●ロックへの旅(第二章):ヘイ・ポーラ
    (ポール&ポーラ:1963)

ヒット曲には、俗に3連ロッカ・バラードと呼ばれるスタイルがあります。ロックもしく
はR&B的な要素を感じさせるバラード・スタイルの曲のことで、「チャ・チャ・チャ、
チャ・チャ・チャ」という3連符(音符)を使ったリズムが特徴的なのでそのように呼ば
れているようです。具体的な例を出すと、プラターズの《グレート・プリテンダー》、ポ
ール・アンカの《ユー・アー・・マイ・デスティニー(邦題:君はわが運命》、エルヴィ
スの《キャント・ヘルプ・フォーリン・ラヴ(邦題:好きにならずにいられない)》、と
いった曲が該当します。日本のヒット曲ですと、クール・ファイヴの《長崎は今日も雨だ
った》とか、RCサクセションの《スロー・バラード》といった曲を思い出してもらうと
イメージしやすいでしょうか。今回あげる曲は、先にあげた3曲以上に知られた3連ロッ
カ・バラードであり、ある意味では日本のヒット曲ともいえる《ヘイ・ポーラ》です。

ぼく自身、幼少期によく耳にした曲として、身体の中に刷り込まれています。日本では、
「コメットさん」というTVドラマで人気者だった九重祐三子(大場久美子の人は世代が
違う)の旦那の田辺靖雄という歌手と、《こんにちは赤ちゃん》や《二人でお酒を》で有
名な梓みちよのデュエットでヒットしています。二人の歌う姿は記憶にありませんが、曲
は鮮明に記憶に残っています。どうやら記憶に残っているのは田辺靖雄と梓みちよのカヴ
ァー・ヴァージョンではなく、オリジナル・ヴァージョンのようです。オリジナルは、ポ
ール&ポーラという男女デュオによって歌われています。なぜ男女デュオなのかというと
、「ヘイ、ヘイ、ポーラ、君と結婚したいんだ」「ヘイ、ヘイ、ヘイ、ポール、私もよ」
といった歌詞を男女の掛け合いで歌うラヴ・ソングだからです。ポーラが歌う「ヘイ、ヘ
イ、ヘイ」という甘く切ない部分が、妙にぼくの記憶に残っているのです。

それだけ記憶に残っているのは、曲が良いからでしょう。ロックの歴史に大きな影響を与
えた曲ではありませんが、改めて聴いてみると実によくできています。とくにコード進行
は、当時のヒット曲の中ではずば抜けて良いと思います。先にあげた3連ロッカ・バラー
ドに劣らない、いや、ひょっとして勝っているのではないかという気さえします。サザン
・オールスターズの《涙のアヴェニュー》なんてこの曲のDNAを物凄く感じるので、桑
田佳佑も《ヘイ・ポーラ》からインスパイアされたのかもしれません。いっぽうアメリカ
では、曲の良さに加えスィート・ハートなムードが受けたようです。モータウンが作った
マーヴィン・ゲイのデュエット・アルバム、とりわけタミー・テレルとのスィート・ハー
トな世界は《ヘイ・ポーラ》のモータウン的発展系ではないでしょうか。曲の作者は、ポ
ールことレイ・ヒルデブランドという人ですが、なかなか良い仕事をしたと思います。

《 Hey Paula 》( Paul & Paula )
cover
なんかやらしいぞ、ポール!

Paul(Ray Hildebrand) & Paula(Jill Jackson) (vo)

Written  by: Ray Hildebrand
Produced by: Bill Smith
Charts     : POP#1
Label      : Philips

Appears on :The Best of Paul & Paula 
1.Hey Paula, 2.Young Lovers, 3.Come Softly to Me, 4.We Go Together,
5.All the Love, 6.First Day Back at School, 7.Oh What a Love,
8.Hey! Baby, 9.First Quarrel, 10.Flipped over You,
11.Something Old, Something New, 12.So Fine,


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