●見た!聴いた!感動した!『ブライアン・ウィルソン・プレゼンツ・スマイル』

ついに届いた!ジャケットとブックレットを見た!音楽を聴いた!これ以上無いくらい感
動した!。『ブライアン・ウィルソン・プレゼンツ・スマイル』!!!!!。
アメリカの有名なロック雑誌「ローリング・ストーン」は5つ星をこのアルバムに与えた
が、そんなんじゃ足りない。40年以上も現役で活躍し続けている偉大なアーティストが、
自分を苦しめてきた過去の亡霊に打ち勝って、満を持して世に問いなおす音楽なのだ。こ
れだけ壮大なロック、ポピュラー音楽が他にどこにあるのだ。いままでに5つ星が与えら
れたロック・アルバムと同じレベルなのか。他に比類するアルバムなんて、数枚しか存在
しないはずだ。歴史のあるロック雑誌なのだから、この偉大な音楽にもっと敬意をもって
扱わなければいけないよ、ローリング・ストーン!。
それにしても何という壮大な音楽なのだろう。これまでビーチ・ボーイズのアルバムで公
表されてきた《キャビン・エッセンス》や《サーフズ・アップ》だけでも凄かったが、さ
らに凄いことになっている。『ブライアン・ウィルソン・プレゼンツ・スマイル』では、
これまでちりじりに公表されてきたビーチ・ボーイズの『スマイル』の各曲が、各セクシ
ョン毎にメドレーで演奏される。1曲目の《アワ・プレイヤー/ジー》から6曲目の《キ
ャビン・エッセンス》まで(1つめのセクション)、7曲目の《ワンダフル》から10曲目
の《サーフズ・アップ》まで(2つめのセクション)、11曲目の《アイム・イン・グレイ
ト・シェイプ/アイ・ワナ・ビー・ラウンド/ワークショップ》から17曲目の《グッド・
ヴァイブレーション》まで(3つめのセクション)の3つのセクションは、曲間が切れ目
無く(クロス・フェード処理されて)演奏されている。これにまずビックリする。それで
いて、トータル・タイムは47分ちょっと。息つく間もない展開とはこのことだ。ブライア
ンが創った音楽は、もともとレコードの枠をはみだしていたのだ。このアルバムは、CD
というメディアを活かした良いアルバムの制作事例にもなるのではないか。
『ブライアン・ウィルソン・プレゼンツ・スマイル』は、実質的には3つの組曲からなっ
ていると考えることもできる。これらのそれぞれのセクションは、曲が相互に関係するこ
とによって、曲単体で存在していたときよりも壮大なイメージを醸し出しているのだ。さ
らにセクションどうしも、《ヒーローズ・アンド・ヴィランズ》や《アワ・プレイヤー》
や《サーフズ・アップ》のメロディによって関連づいている。そのような意味では、アル
バム全体で、1つの組曲といってしまっても良いかもしれない。音楽そのものは37年前に
ブライアンが創ったものが殆どをしめているはずだが、そのような古めかしさはこれっぽ
っちも感じさせない。やはりブライアンは、進みすぎていたのだと思う。37年前の『スマ
イル』の音源は、当時のブライアンの周囲にいたヒップな人間にさえ”進みすぎている”
と感じさせたと言われている。ビートルズを抜いて人気投票で1位となっていたイギリス
から帰国したばかりのビーチ・ボーイズのメンバーが、”ビーチ・ボーイズをぶち壊す気
か”と考えても無理は無い。ハード・ロック・バンドとオーケストラが共演しても違和感
がなくなった現代ならば、ブライアンの創ったポップもロックもシンフォニーも超えた音
楽のことを、ビーチ・ボーイズのメンバーも多少は理解できたかも知れない。デビュー曲
の《サーフィン》始って、24歳でこんなに物凄い世界に到達していたなんて。ブライアン
の才能には、あらためて驚くばかりである。ブライアンは、過去の『スマイル』では、い
いところまでいっていたんだ。恐らくあと少しだったんだ。周囲の信頼を得られず、一人
で孤独に闘っていたんだ。そのような状況が、ドラッグへの沈澱をより深刻にしたのだろ
う。『スマイル』の音楽は、ビーチ・ボーイズを超えていた。ブライアンのソロ・プロジ
ェクトにすべきような音楽だったにも関わらず、あくまでも”ビーチ・ボーイズの音楽”
として創ろうとした(ブライアン本人もその方針を変える意志は持っていなかった)とこ
ろに過去の『スマイル』挫折の悲劇があったのだと思う。

さて肝腎の『ブライアン・ウィルソン・プレゼンツ・スマイル』の音楽であるが、こんな
に凄い音楽は久しぶりに聴いた。ほとんどがブートレッグなどで聴いている曲であり、37
年前にブライアンが創ったはずの音楽なのだが、なぜか全く新しい。そして、すみからす
みまで”ブライアン・ウィルソン”を感じさせる。過去のブライアンのソロ・アルバム『
イマジネーション』でのビーチ・ボーイズ・ナンバー再演にあった違和感が全くない。こ
れはひとえに、復帰以来ブライアンを支えてきたツァー・バンドとの信頼感と技術力によ
るものだろう。演奏、コーラス、そしてエンジニアリングにいたるまで見事な出来映えで
ある。それでいて、単なる再演に留まっていないこの新しさは何なのだろう。音楽に魔法
がかけられているとしか思えない。完成体になったことで、音楽のレベルが何段階もあが
った感じだ。特に2つめのセクション(《ワンダフル》から《サーフズ・アップ》まで)
は圧倒的である。不要なボーナス・トラックの入った日本盤より、買うなら価格も安いU
S盤だ。もう未完成の断片が入ったブートレッグはいらない。こんな凄い音楽なら何回で
も聴くよ。本当に凄いよ!、ブライアン。

『 Brian Wilson Presents Smile 』 ( BRIAN WILSON )
cover

1.Our Prayer / Gee, 2.Heroes and Villains, 3.Roll Plymouth Rock,
4.Barnyard, 5.Old Master Painter / You Are My Sunshine, 6.Cabin Essence,
7.Wonderful, 8.Song For Children, 9.Child Is Father of the Man, 10.Surf's Up,
11.I'm In Great Shape / I Wanna Be Around / Workshop, 12.Vega-Tables,
13.On a Holiday, 14.Wind Chimes, 15.Mrs. O'Leary's Cow, 16.In Blue Hawaii
17.Good Vibrations

BRIAN WILSON(vo,key,arr)
JEFFREY FOSKETT(vo,g,hammer), DARIAN SAHANAJA(vo,key,mallets,drill,secretary),
PROBYN GREGORY(vo,g,brass,tannerin,whistles), NICK WALSKO(vo,g,eye-patch,carrets),
NELSON BRAGG(vo,per,whistles,celery), JIM HINES(ds,mallets,saw,sound fx),
BOB LIZIK(b,beret), PAUL MERTENS(woodwinds,sax,hermonica,semi-conducter),
SCOTT BENNETT(vo,key,mallets,g), TAYLOR MILLS(vo,power-drill,leg-slap),
STOCKHOLM STRINGS 'N' HORNS
Bjorn Samulsson(tb), Staffan Findin(b-tb), Vikter Sand(sax,fl,cl), 
Erik Holm(viola), Malin-My-Nilsson(violin), Andreas Forsman(violin),
Anna Landberg(cello), Markus Sandlund(cello)
DAVE STONE (acoustic bass)
VAN DYKE PARKS(words)

Producer:Brian Wilson
Mix Produced by Brian Wilson & Darian Sahanaja
Label:NONESUCH
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