●ロックへの旅(第二章):サーフ・シティ
    (ジャン&ディーン:1963)

「トゥーガール・フォー・エヴリー・ボー(Two Girls For Every Boy)」という強烈なイ
ンパクトを持つ出だしでいきなり始まるのが、ジャン&ディーン1963年の全米No.1ヒット
《サーフ・シティ》です。なにが強烈かと言うと、この冒頭部分(そして曲の合間、合間
で繰り返される)の「トゥーガール〜」という部分です。「トゥーガール〜(誰もがみん
な両手に花)」という興味をそそられる歌詞は、アメリカ人にとってインパクトが大きい
ものだったでしょうが、歌詞の意味なんかわからない日本人が聴いてもとても印象深いも
のです。そのインパクトは、メロディ、およにそれを歌うファルセット・ヴォーカルによ
ってもたらされています。「トゥーガール〜」のファルセット・ヴォーカルがなかったら
、《サーフ・シティ》の魅力は半減どころではなかったのではないかという気がします。
それくらいこの部分は、一度聴くだけで強烈に印象に残るものです。

なにが言いたいのかというと、「トゥーガール〜」という部分を曲の冒頭にいきなり持っ
てくるという作者のセンス、それが素場らしいということを言いたいわけです。《サーフ
・シティ》の作者は、ジャン&ディーンのジャン・ベリーと、ビーチ・ボーイズのブライ
アン・ウィルソンです。冒頭部分は、どちらのアイディアなのでしょうか。そして、なぜ
ここにビーチ・ボーイズのブライアン・ウィルソンがでてくるのでしょうか。二人の関係
は、ジャン・ベリーのほうがブライアンより年上で、かつ音楽業界でのキャリアも先輩で
す。ジャン&ディーンとビーチ・ボーイズは、1963年ごろ(ビーチ・ボーイズがデビュー
して以後)ショーなどで一緒になることが多かったようです。やがてジャン&ディーンは
、自分達のアルバムにビーチ・ボーイズの《サーフィン》と《サーフィン・サファリ》を
収録し、バックの演奏をビーチ・ボーイズに依頼します。

その頃から、ジャンとブライアンは急速に接近していったようです。ジャンの眼の前で、
発売前の《サーフィン・USA》をピアノで弾き、その曲を自分達に歌わせて欲しいとい
うジャンに「これはビーチ・ボーイズ用なのでダメ、他にこーいうのがあるよ」と《サー
フ・シティ》を歌い、一緒に完成させたという話はもはや伝説になっています。この伝説
を聞くかぎり、冒頭の「トゥーガール〜」の部分は100%ブライアンのアイディアだろうと
確信します。それを証明するかのように、このもっとも印象的なファルセット・ヴォーカ
ルを歌っているのはジャン&ディーン(ディーンは参加していないと言われている)では
なくブライアンです。ジャン&ディーン(そしてブライアン・ウィルソン)にとっての初
の全米No.1ソングは、ジャン&ブライアンが創り、そして自ら歌って発表した二人の作品
だったのです。そしてその後も、二人の共作は続いていくのです。

《 Surf City 》( Jan & Dean )
cover

Jan & Dean : 
Jan Berry and Dean Torrence

Written  by: Jan Berry and Brian Wilson
Produced by: Jan Berry
Recorded   : 1963
Released   : May, 1963
Charts     : POP#1(US)
Label      : Liberty

Appears on :The Complete Liberty Singles 
Disk1:
1.Sunday Kind of Love, 2.Poor Little Puppet, 3.Tennessee,  
4.Your Heart Has Changed Its Mind, 5.My Favorite Dream, 6.Who Put the Bomp,  
7.Frosty (The Snow Man), 8.She's Still Talking Baby Talk, 9.Linda,
10.When I Learn How to Cry, 11.Surf City, 12.She's My Summer Girl,  
13.Honolulu Lulu, 14.Someday (You'll Go Walking By), 15.Drag City,
16.Schlock Rod, Pt.1, 17.Dead Man's Curve, 18.New Girl in School,  
19.Little Old Lady (From Pasadena), 20.My Mighty G.T.O. 
Disk2:
1.Ride the Wild Surf, 
2.Anaheim, Azuza & Cucamonga Sewing Circle, Book Review and Timing Associ,
3.Sidewalk Surfin', 4.When It's Over, 
5.(Here They Come) From All Over the World, 6.Freeway Flyer,  
7.You Really Know How to Hurt a Guy, 8.It's as Easy as 1, 2, 3, 9.I Found a Girl,
10.It's a Shame to Say Goodbye, 11.Beginning from an End, 12.Folk City, 
13.Batman, 14.Bucket 'T', 15.Norwegian Wood (This Bird Has Flown),
16.Popsicle, 17.Fiddle Around, 18.Surfer's Dream,  
19.School Day (Ring! Ring! Goes the Bell), 20.Submarine Races,  
21.Universal Coward, 22.I Can't Wait to Love You

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