●ローリング・ストーンズのNo.1ソング

ローリング・ストーンズがデビューしてから、今年でちょうど45年だ。長年ロックを
愛してきた人間にとって大事件だったであろうミック・ジャガーの初来日公演からも、
20年が経過した。初めて生で聴くストーンズの楽曲にノリまくったあの日もついこの
間のことのようだけど、生まれた赤ん坊が成人するだけの年月が経ったわけだ。いやー
、なんだか感慨深いものである。ストーンズは、それだけ長期に渡って現役で活動して
きたグループだけに、発表した楽曲も多い。ファンの人も「あの曲が好き」、「この曲
のほうがエエねん」など、いろいろな意見があることだろう。ストーンズのNo.1ソング
は何かというアンケートをとってみたらどの曲が一番になるかな。《サティスファクシ
ョン》あたりが、やはりNo.1の有力候補かな。でも、ぼくにとってのストーンズのNo.1
ソングは、この曲しかない。《ジャンピン・ジャック・フラッシュ》だ。

とにかくカッコイイ。問答無用のカッコよさが《ジャンピン・ジャック・フラッシュ》
にはある。冒頭の「ジャーン、ジャージャー」というキース・リチャーズのギターから
、もう一本のギター、ベース、ドラムスと次々に被さってくるオープニング。これが、
まず堪らない。お得意の「ジャガジャーン」で全体の呼吸を整えると、ミックが「ウォ
ンチュー」と叫ぶ。すかさず、この曲のキモである必殺のリフが登場。「アイ・ワズ・
ボーン」と歌い出すミックの不敵なカッコよさ。「バッ・イッツ・オーライ」のルーズ
なコーラスの付け方。ブイン、ブインくる、グルーヴするビル・ワイマンのロックンロ
ール・ベース(キース説もある)。サイケな時代の名残りのような終盤のキーボードさ
え、とにかく全てがカッコイイ。ストーンズだけではなく、全てのロックを対象として
も、最高にカッコイイ、最強のロック曲であるとさえぼくは思っているのである。

ストーンズのベーシストのビル・ワイマン(現在は脱退)は、この曲のキモである必殺
のリフは自分が作ったと主張しているらしい。なんでもピアノをいじくりまわしている
ときにこの曲を思いつき、それを元にキースがギターのパターンを編み出して完成させ
たのだという。それじゃあ、ナンカー・フェルジ(ストーンズが全員の共作の際に使用
したペン・ネーム)とすればいいじゃないかとも思うのだが、このペン・ネームの存在
が証明しているように、初期のストーンズは誰かが思いついたリフやフレーズをみなで
いじくりまわして完成させるようなスタイルが多かったのだろう。しかしこのエピソー
ドが物語っているとおり、《ジャンピン・ジャック・フラッシュ》のカッコよさの大部
分は、キースのハードなギターと、ビルのブイン、ブイン、グルーヴするベースによる
ところが大きいのである。

さらに驚くのが、そのカッコよさの大部分を背負っている《ジャンピン・ジャック・フ
ラッシュ》のギターはアコースティック・ギターだという説があることだ。キースが自
宅でカセットに録音して、それを元にしたなどという伝説もある。確かに初期のロック
のレコーディングにおいては、音に厚みを出すためにいわゆるサイド・ギターのパート
をアコースティック・ギターを使用する場合もあった(ビートルズのデビュー・アルバ
ムの『プリーズ・プリーズ・ミー』でも、多くの曲でアコースティック・ギターが使用
されている)。《ジャンピン・ジャック・フラッシュ》のギターは、高音部で弾かれて
いるのと、音が軽く歪んでいることもあり、実際に聴いた感じではよくわからない。し
かしアコースティックであろうがエレクトリックであろうが、そのサウンドのカッコよ
さには変わりはないのだから、このようなトリビア的な話はどうでもよいと思う。

デビュー当時は若さだけがとりえのR&Bバンドだったストーンズが、”よくここまで
辿り着いたな”と感心する。初期のアルバム群では、そこいらのアマチュア・バンドと
大差ない演奏をしていたのである。そのストーンズが、《ジャンピン・ジャック・フラ
ッシュ》では自信たっぷりでどうどうとした演奏ぶりなのだ。王者の貫禄さえある。ビ
ートルズやボブ・ディランの影響が強く感じられる『ビトゥイーン・ザ・バトンズ』や
『ゼア・サタニック・マジェスティーズ・リクエスト』といったアルバムの音楽からよ
く軌道修正できたなと思うである。焦点をビシッと定め直してこれだけのグルーヴする
ロック・サウンドを作り上げた(しかも1968年に)という一点だけとってみても、《ジ
ャンピン・ジャック・フラッシュ》は画期的な曲である。そして70年代のストーンズ
黄金期は、間違いなくこの曲から始まったと思うのである。

『 Through The Past Darkly (Big HIts Vol.2) 』( The Rolling Stones )
cover


The Rolling Stones are
Mick Jagger(vo), Keith Richard(g,cho), Brian Jones(g,cho?)
Bill Wyman(elb), Charlie Watts(ds)

Written  by Mick Jagger / Kieth Richards
Produced by Jimmy Miller
Recorded  : March, 1968
Released  : May 24, 1968
Charts    : #1(UK),POP#3(US)
Label     : Decca

Appears on : Through the Past, Darkly (Big Hits Vol. 2),

1.Paint It, Black, 2.Ruby Tuesday, 3.She's a Rainbow, 4.Jumpin' Jack Flash,
5.Mother's Little Helper, 6.Let's Spend the Night Together, 7.Honky Tonk Woman,
8.Dandelion, 9.2000 Light Years from Home  
10.Have You Seen Your Mother Baby, Standing in the Shadow?, 11.Street Fighting Man
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