●ロックへの旅:ホール・ロッタ・シェイキン・ゴーイン・オン
    (ジェリー・リー・ルイス:1957)

リンゴ・スター(ビートルズ)、ミック・ジャガー、キース・リチャーズ、ロン・ウッド
(いづれもローリング・ストーンズ)、エリック・クラプトン(クリーム他)、ロッド・
スチュワート(フェイセズ他)、ジミー・ペイジ(レッド・ツェッペリン)、ニール・ヤ
ング(CSN&Y他)、ロビー・ロバートソン(ザ・バンド)、ジョン・フォガティ(C
CR)、ドン・ヘンリー(イーグルス)、ブルース・スプリングスティーンなどロック界
のスター達、B・B・キング、バディ・ガイなどブルース界の大御所、カントリー界の大
御所ウィリー・ネルソン、そして偉大なるロックンローラーのリトル・リチャード。新作
アルバムにこれだけの大物ゲストを集められる人物も、この世に10人もいないでしょう。
2006年の暮れに出たアルバム『ラスト・マン・スタンディング』で上記の大物達をゲスト
に迎え、堂々と現役ロックンローラーぶりを示したのがジェリー・リー・ルイスです。

そのジェリー・リー・ルイスの最初のヒット曲が、《ホール・ロッタ・シェイキン・ゴー
イン・オン》です。かつてジョン・レノンは、雑誌「ローリング・ストーン」のヤン・ウ
ェナーによる有名なインタヴュー(1970年)で「ビートルズも、ディランも、ローリング
・ストーンズも、誰も《ホール・ロッタ・シェイキン・ゴーイン・オン》を超えたものは
ないと信じている」といった主旨の発言をしています。ジョン・レノンにさえそれほど強
いインパクトを与えたと思われる《ホール・ロッタ・シェイキン・ゴーイン・オン》です
が、意外なことにジェリー・リー・ルイスが最初に録音した曲ではありません。調べてみ
ると、エルヴィスの《ハウンド・ドッグ》などと同様に、他のミュージシャンによって既
にレコーディングされていた曲なのです。しかしロックの歴史の中で《ホール・ロッタ・
シェイキン・ゴーイン・オン》といえば、ルイスのオリジナル録音の他はありません。

《ホール・ロッタ・シェイキン・ゴーイン・オン》は、サン・レコード独特の深いエコー
に包まれたルイスのロックンロール・ピアノで始ります。ルイスというと、全てのものに
牙をむく悪魔の化身であるかのような派手なパフォーマンスばかりがとりざたされる(ル
イスにつけられたあだなは”ザ・キラー”です)ことが多いですが、彼のピアノ演奏(と
くにベース・パターンをカヴァーする左手の動き)は見事なものです。ルイスの家庭は決
して裕福ではなかったようですが、中古のピアノを購入するくらいの余裕はあったそうで
す。ルイスは子供の頃にそのピアノをいとこ達と共有して、ピアノのレッスンを受けてい
たといわれています。当然レッスンの素材は、ブギ・ウギではなくきちんとした練習曲で
あったと思われます。しかし、年上のいとこの演奏するブギ・ウギ・ピアノを聴いたこと
が、その後の彼の人生の扉を大きく開けることになります。

いとこの演奏を聴いてからのルイスは、ブギ・ウギ・ピアノにのめり込んだのでしょう。
さらにルイスは、聖書地帯と呼ばれるアメリカ南部では身近な音楽だったゴスペルと、当
時の白人専門のラジオから流れる音楽だったカントリーをブギ・ウギにミックスすること
で、自分のピアノ・スタイルを作り出したとそうです。そのように身に付けたピアノの演
奏スタイルが、《ホール・ロッタ・シェイキン・ゴーイン・オン》のビートの源となって
いるのです。ルイスのピアノの腕が確かだったことは、初シングル《クレージー・アーム
ス》をリリース後に、同じレーベルのカール・パーキンスの《マッチボックス》(ビート
ルズのカヴァーで有名)のセッションにピアニストとして参加していることからもわかり
ます。実際、ベースが入っていない(と思われる)のにもかかわらず、ルイスの左手によ
る《ホール・ロッタ・シェイキン・ゴーイン・オン》のビート感覚は見事の一言です。

《ホール・ロッタ・シェイキン・ゴーイン・オン》が全米的な人気を得たのは、1957年7
月28日のTV「スティーヴ・アレン・ショー」出演がきっかけだそうです。伝説では、そ
れまで噛んでいたガムをピアノにベタッとつけて演奏を始め、演奏終了後に、反抗を売り
にするロック歌手がカメラに対して行う定番の”不敵な面構え”でカメラを見据えたと言
われています。しかしレコードのパフォーマンスも、TVに負けてはいません。サビの歌
詞が「シェイク(振って)、ベイビー、シェイク」というこの曲の極めつけのセリフ、ル
イスの猫なで声による「やんなきゃいけないことはなぁ、ハニー、そこに立ってちょっと
だけグチュグチュ回せばいいんだぜ」が効いています。その暴力的で下卑たエネルギーに
満ち溢れたルイスを捉えたオリジナル録音のパフォーマンスは、確かにビートルズもディ
ランもストーンズもパンク・ロックでも、超えるものはおそらく無いでしょう。

《 Whole Lotta Shakin' Goin' On 》( Jerry Lee Lewis )
cover

Jerry Lee Lewis(vo,p),
Unknown maybe Roland Janes(elg), Unknown maybe J.M. Van Eaton(ds)


Written  by : Dave Williams, Roy Hall
Produced by : Jack Clement
Released    : June, 1957
Charts      : POP#3, R&B#1
Label       : SUN

Appears on :18 Original Sun Greatest Hits 
1.Whole Lotta Shakin' Goin' On, 2.Great Balls of Fire, 3.Breathless,
4.High School Confidential, 5.What'd I Say,
6.Drinkin' Wine, Spo-Dee-O-Dee, 7.Matchbox, 8.Jambalaya (On the Bayou),   
9.When the Saints Go Marching In, 10.Lewis Boogie, 
11.It'll Be Me [Single Version], 12.All Night Long, 13.Big Blon' Baby, 
14.Crazy Arms, 15.Ubangi Stomp, 16.Big Legged Woman, 17.Put Me Down,
18.Real Wild Child (Wild One)  


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