●ロックへの旅:カム・ゴー・ウィズ・ミー
    (デル・ヴァイキングス:1957)

「ダン、ダン、ダン、ダン、ダン、(ッン)、ダン、ディ、ドゥビ」というゴキゲンなド
ゥ・ワップ・コーラスで始まるのが、ジョージ・ルーカス監督の「アメリカン・グラフテ
ィ」やロブ・ライナー監督の「スタンド・バイ・ミー」などの映画でも使用されたデル・
ヴァイキングスの1957年のヒット曲《カム・ゴー・ウィズ・ミー》です。我らがビーチ・
ボーイズも、1978年の『MIUアルバム』でカヴァーしています。《カム・ゴー・ウィズ
・ミー》を作り歌ったデル・ヴァイキングスというグループは、当時は珍しかったであろ
う黒人と白人の混合のドゥ・ワップ・グループです。《カム・ゴー・ウィズ・ミー》の他
には、《ウィスパリング・ベルズ》というヒット曲を持っています。デル・ヴァイキング
スは《カム・ゴー・ウィズ・ミー》のヒットによっておそらく大きな成功を手にしたので
しょうが、その成功はデル・ヴァイキングスの運命も大きく変えていったようです。

デル・ヴァイキングスは、1955年にアメリカはピッツバーグの空軍基地にいた5人の黒人
兵がキャンプなどで歌い始めたことによって結成されたと言われています。その5人の中
には、《カム・ゴー・ウィズ・ミー》の作者でグループのバス(コーラスの低音部)を担
当するクラレンス・E・クイックもいました。1956年には各地で行われたタレント・コン
テストで入賞したりしていたそうですが、軍隊という性質上2人のメンバーが離れ、その
代わりにリード・テナーのノーマン・ライトと、初の白人メンバーとなるバリトンのデイ
ビッド・ラーチェイが加わります。この黒人4人と白人1人という編成が、《カム・ゴー
・ウィズ・ミー》レコーディング時のメンバーとなります。やがてデル・ヴァイキングス
のデモ・テープが、ローカルDJのバリー・ケイという人によってレコーディングされま
す。その中には、《カム・ゴー・ウィズ・ミー》の初期ヴァージョンもありました。

デモ・テープがきっかけで、デル・ヴァイキングスはピッツバーグのローカル・レーベル
フィー・ビーと契約します。《カム・ゴー・ウィズ・ミー》は、フィー・ビーできちんと
した形でレコーディングされました。フィー・ビーのオーナーはドットというレコード・
レーベルに、販売権をリースします。その結果《カム・ゴー・ウィズ・ミー》は、1957年
の春から初夏にかけて全米でヒットしました。《カム・ゴー・ウィズ・ミー》のヒットに
より、デル・ヴァイキングスはDJでTV番組を持つほど人気のあっただったアラン・フ
リードのショウなどを含む全米ツァーを行います。また《リトル・ダーリン》のヒットを
持つダイアモンズを擁していたマーキュリー・レコードからも、新たな契約の話しがまい
込みます。ここまでは、順風満帆だったのでしょう。しかし自分達の曲のヒット、ツァー
、新たな契約と続く成功は、メンバー間に亀裂を生じさせたようです。

セカンド・テナーを担当していたメンバーがグループを離れ、二人目の白人としてガス・
バッカスがグループに加わります。それもつかの間、グループはマーキュリーとドットと
いう2つのレーベルに分裂してしまいます。デル・ヴァイキングスという名前が、英語表
記で書くと(The Dell-Vikings)や(The Del-Vikings)だったりするのはそのためで、L
が2つ続いているのがドットに残ったほう、デルとヴァイキングスの間にハイフンの入っ
ているのがマーキュリーに移ったほうのようです。しかし当時のレコードの表記をみても
、マーキュリーでもドットのオリジナルどおりに(The Del Vikings)という表記が使用さ
れていたりするので一概にはなんとも言えません。しかし確かだと思うのは、《カム・ゴ
ー・ウィズ・ミー》を録音した時点での彼らはおそらく仲の良い音楽仲間であり、なによ
りそれは《カム・ゴー・ウィズ・ミー》のパフォーマンスに表れているということです。

楽しげな《カム・ゴー・ウィズ・ミー》のヒット裏には、そのようなグループの複雑な事
情があったようです。それでも曲が持っている一緒に歌うことの楽しさと、その雰囲気が
聴き手に与えるハッピーな気分は永遠に失われることはありません。おそらくアメリカ人
にとって《カム・ゴー・ウィズ・ミー》という曲は、日本の団塊フォーク世代にとっての
フォーク・ソングのようなものなのではないでしょうか。フォーク世代のおじさんが吉田
拓郎の歌などを歌うと、それに合わせてみな笑顔で歌いだすように、誰かが「カーン、カ
ーン、カーン、カーン(Come、Come、Come、Come)」と歌いだすとアメリカン・グラフテ
ィ世代のアメリカ人はみな歌い出すのではないか。この曲を聴いているとそんな想像をし
てしまいます。分裂したグループも、オールディーズのショーで再び一緒に歌っていたり
していたようです。それもまた、楽しいこの曲あってのことだったのではと思うのです。

《 Come Go With Me 》( The Del Vikings )
cover

The Del Vikings are
Norman Wright(lead tenor), Corinthian "Kripp" Johnson(first tenor), 
Don Jackson(second tenor), David Lerchey(baritone) and Clarence E. Quick (bass)
Gene Upshaw(sax)

Written  by: Clarence E. Quick
Charts     : POP#5,R&B#3
Label      : FeeBee/Dot

Appears on :The Best Of The Del Vikings
1.Come Go With Me, 2.Don't Be A Fool, 3.Whispering Bells, 4.Cool Shake,
5.A Sunday Kind Of Love, 6.Come Along With Me, 7.When I Come Home,
8.I'm Spinning, 9.The Big Beat, 10.The Voodoo Man,
11.I Hear Bells (Wedding Bells), 12.Bring Back Your Heart


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