●ロックへの旅(第二章):エンド・オブ・ザ・ワールド
    (スキーター・デイヴィス:1963)

なんて切ない歌なのでしょう。このなんともいえない寂寥感は何なのでしょう。カントリ
ー界の大物女性シンガーのスキーター・デイヴィスのヒット曲《エンド・オブ・ザ・ワー
ルド(邦題:この世の果てまで)》は、いまでも初めて耳にしたときと同じ感情を僕に与
えてくれます。僕がこの曲を初めて聴いたのは、70年代にやっていた洋楽ポップスを紹介
するTV番組でした。番組で歌われたのを聴いたのではなくて、番組のスポンサーだった
ある有名ブランドのコマーシャルに使用されていたの聴いたのが最初でした。つまり、歌
番組で歌われたライヴではなく、レコードと同じヴァージョンを耳にしていたのです。そ
の洋楽番組の内容は記憶の彼方になくなりつつありますが、毎週流れるCMの中で、外国
の夜の街の風景をバックに流れていたデイヴィスの《エンド・オブ・ザ・ワールド》は、
忘れられない曲として僕の記憶に残っているのです。

歌詞だけを読むと《エンド・オブ・ザ・ワールド》はラヴ・ソングですが、デイヴィスの
ヴォーカルは歌詞に書かれている以上の喪失感を僕に伝えます。だから《エンド・オブ・
ザ・ワールド》に関する有名な逸話をあとで知ったときは、なるほどと納得するものがあ
りました。それは、次のような話です。デイヴィスは、22歳のときに友人のベティ・ジャ
ック・デイヴィスとグループを組みます。グループ名はデイヴィス・シスターズ。このと
きに、デイヴィスは本名のマリー・フランシスから、あだなだったスキーターを頭につけ
たスキーター・デイヴィスを名のりはじめたようです。ラジオ出演などでグループの人気
はあがり、ヒットもとばします。しかし、そんな順風満帆な時期に二人は交通事故にあい
、ベティは死亡、デイヴィス自身も重傷を負います。《エンド・オブ・ザ・ワールド》は
、デイヴィスの亡くなったベティへの想いが込められているというのが有名な逸話です。

この逸話が本当の話なのかどうかはわかりません。しかしデイヴィスがベティという親友
を失ったという事実がある限り、《エンド・オブ・ザ・ワールド》を歌う際にベティへの
想いをこめたという話を僕は信じます。僕はデイヴィス・シスターズを聴いたことがあり
ませんが、《エンド・オブ・ザ・ワールド》のサビの部分(カントリー調のメロディにな
る)は、デイヴィスによる多重録音ハーモニーで、デイヴィス・シスターズってこんな感
じだったのかなと僕に思わせてくれます。「(あなたはもういないのに)なぜ太陽は輝い
ているの、なぜ鳥たちはうたっているの」という切ない歌詞、それを増幅する問いかける
ようなメロディ、そしてデイヴィスのベティに対する感情を込めたヴォーカルによって、
《エンド・オブ・ザ・ワールド》は一度聴いたら耳から離れないような強烈な寂寥感を常
に僕に感じさせてくれるのだと思います。

《 End Of The World 》( Skeeter Davis )
cover

Skeeter Davis(vo)

Pete Drake?(g), Floyd Cramer?(p), Bob Moore?(b), Buddy Harman?(ds)
other insuturuments unknown

Written  by Sylvia Dee
Produced by Chet Atkins
Recorded  : 1962
Released  : 1963
Charts    : POP#2(US)
Label     : RCA

Appears on :The Essential Skeeter Davis
1.I Forgot More Than You'll Ever Know, 2.Set Him Free, 
3.Am I That Easy to Forget?, 4.One You Slip Around With,
5.(I Can't Help You) I'm Falling Too, 6.No, Never, 7.My Last Date (With You),
8.Optimistic, 9.End of the World, 10.Gonna Get Along Without Ya Now,
11.Where I Ought to Be, 12.I Can't Stay Mad at You, 13.I'm Saving My Love,
14.Silver Threads and Golden Needles, 15.Mine Is a Lonely Life,
16.Let Me Get Close to You, 17.Fuel to the Flame,
18.What Does It Take (To Keep a Man Like You Satisfied),
19.I'm a Lover Not a Fighter, 20.Bus Fare to Kentucky

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