●書評番外編:ニューポートジャズフェスティバルはこうして始った

半年くらい前から、インターネット上にあるオンライン書店BK1というところに書評を
書いている。書いているといっても、別に頼まれて書いているわけではない。オンライン
書店BK1では、誰でも書評を投稿できるようになっている。今週のお薦め書評に選ばれ
れば、3000ポイントがもらえる。このポイントは、BK1の中では現金と同じように使え
るのだ。つまりお薦め書評に選ばれれば、3000円分のポイントがもらえるのである。僕は
一度このポイントを貰ったので、味をしめてしまった。ここ2ヶ月くらいは、読んだ本に
ついて必ず書評を書くように心掛けている。以下の書評もそのような経緯で書いたものだ
が、肝腎の本自体が既に取り扱いされていないようで、書評を投稿することができなかっ
た。音楽に関するとても良い本なので、書評番外編としてこちらで紹介したいと思う。


◆書評:「ニューポート・ジャズ・フェスティバルはこうして始まった」

 まず、本書の表紙の美しいご婦人の写真に注目いただきたい。
  次に本書のタイトルの、「ニューポート・ジャズ・フェスティバルはこうして
  始まった1953−1960年の記録と、ジャズレディ、イレーン・ロリラー
  ドの横顔」に注目する。ニューポート・ジャズ・フェスティバルとは、ジャズ
  に興味をもったことのある人は一度くらいは耳にしたことのあると思われるジ
  ャズ祭の名前である。デューク・エリントン、ディジー・ガレスビー、マイル
 ス・デイヴィスといったミュージシャンによる歴史的な実況録音盤も数多く残
  されている、アメリカの有名なジャズ・フェスティバルだ。1958年の同フェス
  ティバルは、映画の「真夏の夜のジャズ」として、ジャズ・ファンのみならず
  映画ファンの間でも有名である。このフェスティバルと表紙の優雅なご婦人が
  、どのような関係があるのか。本書はその歴史の陰で忘れられてしまった真相
  に迫る、優れたルポタージュである。
  このフェスティバルの創設者はジョージ・ウィーンという人物であるというの
  が、これまでのジャズの世界での定説だ。しかし本書はその定説の陰に埋もれ
  てしまった真実に焦点をあて、真の創設者である本書の主人公イレーン・ロリ
  ラード(本書表紙写真の美しいご婦人)に歴史的な光を当てている。詳細は本
  書をお読みいただきたいが、ジャズに関心のある読者であれば興味深い事実ば
  かりであろう。さらに驚いたのは、本書が翻訳ものではなく、日本人の著者の
  忍耐強い取材によって書かれている点である。巻末の解説にも書かれているが
  、英訳されて海外でも広く読まれるべきであろう。ジャズおよび「真夏の夜の
  ジャズ」に興味のある方は、探してでも読むべし。本書を読めば、なぜ「真夏
  の夜のジャズ」があのように優雅な雰囲気に満ちていたのか、たちどころに理
  解できるはずだ。巻末の詳細なプログラムも嬉しい、文句なしの一冊である。

<書評おわり>


以上が書評であるが、この本では本当に数多くのニューポート・ジャズ・フェスティバル
に関する興味深い事実が数多く明らかにされている。なぜ真夏の夜のジャズに、マイルス
・ディヴィスが写っていないのか、僕はこの本を読んで初めて知った。でもこの本に関し
て一番感心してしまうのが、貴族文化とジャズという自国と異なる文化に対して、日本人
の著者がこのような優れたルポタージュを書いたということである。絶版になっているの
ならば、ぜひ再販してもらいたい一冊だ。