●クラプトンの最高のアルバムは?

世の中には、なぜそんなに人気があるのか、よくわからない大物アーティストやミュージ
シャンがいる。ぼくにとって、エリック・クラプトンという人はそのような存在のミュー
ジシャンの一人だ。ぼくごときが言うのもなんだが、確かにギターはそこそこ弾けるよう
だ。しかし、上手いのかどうかがよくわからない。わが日本で、クラプトンと並んで3大
ギタリストの一人として数えられるジェフ・ベックのギターは文句なく上手いと思う。し
かし、どうもクラプトンのギターはピンとこないのだ。それでも友人達はクラプトンを褒
め称える。これがわからなくて、クラプトンの在籍したヤードバーズ、ブルース・ブレイ
カーズ、クリーム、ブラインド・フェイスなどを含めアルバムも聴きまくったのだがやは
りピンとこない。そしてクラプトンへの興味もなくなった。有名な「アンプラグド」なん
て観ても聴いてもいなくて、友人に驚かれたくらいである。

しかし、このクラプトンという人、他の国では知らんが日本においては熱狂的ともいえる
ファンを持っているのだ。ぼくのまわりにも、クラプトン命の人というのは、いつも時代
にもいた。あなたのまわりにも、例えば次のような人がいたのではないか。クラプトン、
ベック、ペイジの中でクラプトンが一番だといってレコードや映像(80年代以降はやたら
と多い)をやたらめったら集めている人、ギターのヘッドに火をつけたタバコをさしてい
た人(これは定番ですね)、来日公演は全て追っかけていた人、クラプトンの容姿や演奏
スタイルを真似てみたりする人(どういうわけか日本人ミュージシャンにも多し)、クラ
プトン好きの自分が酒と女にだらしないのを「全部クラプトンが悪いんだ」などとクラプ
トンのせいにして今日も飲んだくれている人など、思い出してみても本当にたくさんの熱
狂的なクラプトン命の人がいたものである。

面白いのは、クラプトン命の人はほぼ男性だということだ。クラプトン、ジェフ・ベック
と並ぶ3大ギタリストの一人のジミー・ペイジの熱狂的なファンは、どういうわけか女性
が多くなる。どちらかというとクラプトンのほうがハンサムだと思うのに、ペイジのほう
が圧倒的に女性に人気があったのはどういうことか。クラプトン命の男性ファンというの
は、その気がアル人が多いのか。それはまあ冗談としても、クラプトン・ファンの多くの
男性が、おそらく一度はギターを手にしたことがあり、”ギターの神様”と巷で言われる
クラプトンへの憧れからクラプトンを聴くようになっていったと推測する。そしてそのき
っかけとなったのは、1970年代の音楽雑誌に掲載されていたり楽器屋などに貼ってあった
クラプトンがエクスプローラという少し変わった形をしたギターを弾いている広告(確か
ミュージックマンというメーカーの広告だったような)ではなかったか。

とどのつまりは日本におけるクラプトン人気というのは、クラプトンの音楽がどーのこー
のというよりも、クラプトンの見た目や、”レイラ”などにまつわる伝説などによって形
成されていったのではないか。それによってクラプトンの音楽というのは、過剰に評価さ
れているのではないだろうか。というのも、先に述べたように、ぼくにとってクラプトン
のギター・プレイなんて巷で言われるほどピンとくるものではなく、クラプトンがジェフ
・ベックと一緒にプレイすればハードなベックのギターのほうが凄いと思うし、ジョージ
・ハリスンと一緒にプレイすればハリスンの”あのスライド”が出るとクラプトンなんて
一発で吹き飛んでしまうのである(少し言いすぎか)。しかしクラプトンの音楽が全く嫌
いなのかといわれればそうではなく、いいものはイイのである。ピンとくるものもあるの
である。ただそれは、ギター・プレイではなく演奏された音楽全体そのものなのだ。

ぼくが本当にイイと思うのは、以前に書いたが70年代半ばのクラプトンである。この時代
のクラプトンがイイのは、リラックスして心から演奏を楽しんでいるのが音楽から伝わっ
てくるからだ。例えば『ゼアズ・ワン・イン・エヴリー・クラウド(邦題:安息の地を求
めて)』。一般的には評価されないアルバムだが、ぼくの愛聴盤だ。このアルバムのメン
バーは、クラプトンにとって初めて心から楽しんで演奏できるバンド仲間だったのではな
いか。音楽を聴いていると、それをつよく感じるのだ。とくにアナログB面にあたる6曲
目以降、とりわけ《ベター・メイク・イット・スルー・デイ》(ぼくのクラプトンのベス
ト)、《プリティ・ブルー・アイズ》のバラード調になる部分、《オポジット》のエンデ
ィングの泣きのギターなど最高のクラプトンの音楽が詰まっている。こういうのを評価せ
ずに、《クロスロード》も《ホワイト・ルーム》もないだろうと思うのだ。

『 There's One In Every Crowd 』( Eric Clapton )
cover

エクスプローラの音も聴けるゾ


1.We've Been Told (Jesus Is Coming Soon), 2.Swing Low, Sweet Chariot,
3.Little Rachel, 4.Don't Blame Me, 5.Sky Is Crying,
6.Singin' the Blues, 7.Better Make It Through Today,
8.Pretty Blue Eyes, 9.High, 10.Opposites

Eric Clapton(vo,g,elg,dobro-g), 
George Terry(g,elg,cho), Jamie Oldaker(ds,per),Dick Sims(org,p,elp), 
Carl Radle(elb,per), Yvonne Elliman(vo,cho), Marcy Levy(cho)

Recorded : Aug-Sep, 1974 At Dynamic Sound Studio, Jamaica 
                           & Criteria Studios, Miami Florida
Producer  : Tom Dowd
Label     : Polydor
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