●ロックへの旅:スクール・ディ
    (チャック・ベリー:1957)

さて、今回は1955年のデビュー曲《メイベリーン》に続いて二度目の登場のチャック・ベ
リーです。ビートルズがカヴァーした《ロックンロール・ミュージック》や、ローリング
・ストーンズのデビュー曲《カム・オン》、そしてロックンロール・ショーのアンコール
にになくてはならない《ジョニー・B・グッド》の作者のベリーがロックンロールの偉大
なオリジネーターであることに、異論をはさむ人はないでしょう。《メイベリーン》のポ
ップ・チャートでの大ヒット以降、ベリーは1955年に2枚、1956年に3枚の合計5枚のシ
ングルを発表。そして今回紹介する《メイベリーン》から数えて7枚目のシングル《スク
ール・ディ》で、再びポップ・チャートで大ヒットを飛ばすのです。これだけだと当たり
前のようにも思えるのですが、ぼくはふと考えるのです。ベリーは、なぜ《スクール・デ
ィ》で再びポップ・チャートで大ヒットを飛ばすことができたのか。

これが考えてみると、ちょっと不思議なのです。当時のベリーの曲は、全てがロックンロ
ール・クラシックといっても過言ではありません。例えば、1956年の3枚のシングルのう
ちの1枚は、ビートルズもカヴァーしたロックンロール・クラシック《ロール・オーヴァ
ー・ベートーヴェン》です。しかし、黒人中心のR&Bチャートではヒットしても、ポッ
プ・チャートでの大きな成功は《スクール・ディ》までないのです。ちなみに《ロール・
オーヴァー・ベートーヴェン》は、R&Bチャートでは2位、ポップ・チャートでは29位
です。もちろん当時は現在のように1曲ヒットすれば”どんな曲でも関係なく”次々とヒ
ットしてしまうような時代ではありませんし、ミュージック・ビデオも当然ありません。
それを加味したとても、《ロール・オーヴァー・ベートーヴェン》がポップ・チャートで
トップ10入りせず、なぜ《スクール・ディ》で3位だったのかわからないのです。

《スクール・ディ》によるポップ・チャートでの再ブレイクの理由の一つに考えられるの
が、ロックンロール創世記の立役者の一人、人気白人DJのアラン・フリードの映画「ロ
ック、ロック、ロック」です。白人社会から当初は冷たい視線で見られていたロックンロ
ールをラジオで流し続けたアラン・フリードが若者達のあいだで人気者だったとは聞いて
いましたが、映画まで撮っていたとはつい最近まで知りませんでした。この「ロック、ロ
ック、ロック」という映画にベリーは出演して、1956年11月発売のシングル《ユー・キャ
ント・キャッチ・ミー》のパフォーマンスを披露しているそうです(他にも、フランキー
・ライモン&ザ・ティーン・エイジャーズ、ラヴァーン・ベイカー・ジョニー・バーネッ
ト・トリオなどが出演)。このアラン・フリードのロックンロール映画によって、ベリー
の名が全米の若者達に知られたのではないかという推測ができます。

しかし、もし理由がそれだけならば、ポップ・チャートでヒットしたのは《ユー・キャン
ト・キャッチ・ミー》になるはずです。なぜ《スクール・ディ》だったのか。ロックンロ
ールが若者達(もちろん白人の)に人気があることを知っていたベリーは、”若者達の半
数以上が学生である”ということから《スクール・ディ》を書き上げたそうです。「今日
も学校に行って歴史と算数の勉強、試験の結果は神頼み、3時のチャイムでホールを飛び
出し、角を曲がったいつのも店へ、ジューク・ボックスのイカした曲であの娘とイチャイ
チャ」というような意味の歌詞の《スクール・ディ》は、現代の日本の中高生にも通じる
ような、誰もが感じたことのある若者の気持ちを歌っていました。日本の尾崎豊の歌に同
世代が共感を示したように、アメリカの白人の若者達もベリーの歌に共感したのかも知れ
ません。

しかし《スクール・ディ》ヒット時のベリーは既に30代。十分に世俗の世界を知った大人
でした。その証拠にベリーは、《スクール・ディ》について「教室なんかじゃなく、セン
トルイスの黒人向けの安ホテルで書いたのさ」と語ったといわれています。《メイベリー
ン》も白人社会での成功を狙ってカントリーを取り入れていましたが、《スクール・ディ
》も白人の若者達の日常をテーマにしてヒットを狙った曲といえます。これこそがベリー
の”ビジネス感覚溢れる”才能です。狙いが見事に当り、《スクール・ディ》はポップ・
チャートで成功したのでしょう。しかし《スクール・ディ》がビジネス云々を超えて素場
らしいのは、最後の「ヘイル、ヘイル、ロックンロール(ロックンロール万歳!)」とい
う言葉があるからだと思うのです。この言葉こそベリーが若者達に伝えたかった言葉であ
り、ぼく自身この言葉を聴くと自由を思いっきり謳歌したくなる気分になるのです。

《 School Day 》( Chuck Berry )
cover

Chuck Berry(vo,elg), Johnnie Johnson(p), Willie Dixon(b), Fred Below(ds)

Written  by: Chuck Berry
Recorded   : Dec, 1956
Released   : Mar, 1957
Charts     : POP#3
Label      : Chess

Appears on :The Ultimate Collection Chuck Berry
Disk1
1.Maybellene, 2.Wee Wee Hours, 3.Thirty Days, 4.No Money Down,
5.Down Bound Train, 6.Roll Over Beethoven, 7.Too Much Monkey Business,
8.Brown Eyed Handsome Man, 9.You Can't Catch Me, 10.Havana Moon,
11.School Day(Ring Ring Goes the Bell), 12.Oh Baby Doll,
13.Rock and Roll Music, 14.Sweet Little Sixteen, 15.Reelin' and Rockin',
16.House of Blue Lights, 17.Johnny B.Goode, 18.Around and Around,
19.Beautiful Delilah, 20.Carol  
Disk2
1.Sweet Little Rock and Roller, 2.Joe Joe Gunn, 3.Merry Christmas Baby,
4.Run Rudolph Run, 5.Anthony Boy, 6.Little Queenie, 7.Almost Grown,
8.Memphis Tennessee, 9.Back in the U.S.A., 10.Childhood Sweetheart,
11.Too Pooped to Pop, 12.Let It Rock, 13.Bye Bye Johnny, 14.Mad Lad,
15.Betty Jean, 16.Down the Road Apiece, 17.Jaguar and Thunderbird,
18.I'm Talking About You, 19.Route 66  
Disk3
1.Go Go Go, 2.Come On, 3.Nadine, 4.No Particular Place to Go,
5.You Never Can Tell, 6.Go Bobby Soxer, 7.Little Marie,
8.Promised Land, 9.Thing's I Used to Do, 10.Dear Dad,
11.Lonely School Days, 12.It Wasn't Me, 13.Tulane, 
14.Club Nitty Gritty, 15.It Hurts Me Too, 16.My Ding-A-Ling,
17.Reeling and Rocking [1972 Re-Recording]  


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