ダラーオークション(Dollar Auction)
「囚人のジレンマ」という本を読んで、もっとも衝撃を受けたのがこれでした。
Dollar Auctionすなわち「1ドル札を競り合うオークション」というもので、うまい
日本語を思いつかなかったのでそのまま「ダラーオークション」と呼びます。
とは?
1ドル札は文字どおりのただの1ドル札ですから、本来の値段は1ドル以上でも以下でも
ありません。したがって普通にオークションをやるはずはない。ダラーオークションのルールは
次の通りです。
「落札したときに2番目の値をつけた人もその金額を支払う」
これ以外は普通のオークションと同じ。
どういうことかと言えば、Aさんが75セント、Bさんが76セントと言ったところで
落札したとすると、Bさんが76セント払うだけでなく、Aさんも(何ももらわないのに)
75セント払わなくてはなりません。
これで何がおきるのか?
さあはじまった
スタート金額は「1セント」から。なにしろ1セントで1ドル札を買えるのなら誰でも
乗るでしょう。「それなら私は2セント」、「じゃ、3セント」、とつりあがる。
50セント払ったとしても、まだ50セントの儲け。
果たして、99セント
「99セント」の値がついたあたりから、会場はざわついてくるはずです。上をいくために
「1ドル」をつけなければなりませんが、1ドルで1ドル札を買ってもしかたありません。
じゃあ99セントの人に譲れるでしょうか? この人はさっき98セントで値をつけているので、
もしここでやめると、何ももらえないのに98セント払う羽目になるのです。一方1ドルで
落札できれば、少なくとも損はしません。では1ドルをつけられた「99セント」の人はどう
するでしょう。落札するためには101セント払わねばなりません。つまり1セントの損を
するわけですが、それでもだまって見過ごす(その場合は99セント没収)にくらべれば
はるかによいので101セントを提示するでしょう。そして、次は102,103,104・・・。
いずれも落札すると損をする(1ドルを1ドル以上で買うのですから)のだけど、「次点」に
なるよりは常に99セント損は少なくて済むのでやめられません。
終わりはあるのか?
1ドルという境界線を越えてしまえばあとはもう分岐点はありません。2ドルだろうが3ドルだろうが、
どこまでいっても「やめたら損」という状態は変わらないからです。やめるにはそれなりの勇気が
必要です。「これ以上続けると損が増える」ということを考えれば止められるのですが、「もし相手が先に
あきらめてくれれば」と思うとまた迷うでしょう。(それだって1ドルを1ドル以上で買うことに
なるんでしょうが)
これはなんなんだ?
「そんなオークションはない」と言ってしまえばそれまでですが、実はこれと同じようなことが
実社会にもあるのです。
○ディズニーランドでの行列に並んでいる。一時間待ってやっと角を曲がって
みたら、また果てしない列が次の角まで続いている。この先どれだけ待てばいいのかわからない。
「もう馬鹿馬鹿しいからやめようか」
「でもせっかくここまで並んだのに」
「あの角を
まがればすぐかもしれない」・・・
○長距離電話の相手が「ちょっとまってくれ」といったままもう5分はたっている。
「もう切ろうかな」
「これまでの電話代はなんだったんだ」
「
もうすぐ相手がでるかもしれない」
○「核兵器、そろそろやめたいがこれまで投資してきたことを思うとなぁ・・・」
「こっちがやめてもあっちがやめなければ後れをとってしまうし」
ダラーオークションに嵌まらないためには、最初から参加しないしかないのだろうか。