●ロックへの旅（第二章）：ユーヴ・リアリー・ゴット・ア・ホールド・オン・ミー
    （ザ・ミラクルズ：1962）

さて今回は、ミラクルズのＲ＆Ｂバラッドの傑作《ユーヴ・リアリー・ゴット・ア・ホー
ルド・オン・ミー》です。録音は1962年の11月ですが、ポップ・チャートで最高位にきた
のは翌年の２月です。その当時はメリー・ウェルズ（モータウン所属の女性歌手）への作
品提供などモータウンの重要スタッフとなっていたメンバーのスモーキー・ロビンソンが
書いた、初期モータウン・ナンバーの傑作でもあります。重厚なイントロ（ブレイクのた
びに繰りかえされる）が印象的な曲ですが、一番の魅力は作者のロビンソンのヴォーカル
・パフォーマンスでしょう。ロビンソンの独特な声（その声質によって”スモーキー”と
いうあだ名がついた）は一度聴いたら忘れられない類の声ですが、その声で歌われる「ホ
オォミィ、ホオォミィ」というブレイク部分のスルスル落ちるような感じ（ステージ・パ
フォーマンスの際には、ロビンソンはこの部分でしゃがみこむ）がたまりません。

ロビンソンのヴォーカルのたまらなさは、海を超えてビートルズにも伝わったようです。
セカンド・アルバムの『ウィズ・ザ・ビートルズ』で、公式スタジオ録音では唯一となっ
たジョンとジョージによるツィン・ヴォーカルでカヴァーしています（このアルバムでは
、《プリーズ・ミスター・ポストマン》、《マネー》とモータウン・ナンバーを３曲カヴ
ァーしています）。ジョンがリードをとっていることから推察すると、”どーしても歌っ
てみたい曲”としてジョンが選択したことは間違いないでしょう。ジョージがハーモニー
をつけているのは、ミラクルズ・ヴァージョンのハーモニー・ヴォーカルをそのままなぞ
らえた為で、ビートルズのハモリで低音を担当することが多いジョージに白羽の矢が立っ
たものと推察されます。ジョージは、原曲のハーモニー・ヴォーカルと、ミラクルズを支
えた名ギタリストのマーヴィン・タープリンの役割を一人でやっていることになります。

初めての大役によって、《ユーヴ・リアリー・ゴット・ア・ホールド・オン・ミー》とい
う曲はジョージにとって人生で忘れられない類の曲となったのではないでしょうか。映画
「レット・イット・ビー」のアップル・スタジオに移ってからのセッションで、ノリのよ
くないジョンをリードするかのように、ジョージがこの曲のハモリ部分を歌っている場面
があります。またソロになってからのアルバム『サーティ・スリー＆１／３』に収録され
たロビンソンに捧げた《ピュア・スモーキー》という曲では、歌詞の中で”ユーヴ・リア
リー・ゴット・ア・ホールド・オン・ミー”と織り交ぜて歌っています。《ピュア・スモ
ーキー》のような、ビートルズの中で最もブラック・ミュージックの影響を感じさせる曲
を創るようになるジョージのＲ＆Ｂの原点が、ミラクルズの《ユーヴ・リアリー・ゴット
・ア・ホールド・オン・ミー》のパフォーマンスにあるような気がします。

《 You've Really Got A Hold On Me 》( The Miracles )

The Miracles(1962) are William "Smokey" Robinson(lead), Warren "Pete" Moore(tenor), Ronnie White(baritone), Bobby Rogers(bass) and Claudette Rogers(contralto) Marvin Tarplin(elg) unknown maybe Joe Hunter(p), unknown maybe James Jamerson(elb), unknown maybe Benny Benjamin(ds), unknown(tp), unknown(tb), unknown(ts) Written by: Smokey Robinson Produced by: Smokey Robinson Released : November 9, 1962 Charts : POP#8, R&B#1 Label : Motown Appears on :The Ultimate Collection 1.Going To A Go-Go, 2.I Second That Emotion, 3.Shop Around, 4.Way Over There, 5.Bad Girl, 6.Who's Lovin' You, 7.I'll Try Something New, 8.You've Really Got A Hold On Me, 9.Mickey's Monkey, 10.I Like It Like That, 11.Ooo Baby Baby, 12.Choosey Beggar, 13.My Girl Has Gone, 14.Tears Of A Clown, 15.Baby, Baby Don't Cry, 16.Tracks Of My Tears, 17.Love I Saw In You Was Just A Mirage, 18.(Come 'Round Here) I'm the One You Need, 19.More Love, 20.Special Occasion, 21.If You Can Want, 22.Yester Love, 23.We've Come Too Far to End It Now, 24.What's So Good About Goodbye?, 25.(You Can) Depend on Me