血液浄化マニュアル1

 

参考

(1)透析医療における標準的な透析操作と 院内感染予防に関するマニュアル
http://www1.mhlw.go.jp/topics/touseki/tp0225-1_11.html

(2)Recommendations for Preventing Transmission of Infections Among Chronic Hemodialysis Patients
http://www.cdc.gov/mmwr/PDF/rr/rr5005.pdf   (PDFファイル)

 

1. 溶血・漏血・出血
不慮に針が抜けてしまった場合
   直ちにポンプを停止して針穴の消毒・止血を行い、同時に患者のvitalチェックと出血量の確認を行い医師へ報告をする。  vital、出血の程度によって、緊急処置・透析の再開・輸血を検討する。
回路の接続不良により出血を認めた場合 直ちにポンプを停止して、同時に患者のvitalチェックと出血量の確認を行い、出血部位の確認・原因を調べ直ちに医師へ報告をする。  vital、出血の程度によって、緊急処置・透析の再開・輸血・抗生剤投与を検討する。  回路内圧上昇による接続部からの漏血の場合は回路に歪み・捻れ・破裂がないか確認のうえ透析を再開。回路内圧上昇による回路破裂の場合は回路の全取替えを行い、介助者が血液を浴びた場合はすぐに水洗、患者が感染症を持っていた場合は感染対策マニュアルにのっとって対処する。 漏血センサーの警報がなった場合 漏血センサーで感知され警報が鳴ったら、直ちに透析液の供給を停止、血液ポンプを停止する。 静脈ラインをクランプし溶血した血液の体内への流入を避ける。透析液を採取し溶血の有無をヒトヘマステープにて確認する。 {図参照} ・ヒトヘマステープにて反応がない場合 透析を再開する。 ・
少量の血液リークの場合  
短時間にダイアライザーを交換し透析を再開する。最後に抗生剤の投与を検討する。事故を起こしたダイアライザーは原因検索のため保存する。
大量のリーク、または溶血の場合
患者側の静脈ラインは確保し生理食塩水の輸液をゆっくり行う。出血量は出きる範囲でカウントしておく。 短時間に新しい機械、透析液、ダイアライザー、回路に変更して透析を再開する。
溶血が 高度の場合にはヘモグロビン(MW68,000)の除去目的でcut-off pointの大きい蛋白漏出型の透析膜の使用、あるいは血液濾過透析に変更することが望ましい。抗凝固剤はフサンとする。 血液・透析液を採取して遠心分離し(3000rpm, 10min)溶血の有無、程度を確認する。緊急検査として浸透圧・Na・K・Htの測定を行う。 事故を起こしたダイアライザーは原因検索のため保存する。 溶血に伴う症状:頭痛、悪心、嘔吐、筋痙攣、意識障害、血液低下性ショック、背部痛、腹痛、胸痛が認められた場合には速やかに対処する。 透析再開後は必要に応じて酸素吸入や輸血を行う。Htの低下が4-5%あればMAP 1-2単位を目安にする。また、ショックの場合は昇圧剤、強心薬の投与を開始する。感染症を合併することがあり、抗生剤の投与も検討する。溶血の程度がひどい時は水溶性ハイドロコートン200−500mg点滴静注、ハプトグロビン注を一回4000U(200ml)点滴静注する。溶血の程度によっては血漿交換も検討する。検査結果をふまえた総合的判断は必要であるが経過観察目的で1-2日の入院も必要となることがある。  透析終了時には採血を行い遠心分離し再度血清の色を確認する。また、必要に応じて心電図、胸部レントゲン検査を行う。また膵炎を合併することがあり自覚症状が無くても腹部超音波検査や腹部CT検査も検討する。貧血、心虚血性変化、脳血管障害、低ナトリウム血症、肝障害に関しても評価をし、必要な治療を行う。 透析終了後24時間経過しても溶血を認める場合は透析に因らない別の原因を検索する。(薬剤性、抗原抗体反応、原疾患の影響など)

2. シャントトラブル
#シャント肢の感染 シャント肢に外傷や感染の兆候を認めた場合にはその程度・範囲を見極めて的確な処置が必要である。 化膿性の場合は排膿・培養による起因菌の同定 抗生剤の投与(静脈内投与・局所塗布・内服等) 明らかにシャント血流に波及している場合はsepsisを引き起こす可能性があるため、全身状態をチェックし場合によっては入院も必要である。
#シャント肢の血管炎 血管炎を起こしている場所には穿刺をして透析をすることは回避したい。
#シャント狭窄・閉塞 発見した時と場合によって臨機応変な対応が必要 例えば:  透析開始直前にシャントが狭窄・閉塞しており透析に十分な脱血ができない時。  透析終了時にシャント音の減弱を認めた時。  起床時やふと気付いたらシャントのスリルが無くなっていたと患者からの連絡。  シャント造設術後にシャント音の減弱を認めた場合。     
#シャント破裂  緊急処置が必要。まずは圧迫止血をし、腎外科担当医に連絡。

3. 不慮の針刺し
 日頃から針の取り扱いには十分注意し、リキャップはしない。 透析中の注射薬の注入にはなるべく薬液注入ラインを使用し、短針を使用するときには針を刺す時・抜く時ともに細心の注意を払う。万が一誤って針が刺さってしまった場合、患者の感染症の有無を確認し、感染症マニュアルにのっとって対処する。

4. 断水
透析液の供給が出来なくなったら、透析機械を限外濾過設定とし、断水の原因を調べる。 患者に透析が不能であるが除水は可能であることを伝え、不安にさせないようにする。 供給システムの故障の際には技師側のマニュアルにのっとって早急に復旧をはかる。 水道管、配管上の異常の場合はすぐに用度課に連絡し回復の見込みを確認。  回復したら、透析の不能であった時間に応じて透析時間の延長を検討する。  回復に時間がかかる場合は患者にその旨を伝え、今後の治療方針を検討する。

5. 火災
 外来維持透析患者には防災訓練を行い、災害時の離脱セットの使い方を説明しておく。 保安課に連絡し、なるべく早く出火場所、程度などの情報を収集し、スタッフに連絡。透析中の患者には不必要に不安を増大させないように努める。 非難が必要と判断した場合には、速やかに患者に離脱セットを使って回路をクランプ(切断)するように指示する。現在常備されている離脱セットには回路を切断する器具が入っていないため、担当者がクーパーを持って回路を切断しにベッドをまわる。 入院患者に関しては当院の離脱セットの場所・離脱方法を知らないことが多いので、知らせる。担送が必要な患者に関してはその時にいるスタッフで手分けして介助する。非難経路を確認したら誘導しなるべく早く非難する。

6. 地震
 地震を感じたら透析中の患者には毛布を頭からかぶるように、伝える。地震が落ち着いたら保安課に連絡し状況を確認する。停電や火災の状況を把握し、適切な判断をし、離脱が必要な場合はそのことを患者に告げる。問題無ければ透析を継続する。 負傷者が発生していれば、その重傷度と人数を確認し、その治療を行う。

7.停電
日頃より、補助発電がある透析機械とそうでないものとが判別できるようにしておく。 停電が確認されたら、当番医が看護婦・技師と連絡をとる。 ポンプが止まってしまったら非常発電に切り替わるまで、患者自身でポンプを手回しできる人には回すように促す。状態の安定していない患者のバイタルをチェックし、人手が足りれば出来るだけポンプを回す。通電が確認されれば回路中の凝血の程度を確認する。通電の見込みがないときは、離脱セットを使用するか圧差を利用した回収をする。

 

 

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