●ロックへの旅:スージー・Q
    (デイル・ホーキンス:1957)

1954年のエルヴィスのサン・セッションで録音された《ザッツ・オール・ライト》から、
ほぼ年代順にいろいろな曲を聴いているロックへの旅ですが、1956年のジョニー・バーネ
ット・ロックンロール・トリオの《ジ・トレイン・キプト・ア・ローリン》に続く二回目
の”ロック的衝撃”が、1957年のデイル・ホーキンスのR&Bヒット《スージー・Q》で
す。ビートルズ以降の60年代ロックを聴いてきた人ならば、おそらくぼくの言うところの
”ロック的衝撃”を一発で体感できることでしょう。《スージー・Q》におけるホーキン
スのパフォーマンスは、《ジ・トレイン・キプト・ア・ローリン》同様、もはやロックン
ロールではありません。60年代に花開く、ブルース・ロックそのものです。エルヴィスが
《テディ・ベア》をのん気に歌っている同じ時代に、ブルースの本場のシカゴでは、こん
なに凄いパフォーマンスが生まれていたという事実に素直に驚かされます。

さらに驚いてしまうのが、《スージー・Q》のレコーディング時点では、ホーキンスはま
だ10代だったという事実です。この曲のキモである特徴的なイントロのギター・リフを弾
いているジェームズ・バートン(後にリッキー・ネルソンやエルヴィスのバックも努める
ことになるギタリスト)も、ホーキンスと同じく10代でした。《スージー・Q》の、荒っ
ぽさは残るもののブルース・ロックそのものとも言える成熟したパフォーマンスは、当時
まだ10代だった白人青年達によるものであったということにただただ驚かされます。ルイ
ジアナ州で10代からプロのギタリストとして働いていたバートンは、同じくルイジアナ出
身で一歳年上のホーキンスとラジオ局で出会ったと言われています。年の近い二人は、お
そらく音楽の話で意気投合したのでしょう。ホーキンスとバートンは、ホーキンスの作っ
た曲のデモ・テープを地元のラジオ局でレコーディングします。

デモ・テープは、地元のレコード・ショップのオーナーによって、シカゴにあったチェス
・レコードに送られます。チェス・レコードは、レナードとフィルというユダヤ系移民の
チェス兄弟が作ったレコード会社です。改めて言うまでもありませんがチェス・レコード
は、マディ・ウォーターズ、ハウリン・ウルフ、サニー・ボーイ・ウィリアムスンといっ
た数多くのブルース・ミュージシャン達、そしてロックンロールの人気が全米に広がった
1957年当時はチャック・ベリーがドル箱スターだったレコード会社です。ロックンロール
が全国的に商売になることを受け、当時のチェスは黒人だけでなく白人ミュージシャンの
発掘もはじめていたそうです。ホーキンスは、その代表的な一人でした。おそらくデモ・
テープを聴いたチェスからのリクエストによって《スージー・Q》は録音され、チェスは
別レーベルのチェッカーから《スージー・Q》をリリースしました。

チェッカーは、1952年の設立当初はゴスペル中心のレーベル(アレサ・フランクリンの初
レコーディングも含まれる)だったとのことですが、《スージー・Q》が発売された1957
年当時は明確な音楽的な区分けはなかったようです(事実、《スージー・Q》はゴスペル
ではありません)。ミシシッピィ・デルタ地帯が広がるアメリカ南部の州のひとつのルイ
ジアナと、シカゴのチェス・レコードは、ブルースという言葉で結びつきます。ホーキン
スもバートンも、日常的に耳にしていたのは当時流行りのロックンロールではなくて、街
に来るカントリー・ミュージシャンの音楽かブルースだったのではないでしょうか。印象
的な《スージー・Q》のイントロのギター・リフは、ロックンロールというよりもカント
リーおよびブルースの影響を色濃く感じさせます。シカゴのチェス兄弟が惹かれたのも、
ブルース・フィーリングがどこかに感じられたからではないかと想像します。

《スージー・Q》のロック的に成熟したパフォーマンスの秘密は、このあたりにあるよう
な気がします。どれくらいロック的に成熟していたのかは、ローリング・ストーンズ(19
64年10月リリースのアメリカ盤セカンド・アルバム『12×5』および1965年1月リリー
スのイギリス盤セカンド・アルバム『ローリング・ストーンズNo.2』収録)やクリーデン
ス・クリアウォーター・リバイバル(1968年にシングル・ヒット)が、ほぼそのままのア
レンジでカヴァーしていることでもよくわかると思います。《スージー・Q》におけるホ
ーキンスとバートンのパフォーマンスは、サイケデリック・ロックを通過したあとの60年
代後半でも十分に通用するロック的表現でした。カントリーとブルースが血肉化したホー
キンスとバートンのパフォーマンスは、エルヴィスのサン・セッションに匹敵するくらい
のロックの歴史的なパフォーマンスといえるのではないでしょうか。

《 Susie-Q 》( Dale Hawkins )
cover

Dale Hawkins(vo,g), James Burton(elg), James "Sonny" Trammell (b),
Francis Ronald "Ronnie" Lewis (ds), 
James E. Martin, Edward Lee Copland & Tommy Mandina(handclap?)

Written  by: Daile Hawkins / Stanley Lewis / Eleanor Brodewater
Recorded   : 1957 KWKH Radio Shereveport
Charts     : POP#27, R&B#7
Label      : Checker

Appears on :Rocn'n'Roll Tornade
1.Susie-Q, 2.La-Do-Dada, 3.Back to School Blues, 4.Teenage Dolly,  
5.Boogie Woogie Teenage Girl, 6.Sweetie Pie, 7.Cross-Ties, 8.My Babe,  
9.Lonely Nights, 10.Yea-Yea (Class Cutter), 11.Grandma's House,  
12.I Want To Love You, 13.Boy Meets Girl, 14.Superman, 15.One Dozen Roses,  
16.Caldonia, 17.Convicted, 18.Lifeguard Man, 19.Liza Jane, 20.Hot Dog,  
21.Someday, One Day, 22.Lovin' Bug, 23.Four Letter Word (Rock),  
24.Wild Wild World, 25.Heaven, 26.Little Pig, 27.Mrs Merguitory's Daughter,
28.See You Soon Baboon, 29.Don't Treat Me This Way, 30.Tornado  


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