●ジョニ&ジャコ

いつのまにか朝晩は涼しくなり、秋がすぐそこまできていそうな今日この頃ですが、皆さ
んいかがお過ごしですか。まったく今年の夏はものすごく暑い日が続いたと思ったら、妙
に涼しい日があったりで、なんか変な天気だったなーという気がします。なんだか本当に
、あっという間に秋になってしまいそうです。その秋という季節が近づいてくると、毎年
一回はアルバムを取り出して聴いてしまうシンガーがいます。ジョニ・ミッチェルという
女性シンガーです。

一般的にはジュディ・コリンズという人が歌った《青春の光と影》の作者として有名なの
でしょうか。ロック好きの人には、CSN&Yが歌って同名の映画でも一番最後のタイト
ルバックに流れた《ウッドストック》という曲のの作者というほうがとおりがいいのかも
しれませんね。私は、「いちご白書」という映画の主題歌の《サークル・ゲーム》という
曲の作者として、初めて知りました(この曲が、また青春の光と影を鮮やかに切り取った
ような名曲!)。このジョニ・ミッチェルという人はワン・アンド・オンリーの音楽を作
る人で、その音楽は知性と品格に溢れています。なんというか、どこまでもアーティステ
ィックなのです。芸術家(アーティスト)という言葉がぴったりくる人だと思います。
1975年から1980年くらいの作品がベストだと思っているのですが、アルバムのひ
とつひとつが、絵画をみせられているような気分になってくるから不思議です。そしてこ
の時期の作品は、ベーシストのジャコ・パストリアスとのコラボレーションという点から
も忘れ難い良い作品が多いのです。

私はいま『ミンガス』というアルバムを聴いています。このアルバムは、ジョニ(主役)
、ジャコ(相手役)、ハービー・ハンコック他の演奏者(その他の脇役)といった趣きの
音楽なのです。ジャコ・パストリアスという人は天才肌の人で、ジョニのアルバム群はジ
ャコの絶頂期を記録していると思います。凄まじく正確なタイム感覚のウォーキング、他
に類をみないようなオープン・ハーモニクスを駆使した奏法など、ジョニのアルバムでは
ジャコ絶頂期のプレイをわかりやすい形で聴くことができます。ちなみにオープン・ハー
モニクスというのはどーいうのかというと、例えばベースの4弦4フレット、3弦3フレ
ット、2弦5フレットの倍音のみでE7のハーモニーを出すというようなものです。この
ハーモニクスがジョニの音楽にピタリとはまって、独特な音楽世界を聴かせてくれます。

ちなみにジャコはその後ワード・オブ・マウスという素晴らしいバンドを率いて一世を風
靡しますが、精神的に破綻→浮浪者→麻薬中毒→暴漢に殴られ死亡というなんとも言い難
い生涯を送ることになります。ジャコが亡くなって以降、ジャコ以上に革新的なかたちで
エレクトリック・ベースを弾いた人はでてきていません。どうしてこんなことを書いたか
というと、私がバンドで担当した初めての楽器がベースだったのと、ベーシストとして唯
一圧倒的な音楽的ショックだったのがジャコのベースだったからなのです。ジョニがジャ
コと作ったアルバム群を聴くたびに、その独創的で素晴らしい音楽に圧倒されつつ、ジャ
コのことをあれこれと考えてしまうのでした。