●ロックへの旅(第二章):ダ・ドゥ・ロン・ロン
    (ザ・クリスタルズ:1963)

うーん、なんとパーカッシヴな曲なのでしょう。リアルタイムでこの曲がラジオから流れ
てきた時に、一番ビックリしたのはレコード制作に携わっていた同業者達なのではないで
しょうか。そんな想像をしてしまうくらい現在の耳で聴いても十分に驚異的なサウンドな
のが、「ロックへの旅」2回目の登場となるクリスタルズの1963年6月のヒット曲《ダ・
ドゥ・ロン・ロン(邦題:ハイ・ロン・ロン)》です。プロデューサーは、もちろんフィ
ル・スペクター。明るくポップな中にも狂気すら感じさせる凄まじいアレンジは、スペク
ターのセッションには欠かせないジャック・ニッチェの手によるものです。曲自体は単純
なスリー・コード、歌詞もティーン・エイジャーの女の子のドキドキ感を歌ったどーって
ことのないものですが、それをこれだけの作品にしてしまうフィル・スペクターのサウン
ド・プロダクションの物凄さが最も味わえる作品ではないでしょうか。。

なんといっても凄いのは、3連符の使い方です。フィル・スペクターの作品には、3連符
を使ったティディ・ベアーズの《トゥ・ノウ・ヒム・イズ・トゥ・ラヴ・ヒム》やパリス
・シスターズの《アイ・ラヴ・ハウ・ユー・ラヴ・ミー》(名曲!)などバラードの名曲
はありますが、《ダ・ドゥ・ロン・ロン》の3連符の使い方は常軌を逸しています。それ
までのフィルの作品でも、曲に強烈な印象を与える部分で3連符を使用することはありま
したが、《ダ・ドゥ・ロン・ロン》の場合はいきなりイントロからきます。ブォーとなる
サックス・セクションの上でなり続けるピアノの3連符の物凄さ。これを弾かされたピア
ニスト(フィルお抱えのセッション・ミュージシャン集団”レッキング・クルー”のアル
・デロイ、ラリー・テクネル、ドン・ランディあたりか)は、腕がどうにかなってしまい
そうになったのではないでしょうか。

3連符の使い方が凄いのはピアノだけではありません。3連符で文字通り積み重なってい
く(4人の奏者で叩いているのか?)ドラムス&パーカッションのブレイクの物凄さは、
ロックンロール史に残るものだと思います。そんな”ど迫力”のサウンドにのせて歌われ
る「ダ・ドゥ・ロン・ロン・ロン、ダ・ドゥ・ロン・ロン」という印象的なリフレイン。
日本にも”ルン・ルン”という言葉を流行らせた女流作家がいましたが、当時アツアツの
カップルだった作者のバリー&グリーンウィッチのウキウキ感がなかったら、考え出され
ることのなかったリフレインなのではないでしょうか。バリー&グリーンウィッチのウキ
ウキ感と、スペクター&ジャック・ニッチェの狂気のサウンド・プロダクションがもたら
す昂揚感は、間違いなく《ダ・ドゥ・ロン・ロン》を一度聴いたら忘れられない作品にし
ていると思います。必聴です。

《 Da Doo Ron Ron 》( The Crystals )
cover

The Crystals : 
Barbara Alston, Dee Dee Kennibrew, Mary Thomas, Patricia Wright and La La Brooks

Written  by: Jeff Barry, Ellie Greenwich & Phil Spector
Produced by: Phil Spector
Recorded   : March, 1963
Charts     : POP#3(US)
Label      : Philes

Appears on :The Best of the Crystals 
1.There's No Other Like My Baby, 2.Oh, Yeah, Maybe, Baby, 3.Uptown,
4.What a Nice Way to Turn 17, 5.He Hit Me (And It Felt Like a Kiss),
6.No One Ever Tells You, 7.He's a Rebel, 8.I Love You Eddie,
9.Another Country-Another World, 10.Please Hurt Me,
11.He's Sure the Boy I Love, 12.Look in My Eyes,
13.Da Doo Ron Ron, 14.Heartbreaker, 15.Then He Kissed Me, 16.I Wonder,
17.Little Boy, 18.Girls Can Tell, 19.All Grown Up


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