●ロックへの旅（第二章）：キープ・ユア・ハンズ・オフ・マイ・ベイビー
    （リトル・エヴァ：1962）

前回のロックへの旅（第二章）では、エルヴィス・プレスリーの《リターン・トゥ・セン
ダー》を取り上げ、同時期のボブ・ゴーディオ（フォー・シーズンズ）やブライアン・ウ
ィルソン（ビーチ・ボーイズ）といったバンドの中の新しい才能や、音楽出版社系の作家
達の作品と比較すると感覚が古いというようなことを書きました。今回取り上げるリトル
・エヴァが歌った《キープ・ユア・ハンズ・オフ・マイ・ベイビー（邦題：私のものよ）
》は、その音楽出版社系の作家コンビのうちの一つ、ジェリー・ゴフィン＆キャロル・キ
ングの作品です。リトル・エヴァのデビュー曲で、同じくゴフィン＆キング作品の《ロコ
・モーション》（近年、日本のグループが自分達の曲に取り入れていたが、ああいうこと
をして良いのか）ほどのビッグ・ヒットにはなりませんでしたが、《ロコ・モーション》
よりもＲ＆Ｂ色の強い作品で、かつぼくにとって興味深い作品なのです。

興味深い理由は、ビートルズがカヴァーしているからです（『ライヴ・アット・ＢＢＣ』
収録、ヴォーカルはジョン・レノン）。ビートルズが同時期のヒット曲をリアルタイムで
カヴァーした例は、この曲の他にはありません。《キープ・ユア・ハンズ・オフ・マイ・
ベイビー》は、同じくジョンのヴォーカルでビートルズがカヴァーしたシレルズの《ベイ
ビー・イッツ・ユー》やマーヴェレッツの《プリーズ・ミスター・ポストマン》といった
ガール・グループ作品と同じ系統の曲です。要するにジョンがカヴァーした理由は、”好
みの曲だったので歌ってみたかったから”ではないかと推測します。リトル・エヴァが歌
うと、「私のカレに手を出さないで」という可愛いらしいティーン・エイジ・ポップスで
すが、ジョンが歌うと「オレの女に手を出すんじゃねぇ！」という印象のドスのきいたロ
ックに変貌するところは、さすがは”ヴォーカリスト”ジョン・レノンです。

それだけではなく、《キープ・ユア・ハンズ・オフ・マイ・ベイビー》を聴くと、もうひ
とつ面白い想像をしてしまいます。この曲の歌詞は、タイトル部分が繰り返し歌われます
が、その”ハンズ”というところに注目です。ここをリトル・エヴァがどう歌っているか
というと、「ハァアンアン」と歌っているのです。これ、ヴォーカリストにとって、歌っ
ていて気持ち良い部分だと思います。ジョンもおそらく気持ち良かったのではないでしょ
うか。ビートルズはこの曲をＢＢＣで一度歌ったきりですが、どうしても「ハァアンアン
」の気持ちよさを忘れられなかったジョンは、オリジナル作品の中に巧みに「ハァアンア
ン」を紛れ込ませたと思われます。そうです、ビートルズの代表作《アイ・ウォント・ホ
ールド・ユア・ハンド》の、「ア・ワナ・ホー・ヨォ・ハァアァアン」です。もちろん勝
手な想像にすぎませんが、「ありえなくもないな」と思ってしまうのです。

《 Keep Your Hands Off My Baby 》( Little Eva )

Little Eva(vo) Written by: Gerry Goffin / Carole King Produced by: Gerry Goffin / Carole King Recorded : 1962 Released : 1962 Charts : POP#12 Label : Dimension Appears on :Llll-Little Eva!: The Complete Dimension Recordings 1.The Loco-motion, 2.He Is The Boy, 3.Some Kinda Wonderful, 4.I Have A Love, 5.Down Home, 6.Breaking Up Is Hard To Do, 7.Run To Her, 8.Uptown, 9.Where Do I Go, 10.Up On The Roof, 11.Sharing You, 12.Will You Love Me Tomorrow, 13.Keep Your Hands Off My Baby, 14.Lets Turkey Trot, 15.Swinging On A Star, 16.Old Smokey Loco-motion, 17.Just A Little Girl, 18.The Trouble With Boys, 19.What I Gotta Do (To Make You Jealous), 20.Lets Start The Party Again, 21.Please Hurt Me, 22.The Christmas Song, 23.I Wish You A Merry Christmas, 24.Makin With The Magilla, 25.Wake Up Jonn, 26.Takin Back What I Said, 27.Get Him, 28.Another Night With The Boys, 29.Little Eva (The Locomotions)