透析液排液モニタの意義

　透析療法の分野では従来より、ダイアライザの種類、膜面積、血流量、治療時間などの治療条件は患者の体格、臨床症状、生化学データなどから経験的に設定されている。また、脱血不良やダイアライザ内での血液凝固、血圧低下による透析条件の変更などのトラブル発生時には、治療効率低下の程度を定量的に判断する事は困難であり、その根拠に乏しいまま時間延長などで対処されていることが多い。このようにさまざまに変動する治療環境に対しても、適正な透析条件を設定するためには、除去対象物質濃度を連続的に測定することが不可欠である。しかし、臨床において頻回に血液を採取し溶質濃度を測定することは、患者への負担ならびに検査コストの増大を招くことになる。 そこで我々はこれらの問題を解決すべく透析液排液に着目し、排液中の尿素窒素濃度を連続的に測定可能なモニタリングシステム（図1）を開発した。これにより治療中の溶質除去動態をリアルタイムに把握する事が可能となり（図2左）体内の尿素分布に1-compartment modelを適用することで（図2右）用いた排液モニタリングシステムの開発を検討したので報告する。血中尿素窒素濃度の推算および週間透析計画などのシミュレーション解析が可能となった。

海老沢秀夫　ebisawa@kc.twmu.ac.jp