皆さんは、昨日(2004年3月6日)の新聞の1面を飾った女子十二楽坊の全面広告を 見ましたでしょうか。僕はこれを見て、すぐにCDを買いに走ってしましました。 というのは嘘で、本当はだいぶ前から彼女達の次のアルバムを買ってみようと決めていま した。このニュー・アルバムのタイトル曲となっている《輝煌》という曲のメロディが、 心にひっかかっていたからです。”ただものじゃねーな、女子十二楽坊”というように感 じていました。そう思ってから彼女達のTV出演を、気をつけてみるようになりました。 ”すげーぜ、女子十二楽坊”。これがTV出演を観た感想です。何に凄いと思ったかとい うと、まずは演奏能力です。並の楽器の演奏能力ではない。CDを聴いてもっと驚きまし たが、その演奏能力の高さはクラシックの演奏家を連想させます。いや、実際に古典楽器 を演奏する彼女達の資質というものは、クラシックの演奏家のそれと同じと言って良いの でしょう。実際に楽器を演奏する人であれば、彼女達がどんなに難しい曲を弾いているの かがわかると思います。彼女達の演奏するオリジナル曲は、本当に技術的に難しい。しか もそれを音域などは狭い中国の古典楽器を使って、事もなげに笑顔でやっているのです。 次に驚いたのが、彼女達の音楽の中におけるその古典楽器の使い方です。竹笛はフルート のように、二胡はヴァイオリンのように、琵琶に至ってはギターのようにジャガジャガ弾 かれる場面もあります。琴と琵琶は、パーカッションとしても使用しています。古典的な 演奏方法に拘っていないのです。二胡など、立ちながらニコニコして演奏しています。竹 笛の音は、シンセサイザーでも表現できないような表情豊かな音色です。そしてそれらの 日本人にとって身近ではない中国の古典楽器で演奏されるのは、ロック調のサウンドを基 調としたオリジナル曲なのです。これに、感心してしまうのです。 彼女達は日本のマーケットに入り込むための戦略として、誰でも知っている日本の曲をア ルバムで演奏しています。だけど僕の興味は、だんぜんオリジナル曲です。最新アルバム のタイトル・トラックの《輝煌》のリズムなど、まるでエマーソン、レイク&パーマーの 《タルカス》ではないですか。それは彼女達のアルバムにクレジットされているような、 いわゆるヒーリング・ミュージックをイメージさせるものではありません。今度のアルバ ムの”元気を出して。それは、あなたの中にある”というキャッチ・コピーのとおり、エ ネルギーを注入されるような音楽です。キーとなっている人物はプロデューサーの王暁京 と、殆どのオリジナル曲を作・編曲している梁剣峰という2名のようです。この2人は、 あきらかに新しい音楽を創造している。日本オリジナル・アルバムでは日本の楽曲のカヴ ァーのため、それが見えにくくなっています。でも女子十二楽坊にしてみれば、それらの 日本の楽曲を演奏することは自分達の演奏の可能性を拡張することであり一石二鳥のよう です。彼女達の音楽が綿密な販売戦略の元に届けられていることは明らかですが、いくら 最新のマーケティングでアルバムの販売戦略を立てても、音楽そのものが人々の心に届か なければどうにもなりません。彼女達の音楽には確実に驚きがあります。そしていつのま にか、その繊細な音色と雄大なメロディに魅せられてしまうのです。良質のオリジナル音 楽を提供するプロダクション・チームをバックにした女子十二楽坊の快進撃は、ヴィジュ アル面でのインパクトもあるのでまだまだ続くでしょう。今年6月には、アメリカへの進 出も計画されているそうです。 さて、TVで見慣れない楽器を涼しげな笑顔で演奏する彼女達を観ていて、”この感じ、 どこかで感じたことがあるなぁ”と思いました。考えてみたら、YMO(イエロー・マジ ック・オーケストラ)を最初に映像で観たときに感じた印象と非常に似ているなと気がつ いたのです。無機質ではないのだけど、淡々と凄いテクニックで演奏されるメロディから 、そのように思ったのかもしれません。プロデューサーの王暁京が古典楽器と現代のポッ プスの融合を考えたのは、二胡の演奏者と共演する坂本龍一の演奏を観たのがきっかけだ ったと言います。YMOのように日本を席巻し、全世界へ飛び出していく日も近いのかも しれません。このての音楽を褒めるのは少しばかりの勇気が必要ですが、頑張れ女子十二 楽坊と素直な気持ちで言いたいと思います。