●ロックへの旅（第二章）：カム・オン
    （ザ・ローリング・ストーンズ：1963）

ブライアン・ウィルソンがチャック・ベリー・スタイルのロックンロールにサーフボード
で各地の海を駆け巡るようなコーラスをのせた曲をヒットさせていた頃、イギリスではあ
るグループがチャック・ベリーの曲をデビュー・シングル用に録音していました。グルー
プの名前は、ローリング・ストーンズ。やっと、ビートルズ、ビーチ・ボーイズと並ぶ、
三大グループが出揃いました。ビートルズはレノン＆マッカートニー作（実質はポールの
単独作）の《ラヴ・ミー・ドゥ》、ビーチ・ボーイズはブライアン・ウィルソン作の《サ
ーフィン》がデビュー曲ですが、ストーンズはチャック・ベリーのカヴァーというのが特
徴的です。少しづつストーンズもオリジナルを書きはじめますが、初期のストーンズはと
にかくカヴァー曲の嵐なのです。このあたりに当初からオリジナル指向を持っていたレノ
ン＆マッカートニーやブライアン・ウィルソンとの違いを見出すことができます。

ストーンズのカヴァーしたＲ＆Ｂは、マディー・ウォーターズ、リトル・ウォーターとい
ったブルース系の人達、ドリフターズやウィルソン・ピケットのようなアトランティック
・ソウル系の人達、マーヴィン・ゲイやミラクルズなどのモータウン系の人達、その他オ
ーティス・レディングやサム・クックなど実に多岐に渡っています。そのなかでも圧倒的
に多いのがチャック・ベリーの曲です。《バイ・バイ・ジョニー》や《アイム・トーキン
・アバウト・ユー》など1960年以降のベリーの曲も多く取り上げているところには、ビー
トルズとの年齢差を感じさせるとともに、「本当に大好きでよく聴いていたんだろうな」
と思わずにはいられないところがあります。ストーンズがデビュー曲に選んだ《カム・オ
ン》も、1961年の曲です。ベリーのオリジナル・ヴァージョンは、ピアノとサックスおよ
び珍しい女性ヴォーカルにより、ロックンロールというよりもＲ＆Ｂ色が濃厚です。

これに対してストーンズ・ヴァージョンは、ベリーのヴァージョンよりテンポ・アップし
ており、ロックぽい出来上がりです。終始鳴り響くブルージーなハーモニカ（ギターの音
が一つしか聴こえないことから、ブライアン・ジョーンズの演奏か）の音が、曲の印象を
決定づけています。ギターのオブリガードとかソロはいっさい無く（両方ともベリーのオ
リジナルには入っている）、コンパクトにまとめているのはシングル発売を意識してのこ
とだろうと推測します。初期のストーンズなかでは演奏はまとまっているほうだと思いま
すが、ハーモニカに導かれてマイナー・コードで終わるところがなんとなく吉田拓郎の曲
みたいで、全盛期のストーンズ的なカッコよさというのは《カム・オン》には全くありま
せん。彼らの出発点を聴いてみたいときだけ、聴けば良いでしょう。「ストーンズにも、
こんなに未熟で無邪気な時期があったんだ」という気持ちにきっとなれると思います。

《 Come On 》( The Rolling Stones )

The Rolling Stones are Mick Jagger(vo), Keith Richard(g,cho?), Brian Jones(har?) Bill Wyman(b,cho?), Charlie Watts(ds) Written by Chuck Berry Produced by Andrew Loog Oldham Recorded : May 10, 1963 Released : June 7, 1963 Charts : #21(UK) Label : Decca Appears on :Rolled Gold Disk1 1.Come On, 2.I Wanna Be Your Man, 3.Not Fade Away, 4.Carol, 5.Tell Me, 6.It's All Over Now, 7.Little Red Rooster, 8.Heart Of Stone, 9.Time Is On My Side, 10.The Last Time, 11.Play With Fire, 12.(I Can't Get No) Satisfaction, 13.Get Off Of My Cloud, 14.I'm Free, 15.As Tears Go By, 16.Lady Jane, 17.Paint It Black, 18.Mothers Little Helper, 19.19th Nervous Breakdown, 20.Under My Thumb, 21.Out Of Time, 22.Yesterday's Papers 23.Let's Spend The Night Together, 24.Have You Seen Your Mother Baby, Standing In The Shadow? Disk2 1.Ruby Tuesday, 2.Dandelion, 3.She's A Rainbow, 4.We Love You, 5.2000 Light Years From Home, 6.Jumpin' Jack Flash, 7.Street Fighting Man, 8.Sympathy For The Devil, 9.No Expectations, 10.Let It Bleed, 11.Midnight Rambler, 12.Gimme Shelter, 13.You Can't Always Get What You Want 14.Brown Sugar, 15.Honky Tonk Women, 16.Wild Horses