●クイーン・サウンドの最高にたまらないところ

ロックに詳しい人と話をしていると、二つの差別的感情を感じることがある。まず一点め
は、60年代ロックこそが最高という考えから70年代以降に誕生したバンドの音楽を”その
音楽性に関係なく”認めたがらないというものである。アメリカの雑誌ローリング・スト
ーンが、2005年に「ロック生誕50周年」を記念して発表した「グレーテスト・ソング・オ
ブ・オール・タイム」というランキングがある。このランキングを眺めてみても、100
位以内に入った70年代以降の曲はわずか16曲。そのうち70年代以降に生まれたバンドの曲
は4曲しかない。これに対して60年代の曲で100位以内に入った曲は56曲。なんと70年
代の3倍以上である。この数値がそのまま差別感情の表れというわけではないし、ロック
がもっとも素晴らしかった時代は60年代であるということ異を唱えるわけではないが、上
記の数値が示す傾向が差別的感情に繋がっていることも否定はできないと考える。

もう一点は、女の子に人気のあったバンドの評価が、これまた”その音楽性に関係なく”
極端に低いということである。上記ローリング・ストーン誌のランキング100位以内に
入った70年代生まれのバンドは、セックス・ピストルズ、クラッシュ、ラモーンズ、そし
てイーグルスであるが、彼らのファンの多くは当時もいまも男性が多いと考える。セック
ス・ピストルズやラモーンズと、同時期に女の子に絶大な人気を誇り世界的にも大ヒット
をとばしていたベイ・シティ・ローラーズの音楽はどちらが素晴らしいのか。ロックに詳
しい人は、無意識に”商業主義に陥っていたロックに風穴をあけた”などという音楽とは
関係のない御託をならべて、セックス・ピストルズやラモーンズを無条件に高く評価して
しまうのである。そんなもんなんかなー、そんなことでいいんかなぁー、と思う。これで
は真の実力を持つバンドがうかばれない。

上記の二つの差別的感情をしょって立っているようなバンドがクイーンである。ロック・
バンドとしての音楽性はものすごく高いものであると思うが、依然としてロックに詳しい
人達の評価は不当に低い。先のローリング・ストーンのランキングでも、1位から500
位までの間には、彼らの最高傑作の《ボヘミアン・ラプソディ》が163位、最近ではク
ーちゃんやそれをマネする友近のキャラクターでお馴染みの《ウィ・ウィル・ロック・ユ
ー》が330位と2曲をカウントするのみである。むしろクイーンを正当に評価している
のは最近では広告業界と思われ、《ウィ・ウィル・ロック・ユー》に限らず、キムタクが
自転車で逃げ回る《バイシクル・レース》、ナイティ・ナインの岡村さんが得意のブレイ
ク・ダンスを踊りまくった《ドント・ストップ・ミー・ナウ》など、彼らの曲がTVから
流れてこない日はないくらいなのである。

ぼく自身はどーなのかというと、まずシングルで出た《キラー・クイーン》のポップな音
楽性に無意識にやられ、その後に出た彼らの最高傑作《ボヘミアン・ラプソディ》の荘厳
かつドラマティックな音楽にトドメをさされたのである。70年代半ばにビートルズやジミ
ヘンの海賊盤を西新宿で買い漁っていた当時のぼくが、唯一買った同時代のバンドの海賊
盤が、クイーンの1975年クリスマス時期のハマースミス・オデオンのライヴなのである。
まだ彼らの最初のライヴ盤の『ライブ・キラーズ』が発売される前の話だ。よーするに彼
らの音楽が好きだったのであり、今でもそれは変わらないのである。クイーンの音楽はポ
ップかつクラシカルなテイストがあり、豊潤なコーラスとシンプルでしっかりとしたバン
ド・サウンドがあり、そこに唯一無比のヴォーカルがのるという、それまでぼくが好んで
聴いていたカーペンターズと共通するものがあることに最近になって気がついた。

なかでもクイーンが並み居るロック・バンドの中で群を抜いて素場らしいのは、バンド・
サウンドだと思うのだ。とくにディーコンのベースとテイラーのドラムのコンビネーショ
ンは特筆もので、二人ともプレイヤーとしてもっと高い評価を受けて良いと常々思う。ク
イーンの音楽の生命力は、この二人の創るロックなグルーヴ感がキモなのである。この特
徴はポップな曲でも変わらないものあり、このロックなグルーヴがあるからこそクイーン
はロックから外れないのだ。そんなクイーンのこの1曲は、ポップかつクラシカルなメロ
ディ、荘厳なコーラスとギター、唯一無比のヴォーカル、そしてロックなグルーヴ感溢れ
る演奏と、彼らの良いところが全てパッケージされた《サムバディ・トゥ・ラヴ(邦題:
愛にすべてを)》をあげよう。《サムバディ・トゥ・ラヴ》で、ぼくの言うところのグル
ーヴ感を聴きとってほしい。そここそ、クイーン・サウンドの最高にたまらないとこだ。

『 Greatest Hits 』( Queen )
cover



1.Bohemian Rhapsody, 2.Another One Bites The Dust, 3.Killer Queen, 
4.Fat Bottomed Girls, 5.Bicycle Race, 6.You're My Best Friends,
7.Don't Stop Me Now, 8.Save Me, 9.Crazy Little Thing Called Love,
10.Somebody To Love, 11.Now I'm Here, 12.Good Old-Fashioned Lover Boy,
13.Play The Game, 14.Flash, 15.Seven Seas Of Rhye, 16.We Will Rock You,
17.We Are The Champions

+ bonus track(japan only)

18.Teo Torriatte (Let Us Cling Toghter)

Freddie Mercury(vo,p,g), Brian May(elg,g,cho),
John Deacon(elb,cho), Roger Taylor(ds,cho)

Label    : Parlophone
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