●ジャズの街・吉祥寺

皆さん、お元気ですか。いよいよ2003年、新しい年となりました。
日本経済も相変わらず厳しいようですが、せめて好きな音楽だけでもゆったりと聴きたい
ものですね。

さて年末のことですが、久しぶりに東京都下の吉祥寺という街にふらりと出かけました。
吉祥寺という街は、いちばん賑やかな所が駅周辺の500m四方くらいの小さな街です。最近
は住宅街だった西側のほうにも、お洒落な喫茶店やショップが広がっていっています。駅
の南側には、よくTVドラマの舞台になった緑豊かな井の頭公園が広がっています。吉祥
寺という街は、そのような武蔵野の面影を残した、私の好きな街の一つです。そしてまた
、”ジャズ”の街としても結構有名なんですね。まず吉祥寺には、ディスク・ユニオンと
いうCD・レコード店の、”ジャズ・オーディオ館”というものがあります。このお店の
1階は普通のオーディオ専門店という感じなのですが、2階に上がると異空間が眼前に広
がります。フロア全体を埋め尽しているレコード(CDではありません)に群がる人、人
、人。そこにいる人達が皆あの懐かしい手つきと音を立てながら、ガサガサ、タンタンタ
ンとレコードを漁っています。CDもあるのですが、それらを壁に追いやって、この空間
ではいまだにレコードが大きな顔をしているのです。レコードを漁っている人の中には、
珍しいことに若い女性もいました。こういう所にいる女性というのは、本当に”掃き溜め
に鶴”という感じが・・・。おっと、少し話がそれました。私もご多分にもれずに、久し
ぶりにレコード漁りを楽しんでみます。1枚が”ウン万円”もする、貴重盤(らしきもの
?)もあります。そういう方面は興味が無いので、大好きなギタリストのグラント・グリ
ーンという人のレコードを1枚購入しました。グラント・グリーンがブルーノートという
レーベルを離れた時期に録音した、滅多にお目に掛かれないレコードがあったのです。価
格も2千円くらいでお買い得だったので、購入することにしました。しかしガサガサ漁っ
ているときには感じませんが、購入するとドッと疲れがきます。ずーっと立ってCDやレ
コードを物色していたせいか、喉も渇いてきました。そこで久しぶりに、ジャズ喫茶に行
ってみることにしました。吉祥寺には、一頃に比べると少なくなりましたが、今でもいく
つかのジャズ喫茶が現役で頑張っているのです。

ジャズ喫茶という所に行ったことがない人の為に、どのような所なのか少し説明しましょ
う。ジャズ喫茶というのは、単にジャズが流れている喫茶店というわけではありません。
だいたいの雰囲気は、次のような感じです。重たい入り口の扉を開けると、たいていは薄
暗い空間が眼に飛び込んできます。煙草とコーヒーが入り交じった独特の空気が、あなた
の鼻を襲います。同時に、家で聴くステレオとは比べ物にならない物凄い音量の音楽(ジ
ャズ)が、あなたの耳を襲います。店に入ると同時に、店員や他の客からちらりと見られ
ます(昔は、”ジロリ”というところもありました)。カウンターがある所だと、昼間か
ら常連さんが座ってウィスキーなどをちびちびやっていたりします。ここで怯んではいけ
ません!。おもむろに、空いている席に座ります。この辺であなたは、あなたの自宅のス
テレオとは比較にならない店内の大きなスピーカーに気がつきます。座ってしまった席が
、片側のスピーカーのすぐ近くとかだったら、席を変えたほうが無難です。なぜならステ
レオの片方のチャンネルの音だけ、大音量で聞く羽目になってしまうからです。たいてい
は、マクドナルドのカウンターには絶対にいないようなタイプの人が、オーダーを聞きに
きます(一般的なイメージですよ)。ここで「メニューは?」などと聞いてしまうと、ま
た他の客からジロッと見られてしまいます。とりあえず、オーダーを聞かれる前に「コー
ヒー」と一言いってしまうのが無難です。ちなみに私は、昔よく通っていた高田馬場の「
イントロ」というジャズ喫茶では、開店とほぼ同時の午前中から入店することが多かった
ので「トマトジュース」をよく頼んでいました。オーダーが終わったら、後はひたすらで
かい音量でジャズを全身で浴びるだけです。そんな昔ながらの雰囲気を残したジャズ喫茶
の一つ、「MEG(メグ)」に行ってみました。吉祥寺では古くからある、有名なジャズ
喫茶です。ここのマスターはジャズだけではなく、オーディオ方面の面白い本も何冊も出
しているジャズ業界(そんなものがあれば)では有名な寺島靖国さんという人です。そん
な事もあって、音のほうもかなり期待して行ってみたのです。音の印象はというと、CD
だと少し高音域が前に出るような感じ、アナログ盤(LPレコード)だとナチュラルでち
ょうど良い感じを受けました。だけど本当の生の楽器の音とは、やはり違います。各楽器
の音は、”アンプで増幅させた生音”というような印象を受けました。高音が強調されて
いて、私の好みの音とは少し異なりました(といっても、オーディオにうるさいわけでは
ないのですが・・・)。そのせいか大音量で聴いていると、やはり耳が疲れてきます。と
はいえ、やはり久しぶりに味わったジャズ喫茶特有の空間というものは良いものです。そ
こだけ、時間の流れが、世間よりも幾分かはゆっくりと流れている感じです。そんな事を
考えながら、暗くなった吉祥寺の街を後にしたのでした。

では、また。