●ロックへの旅(第二章):アップ・オン・ザ・ルーフ
    (ザ・ドリフターズ:1963)

小さな頃から音楽的才能を発揮していたというその少女が”その曲”を初めて聴いたのは
、おそらく15歳頃のことだったでしょう。黒人が多く住んでいることで有名なニューヨー
クのブロンクス生まれのその少女は、物心ついたときから黒人音楽が大好きだったそうで
す。その黒人音楽好きな少女が15歳という多感な時期に何を想っていたのかはわかりませ
んが、自分の周囲で起きていることが世界の全てのような思春期に、ラジオから流れてき
たであろう”その曲”は少女の心の琴線に触れたようです。”その曲”は、「この世に住
むのがわずらわしくなったときや、うるさい人から逃げ出したくなったとき、私は屋根の
上にいく。悩みは宇宙に吸い込まれていき、ただで星のショウも見られる。うるさい街の
真ん中のこの屋根の上が、私のパラダイス」というようなことを歌っていました。少女は
大人になってから、”その曲”を過去の自分に語りかけるように歌いました。

大人になった少女の名前は、ローラ・ニーロ。ローラが歌った”その曲は”、ドリフター
ズの《アップ・オン・ザ・ルーフ》という1963年のヒット曲です。ドリフターズといって
も、当然のことながら、いかりや長介や高木ブーのドリフターズとは別のグループです。
ドリフターズはアメリカの黒人ヴォーカル・グループで、《スタンド・バイ・ミー》を歌
ったベン・E・キングがいたグループとしても有名です。しかし、日本のドリフターズも
荒井注から志村けんにメンバーが変わったように、アメリカのドリフターズは時期によっ
てメンバーが全く異なるくらいにメンバー交代の激しいグループです。もともと、いろい
ろなグループからの”流れ者”が集まったグループだったようで、グループ名もそこから
きていると言われています。《アップ・オン・ザ・ルーフ》の頃は、ベン・E・キングが
ソロか活動に移ったため、1961年に入ったルディ・ルイスがヴォーカルを取っています。

ドリフターズのオリジナル・ヴァージョンは、しっとりとしたローラの弾き語りヴァージ
ョン(『ライヴ・アット・ザ・フィルモア・イースト』に収録)とは異なるポップなアッ
プ・テンポのヴァージョンです。作ったのは、ジェリー・ゴフィンとキャロル・キング。
リトル・エヴァの《ロコ・モーション》のヒットを持つソング・ライター・チームです。
このチームの曲は、シレルズがヒットさせキャロル・キングも自らもカヴァーした《ウィ
ル・ユー・ラヴ・ミー・トゥモロー》などもそうですけど、ゆっくりしたテンポでしっと
りと歌うとメランコリックな哀感がでてくるのはなぜなのでしょうか。しかしその哀感こ
そが《アップ・オン・ザ・ルーフ》という曲の最大の魅力であり、少女時代のローラの心
の琴線に触れたのも、優しい歌声で歌われる歌詞と、ポップなのだけどメランコリックな
哀感を持ったメロディにおそらく間違いないと思います。

《 Up On The Roof 》( The Drifters )
cover

The Drifters(1962) are
Rudy Lewis(lead), Charles Thomas(tenor), Eugene Pearson(baritone) and Tommy Evans(bass)

Written  by: Jerry Goffin and Carole King
Produced by: Jerry Leiber and Mike Stoller
Charts     : POP#5, R&B#4
Label      : Atlantic

Appears on :The Very Best Of The Drifters 
1.There Goes My Baby, 2.(If You Cry) True Love, True Love, 3.Dance With Me,
4.This Magic Moment, 5.Save the Last Dance for Me, 6.I Count the Tears,
7.Some Kind of Wonderful, 8.Please Stay, 9.Sweets for My Sweet,
10.When My Little Girl Is Smiling, 11.Up on the Roof, 12.On Broadway,
13.I'll Take You Home, 14.Under the Boardwalk,   
15.I've Got Sand in My Shoes, 16.Saturday Night at the Movies  

    
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