       : Junior

Appears on :Get a Job
1.Get a Job, 2.I Am Lonely, 3.Miss Thing, 4.Heading for the Poorhouse,
5.Bing Bong, 6.Voodoo Eyes, 7.I Sold My Heart to the Junkman, 8.What Would You Do,
9.Never Will Part, 10.Evelyn, 11.Vision in the Night, 12.Rent Man,  
13.Your Love Is All I Need  

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