恐い話1−ドッペルゲンガー

シンはどちらかというと、非科学的なものは信用せず、科学的根拠が無いと納得できない方だ。
ただ、非科学的なものは嫌いではなく、希望的には幽霊なんかいたら面白いなぁとか
UFOの話が本当だったら見てみたいなぁとか、超能力も科学的に証明されれば楽しいのにぃ
などと思っている。まぁ、曖昧でいい加減だな。正直、どうでも良い(笑)。

ただ、そんなシンでも鳥肌が立った恐ろしい(?)経験をしたことがある。
第三者から見れば、恐ろしくないかもしれないが、本人はマジでビビった。

これを読んでいるみなさんは、「ドッペルゲンガー」というのをご存知だろうか?
「ドッペルケンガー」とも言うが、読み的には「ドッペルゲンガー」が正しいらしい。
生霊とか、分身だとか、いろいろ言われているが、要は自分以外の、もう一人の自分という奴だ。
よく「世の中には自分に似た人が3・4人いる」と言われているが、それも同じようなものだろう。

シンはこの「ドッペルゲンガー」を見たことがある。
幽霊とか、UFOを見たというより、かなり嘘っぽいと思う人もいるだろうが
これから書くのは、嘘でも、クスリをやって幻覚を見たわけでもない、
まぎれもない事実だ。順を追って書いてみよう。


シンが高校2年のとき、映画「ハスラー2」の影響でビリヤードが大流行していた。
シンも当然ビリヤードにはまった。毎晩、バイトの帰りにバイトの先輩や友人たちと行ってたし
学校の友人たちとも、「他に遊ぶものはないんかい」ってぐらい遊んだ。
まぁ、腕前は全然大したことないんだけどね(^^;。

そんなある日、学校に行ったら数人の友人たちに、同じような内容で声をかけられた。
その中のある一人との会話。

友人:「シン、おまえ昨日の夜中にテレビでやってたビリヤードの勝ち抜き戦に出てるだろ。
名前も違うし、一緒に来ている彼女もシンの彼女とは違うけど、あれ、おまえだろ?」
いきなり身に覚えのない話をされて、初めは、何のことを言っているのかさっぱり解らなかった。
さらに友人は続ける。
友人:「別の彼女がいるから、名前を替えてるんだろ? 黙っててやるから教えろよ」
シン:「何の話だか、よくわかんないけど、要は俺がテレビに出てるって言ってんの?」
友人:「とぼけんなよ。誰がなんと言ったって、あれは絶対におまえだよ。
しかも、来週勝ったら5週勝ち抜きで、賞金がもらえるじゃん。そしたら、おごってくれよぅ。」
シン:「いや、マジで知らないって。それに勝ち抜き戦でずっと勝ってんだろ?
俺がそんなに上手いわけないじゃん。おまえもそのぐらい知ってんだろ?」
友人:「いや、最近一緒に行ってないから、上手くなったなぁと思ってたんだけど・・・。
でもマジでおまえじゃないの?」
隠し事が苦手なシンが、あまりに真面目に否定するので友人も納得したらしい。
シン:「いや、マジで俺じゃないって。そんなに俺に似てんの?」
友人:「そっか〜、おまえじゃないのか。でもスッゲーマジに似てたよ。
来週は勝ち抜き最終戦で出てくるはずだから、おまえも見てみろよ。」
シン:「へえ〜、そんなに俺に似てるのか。じゃあ、見てみるよ。」

この時は、そんなに気にはならなかった。
よく「友達にシンに似てる奴がいるんだよ」とか言われるので、まぁその程度だろうと思った。



1週間後、そのビリヤード番組のある日。
その日はバイトで、いつも通り、夜通しで遊ぶ事になるだろうと思って
その番組をビデオで予約しておいた。

案の定、その番組を放送している時間に帰ることはできなかったが
午前2時過ぎ、家に帰ってきて、早速ビデオを見ることにした。
巻き戻しが終了し、早速再生してみる。

ところが、録画されているはずの番組が写っていない。
新聞の番組欄を確認すると、どうやら野球が延びていたらしい。
『しまった。野球のことなんか考えてなかったなぁ。
9時24分まで延長だったら、30分番組だから撮れてないなぁ。』
と、諦めつつも15分ほど進めてみて、もう一度再生。
すると、ノイズが入っていて映像がちゃんと映っていないのだ。
音声はそれなりにクリアに聞こえているのだが
、映像はひどいノイズが入っていて、人の顔がハッキリ解らない。
瞬間的に映像がクリアになる時もあるが、ほとんどはノイズが入っている。
『おかしいなぁ。』と思い、5分程巻き戻してみる。
5分前はちゃんと写っていた。さらに見ていると2分程経ったところで、ノイズが入り始める。
わずかに確認できる映像と、ちゃんと聞こえる音声で、野球は15分だけ延長になったようだ。

そのまま見ていると、ビリヤードの番組が始まった。
結果として15分しか撮れていないが。
あいかわらず映像はノイズだらけである。
勝ち抜き続けている奴が紹介されている。
『あぁ、こいつが俺に似ている奴かぁ。よく見えないからわかんないけど
なんとなく、似てるような気もするなぁ。』
となりには、彼女らしき人も立っている。もちろん、名前は全然違う。
今日の挑戦者も、紹介されたりしていた。

司会者が、「いよいよ今日が5週勝ち抜き戦の最終日ですね。どうですか、心境は?」
と、俺に似ているという奴にインタビューを始めた。
その時である。
ノイズが一瞬おさまり、ホンの10秒ほど画面が綺麗になったのだ。
そこに写ったものを見て、シンは自分の目を疑った・・・。

その司会者のフリに、答えている自分がいるのだ。
だれが、どう見たって自分だ。友人が間違えるのも無理はない。
自分自身が見たって、違いが解らないのだから。
声・しぐさ・笑い方、すべてが同じである。
気持ち悪い。とにかく気持ち悪いという感覚がこみ上げてくる。
洋服のセンスまで、同じである。
司会者に対する受け答えも、自分が同じ立場だったら、同じ答え方をするだろう。
そうなると、性格的なものまで、同じである。
違うと言えば、髪型が少し違うぐらい。
あと、彼女はシンの彼女より、数倍可愛い(^^;。もちろん、シンのタイプだ。
その部分を何度も繰り返して見てみる。
そのうち、もっと恐ろしい部分を見つけることができた。
肌が露出している部分(腕とか顔)にあるホクロのある場所まで同じなのだ。
あわてて、鏡を持ち出して、そのビデオと比べてみる。
左右逆に見えるものの、ホクロの位置は寸分違わぬものに見える。
間違いない。正真正銘のシン自身だ・・・。



その後、彼が優勝したのか、負けたのかは、ビデオには録画できなかったので
友人に聞いたが、どうなったかは、もう憶えていない。
その録画したビデオもどうしたか、まったく憶えていない。
彼は本当に「ドッペルゲンガー」なのか?
それとも、ただの他人の空似なのか。
今となっては、知るすべもないのだが。



どうでしたか? えっ?恐くない? 嘘だろ? そう思うかもしれないね。
ただ、書いている本人は、彼を見た瞬間、鳥肌立ちマクリ状態。
今でも幻を見たのかと思うし、友人があまりにしつこく言うので
そんな気がしただけかもしれないし。
でも、いたって真面目な話なんだけど、信じられないよね。
シンも他人にこんな話しを聞いたら、多分信じないし(笑)。


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