腹膜透析(CAPD)

原理
@ 腹膜透析は腹膜が生理的に半透膜の性質を持つことを利用した透析方法である。
A 腹膜の毛細血管と透析液の間に起こる濃度勾配による拡散と浸透圧較差による限外濾過により、血液中の老廃物と水分を除去する。
B 限外濾過に伴う溶質の転送(convection)によっても老廃物の除去が行われる。
注 腹膜透析による物質の移動、および限外濾過による水の移動は次の式で表される。  
〔拡散による物質の移動〕   M=K・A・(CB−CD)    M:物質移動速度(mg/min)    K:単位面積あたりの物質移動係数(ml/min/m2)    A:腹膜の有効面積(m2)    CB:血液中の溶質濃度(mg/ml)    CD:透析液中の溶質濃度(mg/ml)  〔限外濾過に伴う物質の移動〕   M=S・QW・CB    S:ふるい係数    QW:限外濾過流量(ml/min)  〔限外濾過による水の移動〕   QW=TP・A・LP    TP:総膜間圧力差(静水圧較差−膠質浸透圧較差)(mmHg)    LP:腹膜の濾過係数(ml/min/mmHg/m2)

CAPDの長所
@ 在宅中心の治療、通院は月に1〜2回
A 社会復帰が容易
B 緩徐な連続治療
C 不均衡症候群がない
D 心血管系への負担が少ない
E 穿刺痛がない
F 残存腎機能が保たれる(PD first)1)
G 食事のK制限がない

CAPDの短所
@ 腹膜炎の合併
A 被嚢性腹膜硬化症(EPS)
B 腹膜機能低下のため7から10年までしか継続できない
C 自己管理が要求される
D 計画除水ができないため、体液貯留傾向に陥りやすい
E 体の大きな人では透析不足の傾向
F 肥満、高脂血症、糖尿病が増悪しやすい
G 全透析患者の4.3 %2)と患者が少ないこともあり、CAPDのできる医療施設が少ない。

適応除外者
@ 腹部の広範な手術の既往 (虫垂炎、帝王切開程度は問題ない)
A 腹膜炎、イレウスの既往
B 人工肛門
C 多数の大腸憩室
D 治療されていない腹部のヘルニア
E 重篤な呼吸器疾患
F 精神障害

導入前検査
@ 血液生化学検査
A 出血凝固検査
B 胸部・腹部X線検査
C 心電図
D 腹部エコーまたは腹部CT
E 便潜血
F 注腸造影検査 (必要に応じて)
G 婦人科検査 (必要に応じて)

CAPD導入の実際 I. 

従来の導入法 【術前処置】
@ 剃毛は、剣状突起から大腿中央部まで
A 便秘の場合は当日グリセリン浣腸
B 6時間前より絶食
C 手術室入室前に排尿、前投薬(硫酸アトロピン、アタラックスP各アンプル)

【術式】
@ カテーテル側孔の最上部が恥骨上縁にくるように第1カフの位置(腹膜切開予定部)を設定する。
A 切開は、約5 cmの経腹直筋切開とする。
B 腹直筋前鞘を切開し、筋鉤で筋線維を切離せずに離開して後鞘に達する。
C 腹膜に局所麻酔を追加した後小切開をおき、4ヶ所モスキートペアンで把持する。
D 腹膜切開部に3−0合成吸収糸(バイクリル?)でタバコ縫合をかける。
E カテーテルにスタイレットを通し、ダグラス窩に挿入する。
F カテーテル先端から5〜6 cmの部分を150度前後に曲げ、カテーテルを腹腔前壁に沿わせて恥骨部付近まで進め、外転させながら挿入するとスムーズにダグラス窩に留置できる。ダグラス窩に正しく挿入できた場合には肛門周囲をつつかれた感じがすると患者は訴える。
G 注射器にて温生理食塩水を50 ml注入し、自然排液がスムーズであることを確認する。
H 第1カフの下縁でタバコ縫合を締め、さらにカフ下縁と腹膜とを4針結節縫合で固定する。
I 再度注射器にて温生理食塩水を50 ml注入し、自然排液がスムーズであることを確認する。
J 腹直筋前鞘を縫合する。
K トロッカーを用いてカテーテルを皮下に通し、皮膚を穿通してカテーテルを出す。または出口部に7 mm程度の小切開をおき、ケリー鉗子を用いて皮下トンネルを作成して出口部よりカテーテルを引き出す。仙台型など彎曲の強いカテーテルの場合は、屈曲部に切開をおいてカテーテルをいったん創外に出し、再び出口部まで皮下トンネルを通す。
L カテーテル出口は第2カフから3 cm以上の位置とし、出口部は3−0ナイロン糸で1針固定しておく(2週間)。

【コンディショニング】
@ 術直後500 mlの透析液で洗浄のみを行う。
A 翌日より洗浄から貯留に変更してCAPDを開始し、透析液量を250 mlづつ増やして行く。
B 1週間程度で1500 ml貯留、1日4回バック交換のCAPDを目標とする。
C その後は身長、体重、残存腎機能、除水量、血液生化学検査、腹部膨満感などの自覚症状を考慮して透析液量、バック交換回数などを調節する。

II. SMAP(Stepwise initiation using Moncrief And Popovich technique)

※術前処置および術式@からJは従来の方法と同じ

【術式】(図1)
K トロッカーを用いてカテーテルを反転創まで皮下トンネルを通し、いったんカテーテルを創外に出す。
L この時点でカテーテル内にヘパリン原液を充填し、末端を絹糸またはタイバンドで結紮する。内栓を使用して閉塞させる場合もある。
M ケリー鉗子を用いて反転創から最初の傍正中切開創まで皮下トンネルを作成し、カテーテルを再び傍正中切開創付近までもどして皮下に埋没させる。このときカテーテル先端が経腹直筋切開創に近づき過ぎないように、反転創の位置を決める必要がある。
N 4週間以上の埋没期間をおいてカテーテルと組織がしっかり固定してから、透析導入の見込みを考慮して出口を作成する。
O 出口作成予定部よりカフ側に切開をおき、埋没したカテーテルを引き出す。
P トロッカーを用いてカテーテルを切開創から皮下に3 cmほど通し、皮膚を穿通してカテーテルを出す。出口部の1針固定は不要。
Q またはカテーテルを浅く埋没できていれば7 mmほどの小切開をおいて、そこをそのまま出口とすることができる。
R コンディショニングは不要で、早期からfull doseの透析液貯留にてCAPDを開始する。

III. SMAPの利点

@ 皮下で無菌的に創傷治癒し、またカテーテルが動かないため外部カフがしっかりと固定される。
A PD導入後の出口感染やトンネル感染、腹膜炎の合併が少ない。(∵理想的なカテーテル挿入を行っても、傍カテーテル経由に細菌が進入しバイオフィルムを形成する。)
B 4週間以上経過してから導入するため、リークの心配がない。
C 出口部形成直後より2L前後のPD液貯留が可能なため、初めから十分な透析ができる。
D カテーテル挿入時に1〜2泊の入院、出口形成術は外来で可能なため、CAPD導入のための入院期間が大幅に短縮できる。
E 長期間の皮下留置が可能であり、適正な時期に余裕を持ってPDを導入することができる。
F 導入予定日の1ヶ月以上前から計画的に分散してCAPDの教育ができるため、理解が十分にできる。

透析液の種類と選択

@ 透析液の種類:CAPDに用いられる透析液の種類を表に示す。
A ブドウ糖濃度の選択:体重の変動がないように1.5%と2.5%液を組み合わせ、できるだけ1.5%を使用するようなスケジュールにする。腹膜からのブドウ糖糖吸収速度が速いために除水量が少ない症例では、APDを併用して1回あたりの貯留時間を短くする工夫を行う。
B カルシウム(Ca)濃度の選択:二次性副甲状腺機能亢進症に対して活性型ビタミンDやリン吸着剤を多く投与されている症例では高Ca血症に傾きやすく、Ca除去可能な低Ca透析液を用いる。
C 中性透析液:いままでの透析液はブドウ糖の安定化のためpH 4.5〜6.0前後と弱酸性であったが、バッグのtwo-chambered bag system採用により中性化が可能となった。それに伴い透析液中のGDP(glucose degradation products)も低減されている。中性透析液が短期的には生体適合性の面で有利であると報告されており3)、さらに長期間の使用での有用性が期待されている。

腹膜機能検査 I. 

腹膜平衡試験(PET):他項にゆずる II. 

腹膜機能解析専用ソフトウェア
@ PD-Adequest(Baxter社) 総括物質移動・膜面積係数(MTAC)を用いたPyle-Popovichモデルに基づく溶質除去能の計算とThree pore theoryに基づく除水能の計算を行う。PETのデータが利用できる。
A PDC(Gambro社)   Three pore theoryに基づく溶質除去能と除水能を評価し、Area、Absorption、Plasma lossの3大パラメーターを決定する。
B PD-NAVI(ジェイ・エム・エス(株))   溶質除去能と除水能ともにPyle-PopovichモデルとThree pore theoryの両方を用いて計算する。腹膜機能はPET、MTAC、Three pore theoryの3大パラメーターで総合的に判定する。   いずれのソフトウェアも、透析処方のシミュレーション機能を持っている。

腹膜炎
I. 症状と診断

@ 排液の混濁
A 排液中の白血球数 100/μl以上(そのうち多形核好中球 50 %以上)
B 排液中から起炎菌検出(Culture Bottle法)
C 発熱、血液検査にて白血球数・CRPの上昇
D 腹痛、悪心・嘔吐、下痢

II. 細菌の進入経路

@ バック交換時の細菌混入
A トンネル感染からの波及
B 腸内細菌の移行(憩室、便秘、大腸検査後)

III. 治療

@ 来院前の指示
イ) 低張液で2〜3回洗浄
ロ) 最初の混濁した排液バックを持参
ハ) すぐに来院できない場合は、手持ちの抗菌薬を服用
A 腹膜炎時のバック交換
イ) 普段より頻回(1日6回前後)にバック交換を行う。
ロ) 排液混濁が著しい場合には、交換時に洗浄を1回加える。
ハ) 除水ができない場合や治療抵抗性の場合は一時的に血液透析に変更して洗浄のみを行う。
B 経験的初期治療(empiric therapy)
排液バックの培養結果がでるまで第1世代セフェム系薬とアミノグリコシド系薬の併用が基本。尿量が100 〜500 ml/日以上の場合、残存腎機能保護のためにアミノグリコシド系薬の代わりに第3世代セフェム系薬であるセフタジジムを併用する。
Rp) セファゾリンナトリウム(CEZ) 0.5〜1.0 g/日 静注    トブラマイシン(TOB) 初回30 mg/2L bag、維持量8 mg/2L bag 腹腔内投与    または 30 mg/日 点滴静中
C 黄色ブドウ球菌 経験的初期治療として投与していたアミノグリコシド系薬を中止して第1世代セフェム系薬を継続する。3〜4日経過しても十分な臨床効果が得られない場合はリファンピシンを追加投与する。 イ) 第1選択薬 Rp)  セファゾリンナトリウム(CEZ) 0.5〜1.0 g/日 静注 ロ) 効果が不十分な場合に併用 Rp) リファンピシン(RFP) 450 mg/日 経口投与 ハ) 検出菌がMRSAの場合に変更
Rp) 塩酸バンコマイシン(VCM) 初回1.0 g、 以降5〜7日毎に0.5 g 点滴静注
D 緑膿菌   第3世代セフェム系薬であるセフタジジムの投与を継続するとともに、感受性のある薬剤(ピペラシリン、アズトレオナム、アミノグリコシド系薬、ニューキノロン系薬など)を併用する。また、カルバペネム系薬の単独またはカルバペネム系薬とアミノグリコシド系薬との併用投与も有効である。治療の反応が悪い場合にはカテーテルの早期抜去も考慮する。   
Rp) セフタジジム(CAZ) 0.5〜1.0 g/日 静注      ピペラシリンナトリウム(PIPC) 1.0〜3.0 g/12hr 静注   Rp) メロペネム三水和物(MEPM) 0.25〜0.5 g/日 点滴静注
E 真菌 経験的初期治療薬を中止して抗真菌薬を投与する。 抗真菌薬投与開始から4〜7日経過しても臨床的な改善が認められない場合にはカテーテルを抜去する。カテーテル抜去後も、抗真菌薬の投与を7日間継続する。
Rp) フルコナゾール(FLCZ) 200 mgを24〜48 時間毎 静注

カテーテル出口部感染

@ 症状と診断 出口部からの膿性の浸出液、発赤、疼痛、腫脹があり、炎症所見が出口部に限局している場合をいう
A 治療
イ) 浸出液の細菌培養
ロ) 培養結果が判明するまでグラム陽性球菌を想定して抗菌薬を経口投与する。
ハ) 起炎菌がグラム陽性菌の場合は、βラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリン系薬または第1世代セフェム系薬の経口投与
ニ) 起炎菌がグラム陰性菌の場合は、ニューキノロン系薬の経口投与
ホ) 肉芽形成を伴う場合は、肉芽を切除するか硝酸銀棒で焼均する
ヘ) 難治性の場合は外部カフ感染を疑う

トンネル感染

@ 症状と診断 カフ部やトンネルに発赤、疼痛、腫脹を認め、多くの場合出口感染を伴っている
A 治療
イ) 浸出液の細菌培養
ロ) 培養結果が判明するまでグラム陽性球菌を想定して抗菌薬を静脈内投与する。
ハ) 感受性のある抗菌薬の経静脈内投与を行う
ニ) 3〜4週間治療後も改善しない場合には、カテーテル上の皮膚を切開し開放創とし(アンルーフィング)、感染したカフを削り取る(カフシェービング)。感染が治癒したら出口部変更術を行う
ホ) 上記治療後も完治しない場合や起炎菌が緑膿菌やMRSAの場合には、カテーテル入れ替えを行う

注排液不良

I. カテーテル位置異常(移動)

@ 発見と診断
イ) 除水不全の急激な進行
ロ) 肛門付近の刺激がなくなる
ハ) 腹部X線撮影にて診断
A 対策
イ) 便秘を伴う場合には、下剤の投与や浣腸を行う
ロ) 体位変換、階段昇降、縄跳びなどを行ってもらう
ハ) αリプレーサーRを用いたα修復法(図2)

II. カテーテルへの大網(ネッツ)巻絡

@ 発見と診断
イ) カテーテル位置異常と同じ症状で気付く
ロ) 腹部X線では位置異常と鑑別困難
ハ) カテーテル造影で、造影剤(ウログラフィン)がカテーテル周囲にとどまる
A 対策 カテーテル入れ替え術と大網縫縮術

III. フィブリンによるカテーテル閉塞

@ 対策
イ) シリンジにて生理食塩水のフラッシュ(push and suck法)
ロ) ウロキナーゼ(10,000単位/2ml)をカテーテル内に30〜120分貯留する
ハ) クロットリムーバによる除去

被嚢性腹膜硬化症(encapsulating peritoneal sclerosis: EPS)

I. 定義 び慢性に肥厚した腹膜の広範な癒着により、間歇的ないし持続的にイレウス症状を呈する症候群。形態学的には腹膜の肥厚を生じ、病理組織学的所見は硬化性腹膜炎または腹膜硬化症の所見を認める。

II. 診断

@ 臨床症状
イ) イレウス症状
ロ) 低栄養、るいそう
ハ) 下痢、便秘
ニ) 微熱
ホ) 血性排液
ヘ) 限局もしくはび慢性の腹水貯留
ト) 腸管ぜん動音低下
チ) 腹部に塊状物を触知
A 血液生化学検査
イ) 炎症反応弱陽性(抹消血白血球数増加、CRP弱陽性)
ロ) 低アルブミン血症
ハ) エリスロポエチン抵抗性貧血
ニ) 高エンドとキシン血症
B 画像診断
イ) X線検査 腹部単純撮影でニボー像の出現と、腸管ガス像の移動性消失。石灰化象。 消化管造影にて腸管の拡張・狭窄・通過時間の遅延
ロ) 超音波検査 肥厚した腹膜に被われた限局性の腹水や塊状の腸管ならびに網状の析出物を認める。典型例ではKey board徴候をみとめる
ハ) CT検査 腹膜の肥厚、広範な腸管の癒着像が見られる。腹膜に石灰沈着を認めることがある
C 肉眼的(手術、腹腔鏡、剖検など)所見 白濁肥厚した腹膜で被われた、広範に癒着した塊状となった腸管を認める D 腹膜機能検査 大部分の症例で発症前に除水能の低下を示し、腹膜の高透過性(腹膜平衡試験:PETでhigh)を呈することが多い

III. 発症原因

@ 透析液の長期使用:高グルコース濃度、高浸透圧、低pH、透析液の加熱滅菌に際して産生されるブドウ糖分解産物(glucose degradation products:GDP)、lactateなど
A 難治性腹膜炎または頻回の腹膜炎
B その他:消毒液、β遮断薬

IV. 病期分類と治療

病期
治療
発症前期 腹膜硬化症のみで、腸管の癒着もない 洗浄
炎症期 突然の腹腔内炎症所見で発症
CRP、WBC上昇、腹水中のFDP上昇
急速な腹水の増強、血清腹水
腹部CT:腸管壁の浮腫状変化
ステロイド
被嚢期 炎症状態は終焉し、腹膜の癒着
肥厚が進行、イレウス症状出現
腹部CT:腹膜肥厚と被嚢化
中心静脈栄養
イレウス期 炎症所見は消失し、CRPは低下
イレウス進行、腹水減少
腹部CT:拡張した腸管と肥厚した被膜
癒着剥離術

                             

V. EPSの早期診断(pre-EPS)と早期治療   EPSはイレウス症状が出てしまうと予後が非常に悪いため、早期診断・早期治療が重要である。しかし、実際は難治性腹膜炎などと鑑別が困難な症例が多い。
@ EPS発症の兆候と考えられる所見
イ) 腹膜平衡試験(PET)にてカテゴリー"high"が持続する
ロ) 除水不全(2.5 %ブドウ糖透析液を4回/日使用して、除水量が500 ml/日以下)
ハ) 原因不明のCRP陽性が持続する
ニ) しばしば血性排液を呈する
ホ) 多量のフィブリン析出を認める
ヘ) 腹水の貯留が持続する(CAPD中止後の場合)
ト) 画像所見で、腹膜の肥厚や石灰化、腸管癒着を疑わせる所見がある
A 早期診断 EPS発症の兆候を疑わせる所見を認める場合には、積極的に腹腔鏡検査を施行する。以下の条件を満たし、CRPが少しでも変動する場合にはステロイドの適応となる。
イ) 肉眼的所見で索状線維素網の形成や多量のフィブリン塊を認める
ロ) 腹膜組織所見にて、線維性の肥厚、単球主体の細胞浸潤、線維芽細胞核の腫大、血管新生および組織内出血などを認める
ハ) 肉眼的所見からも残留腹水の細菌培養からも感染が否定される
B 早期治療(下記の治療方法の妥当性については検討期間が不十分であり、今後の検討課題である)
イ) プレドニゾロン投与を開始する。初期投与量20〜30 mg/日を4週間程度継続後、約2週間毎に5 mgずつ減量する。プレドニゾロン10 mg/日以下になれば減量速度を遅くし、投与期間は1年程度を目安とする。
ロ) カテーテルはできるだけCAPD中止後少なくとも1年間留置したままとし、低濃度ブドウ糖透析液で洗浄をする。腹腔洗浄の頻度は連日とし、EPSを疑う所見が全てなくなれば週1回でも可能である。

ASP型CAPD患者管理システム

I. 携帯電話を利用したApplication Service Provider (ASP)型CAPD患者管理システムの実際 (図3)   ASPとはインターネットデータセンターでアプリケーションを一括稼動し、インターネットを経由してその機能(ソフト)を配信する仕組みのことを指す。

II. 患者管理システムをASP化することの利点

@ 従来のように病院内でシステムを構築する場合より、初期コスト負担が軽くなる
A 病院はITに精通した人材を確保する必要がない
B インターネット接続環境さえあれば、いつでも、どこでも手軽に利用できる
C 医療者はリアルタイムに除水量や体重などのCAPD情報を把握できる
D 1人の患者情報を複数の医療機関で共有できる
E 患者への医療情報開示がしやすい
F 全国規模の統計が効率的にできる
G 医療の効率化につながる

III. セキュリティー対策

@ IDとパスワードでログインし、USBキーのような所持品によってもアクセスを制御する
A 通信時にはSSLによる暗号化を行い、強固なファイアーウォールを備えた専用のデータセンターを使用する
B 患者氏名、生年月日、住所などの個人情報はデータに入れないため、万が一情報が漏れても個人を特定することは困難である

1) Lameire NH: The impact of residual renal function on the adequacy of peritoneal dialysis. Nephron 77: 14-28, 1997
2) 日本透析医学会統計調査委員会:わが国の慢性透析療法の現況(2000年12月31日現在). 透析会誌35: 1-28, 2002
3) Jones S, Holmes CJ, Krediet RT, et al: Bicarbonate/lactate-based peritoneal dialysis solution increases cancer antigen 125 and decreases hyaluronic acid levels. Kidney Int. 59: 1529-38, 2001

図1 Moncrief And Popovichのカテーテル挿入法を用いたPDの段階的導入法:SMAP
@ トロッカーを用いてカテーテルを反転創まで皮下トンネルを通し、いったんカテーテルを創外に出す。この時点で末端を結紮する。
A ケリー鉗子を用いて反転創から最初の傍正中切開創まで皮下トンネルを作成し、カテーテルを再び傍正中切開創付近までもどして皮下に埋没させておく。出口はこのまま4週間以上おいてから作製する。

図2 αリプレーサーRを用いたα修復法
@ 清潔操作にてカテーテル内にαリプレーサーを挿入する。透視下に進めるとαリプレーサーはカテーテル先端から出て、横隔膜に達する。
A さらにαリプレーサーを押し進めると腹腔内でループを形成し、それに伴ってカテーテル先端は骨盤腔内に移動する。その時点でαリプレーサーを抜去する。

図3 ASP型CAPD患者管理システム インターネット上にアプリケ−ションサーバーを設置し、医療従事者や患者はパソコンのブラウザやiアプリ対応の携帯電話を通じて利用する。

 

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