●珠玉のカヴァー集/ザ・ビートルズ・セカンド・アルバム

今年(2004年)は、ビートルズのアメリカ上陸40周年である。1964年の2月にアメリカに
上陸したビートルズは、ケネディ空港でのウィットにとんだ記者会見を皮切りに、アメリ
カをビートルズ一色にそめた。その後、エド・サリヴァン・ショー出演、ワシントンDC
公演など、いまは歴史となってしまった出来事を残している。ビートルズのアンソロジー
の中でも、この時のエド・サリヴァン・ショーを観たアメリカ人には、「(エド・サリヴ
ァン・ショーのビートルズが)ケネディ暗殺と同じくらい印象的な出来事だった」と語ら
れている。ビーチ・ボーイズのブライアン・ウィルソンも、当時の恋人で後に妻になるマ
リリン・ローヴェルの家でエド・サリヴァン・ショーを観ていたと自叙伝の中で語ってい
る。そしてビートルズに熱狂するローヴェル家の3姉妹の姿に、”動揺した”らしい。ブ
ライアンが脅威を感じたとおり、ヒット・チャートにおいても2月1日の《アイ・ウォント
・ホールド・ユア・ハンド》の1位を皮切りにビートルズが席巻していく。5月にルイ・
アームストロングの《ハロー・ドーリィ》が1位になるまでは、まさにビートルズ一色と
いえる。そして時代は、ロックン・ロールからロックの時代へと変わっていくのである。
それから40周年となる今年、アップルからまた嬉しいプレゼントだ。アメリカ上陸40周年
を記念して、当時のアメリカでのビートルズの配給元レコード会社だったキャピトルから
発売されていた編集盤の復刻ボックス・セットである。現在ビートルズのアルバム(CD
)は、アップルの監修のもとイギリス盤オリジナル(『マジカル・ミステリー・ツアー』
など一部例外あり)全世界統一内容となっている。しかし60年代当時は、アルバムという
ものはあくまでも”ヒット曲の寄せ集め”という存在だった。従って、各国が音源を組み
合わせて勝手に編集盤を出していたのである。そのようなことが許される、喉かな時代で
あったのだ。デビュー当初からあきらかにある程度のコンセプトをもってアルバムを制作
していたビートルズは、おそらくそれを快くは感じていなかっただろう。しかし認めてい
なかったわけではなく、コンサートなどでその国の自分達のレコード(アルバム)の発売
状況にあわせたアナウンスを行っている。当時のアメリカでビートルズの発売権をもって
いたキャピトルで、アルバムの内容がイギリス盤と統一されるのは『サージェント・ペパ
ーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』からである。それまでイギリスで発売された
7枚のアルバムの音源はバラバラにされ、キャピトルはなんと12枚のアルバム(UAから
出た『ア・ハード・デイズ・ナイト』を含む)を発売している。アメリカという巨大なマ
ーケットを考えて、ビートルズ側も認めざる得なかったのであろう。そして1964年にビー
トルズを初めて聴いたアメリカ人にとっては、80年代にCDが出るまではこのキャピトル
盤がオリジナルだったのだ。ついでにいうと、我が日本においても独自の編集盤は存在し
ていた。日本編集盤の1枚目と2枚目はのジャケットは、キャピトル盤を踏襲したものであ
る。イギリス・オリジナルの1枚目と2枚目の『プリーズ・プリーズ・ミー』と『ウィズ・
ザ・ビートルズ』は、なんと”ステレオ!これがビートルズVol.1&Vol.2”として曲順も
滅茶苦茶になって発売されていた。
少し話は横道にそれてしまったが、キャピトル・オリジナル盤シリーズは60年代後半から
70年代にかけて日本でも発売されていた。この中には、なかなか味のある編集盤もあるの
だ。僕の愛聴盤だったビートルズのアルバムも、今回のボックスに含まれているものであ
る。『ザ・ビートルズ・セカンド・アルバム』がそうだ。その名の通り、キャピトル2枚
目となるアルバムである。これが最高のアルバムなのだ。ジャケットがまずカッコいい。
エド・サリヴァン・ショーやワシントンDCや空港でのビートルズが写っている。その中
の1枚は、後に編集盤の『ロックン・ロール・ミュージック』のジャケットにも使われた
ものだ。見開きのジャケットを開くと、中にはビートルズ・ファン・クラブ会長だった香
月利一さんの解説が日本語で印刷されている。昔の洋楽のアルバムは、解説がジャケット
にそのまま印刷されているものも多かったのだ。そして収録曲がまた良い。このアルバム
の曲を決めたやつは、なかなか良いセンスをしている。ビートルズ珠玉のカヴァー集だ。
冒頭のジョージのギター・イントロから始る《ロール・オーバー・ベートーヴェン》を皮
切りに、《ユー・リアリー・ゴット・ア・ホールド・オン・ミー》、《デヴィル・イン・
ハー・ハート》、《マネー》、《ロング・トール・サリー》、《プリーズ・ミスター・ポ
ストマン》が入っている。なかでも3曲のモータウン・ナンバーのカヴァー(《ユー・リ
アリー・ゴット・ア・ホールド・オン・ミー》、《マネー》、《プリーズ・ミスター・ポ
ストマン》)とポールの最高のシャウトが聴ける《ロング・トール・サリー》には痺れま
くった。そして《シー・ラヴス・ユー》まで入っているのだ。僕にとっては、もう”言う
ことなし”のアルバムだったのである。このアルバムが、まさに僕のビートルズ体験だっ
た。アルバムをかけながら、何度一緒に歌ったかわからない。全世界統一仕様になって淋
しい思いをしていたのだが、今回正式に復刻されて嬉しい限りである。
ちなみにこのアルバム、マニアックな楽しみもある。例えば《サンキュー・ガール》。こ
のアルバムのステレオ・ヴァージョンの《サンキュー・ガール》は、現在公式ヴァージョ
ンとなっているのモノラル・ヴァージョンよりもジョンのハーモニカ・パートが多い。僕
などはこのステレオ・ヴァージョンがすっかり身体に染み付いていたので、モノラルを聴
いたときは”くるべきところでくるべきものがこない”みたいな感覚で変な気分になった
のを覚えている。今回のボックス・セットにはモノラルとステレオの両方が収録されてい
るようだが、そのあたりがどうなっているのかも気になるところである。そのようないろ
いろな楽しみ方のできるキャピトル版。僕は買うぞ!!。もちろんCCCDではなく価格も安
いアメリカ盤である。おお、アマゾンでは売上1位ではないか。Vol.2も楽しみだぁー。
『 Capitol Albums, Vol.1 』 ( The Beatles )
cover

ディスク: 2(The Beatles Second Album)
1.Roll Over Beethoven, 2.Thank You Girl, 3.You Really Got a Hold On Me, 
4.Devil In Her Heart, 5.Money, 6.You Can't Do That, 7.Long Tall Sally, 
8.I Call Your Name, 9.Please Mr. Postman, 10.I'll Get You, 11.She Loves You

Label:Capitol
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