●僕達はライブ・エイドで何を聴いたのだろう

今年の11月は、いろいろと楽しみなアイテムがめじろ押しである。先週紹介したビートル
ズのキャピトル・ボックスもその一つだが、今回紹介するのは1985年に世界を結んで行わ
れた大イヴェント「ライブ・エイド」である。前年にボブ・ゲルドフがイギリスで作った
「バンド・エイド」に始った”エイド”ブームは、アメリカの「USA・フォー・アフリ
カ」へと続き、ついにはこのイギリスとアメリカを結んだ一大コンサートへと発展してい
った。日本でも確かフジTV系列で生中継され、南こうせつ(!)が司会(あるいはコメ
ンテータ)だった記憶がある。それだけではなく、佐野元春とか矢沢永吉のプロモ・クリ
ップも英語の字幕つきで流された。佐野元春とか矢沢永吉も嫌いではなかったが、邪魔だ
と感じたものだ。なにしろ僕の記憶が確かならば、ビートルズが再結成して歌うのではと
言われていたのである。その噂が現実味を帯びるだけの雰囲気が、当時の”エイド”ブー
ムにはあったのだ。
その伝説的なイヴェントのDVDがついに発売される。DVD4枚組みだ。下のジャケッ
ト・イメージをクリックして、アマゾンのサイトで出演者をみてほしい。ずいぶんいろい
ろな人がでていたのだなと、改めて思った。以下に書くことは、全て僕の記憶である。僕
が個人的に記憶に残っているのは、前半のイギリス勢ではまずブライアン・フェリー。ピ
ンク・フロイドのディヴィッド・ギルモアがギターを弾いていたはずだ。ロキシー・ミュ
ージックの傑作『アヴァロン』の流れにそった当時の最新ソロ作『ボーイズ・アンド・ガ
ールズ』からシングル《スレイヴ・トゥ・ラヴ》を歌ったのを憶えている。良いステージ
だった記憶がある。クィーンは観たのは憶えているのだが、あまり印象に残っていない。
おそらく興味がなかったのだろう。ビーチ・ボーイズやフーは、全く記憶にない。1985年
のビーチ・ボーイズというとブライアン入りか?。当時《ゲッチャ・バック》が巷で結構
流れていて、あの一世を風靡した”おニャン子クラブ”を生んだTV番組「夕焼けニャン
ニャン」のジングルも《ドゥー・ユー・ワナ・ダンス》だったのだが、ライブ・エイドで
のビーチ・ボーイズは全く記憶に残っていない。たぶん寝ていたのだろう。僕にとっての
、このDVDの楽しみのひとつである。
その反面で、イギリスに遅れること数時間して始ったアメリカ側で最初に出てきたジョー
ン・バエズは”その浮きぐあい”がとても印象に残っている。巨大なステージで一人で立
つ彼女の姿は、現役のミュージシャンというよりも、60年代の遺物を観ているような印象
を受けた。そして別な意味で”浮いていた”のが、マドンナ。「USA・フォー・アフリ
カ」では”格の違い”で声がかからなかったとかいう伝説もあるが、ライブ・エイドで《
ホリディ》を歌い踊る彼女のステージは普段のイメージと全く変わらず、バエズと対照的
だったので強く記憶に残っている。イギリスのトリを飾ったのは、ポール・マッカートニ
ー。日本で大騒ぎされていたビートルズの再結成(ジョンの代わりはジュリアンかと言わ
れていた)は当然かなわず、何故かデヴィッド・ボウィーとかが後ろでコーラスをやって
いる《レット・イット・ビー》だった。それでもポールが歌うということだけで興奮して
いたが、どこかしら空々しい違和感を感じたのも事実。その印象を、DVDで確かめたい
と思う。いろいろいわれているように、確かにマイク・トラブルがあったはずだ。
そして夕焼けが迫るアメリカ側のステージは、続々と大物が登場した。フィル・コリンズ
は、ついさっきまでイギリスで演奏していたかと思ったら、ジェット機でアメリカに飛び
ステージに姿を現した。そのフィルがドラムを叩いたレッド・ツェッペリンが未収録なの
は惜しい。しかし同じくフィルがドラムを叩いたエリック・クラプトンのステージは収録
されている。確か放送でも、《レイラ》を聴いた記憶がある。未収録と言えば、デュラン
・デュランのメンバーとロバート・パーマーとシックのドラマーのトニー・トンプソンが
結成した強力なバンド、パワー・ステーション(出たよね)も入っていない。残念!。で
もテンプテーションズのエディ・ケンドリックスとデヴィッド・ラフィンをゲストにした
ホール&オーツのモータウン3連発は楽しみ。振りつきでやった《マイ・ガール》は、強
く記憶に残っている。そしてすっかり暗くなったステージに登場したのが、ミック・ジャ
ガー。ティナ・ターナーを後ろに侍らせて、ステージを駆け回る姿が印象に残っている。
日本公演もまだ先なので、けっこうミックは長い間ソロ活動をしていたのだなぁ。そして
コンサート全体のトリとしてステージの幕の前に姿を現したボブ・ディラン。なんとキー
スとロンが横にいるではないか。でも音のほうは、全く印象に残っていない。ただただ、
その姿だけに興奮していた憶えがある。こうして記憶を振り返ってみると、やはりこのよ
うなイヴェントというのはお祭のようなものであり、続々でてくるスターに興奮はするが
音楽そのものはあまり憶えていないものである。今回発売のDVDで、音楽を共に楽しみ
たい。

『 LIVE AID 』
cover
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