2000年8月12−14日 水無川 オツルミズ沢 (夏合宿)
L三井 佐藤
前半の腕力高巻き&登攀、後半の快適な滝の連続する沢。
8/12 キャンプ場7:25−オツルミズ沢出合7:45−カグラ滝上9:20−サナギ滝下12:50−サナギ滝上17:00
8/13 サナギ滝上6:35−最初のSB脱出(1/25000図の「ツ」)7:50−大高巻き終了大滝上SB11:30−クランク14:30−フキギ手前二又15:25
8/14 フキギ手前二又7:20−小屋下8:50−駒ケ岳9:35−十二平12:55
8/12 くもり一時にわか雨
台風が来ていて天気は2日もつかどうかといった予報なので、明日中に難所を抜けたい。夏合宿初日で3時間睡眠。オツルミズ出合でBCに向かうみんなと分かれた。
偵察のときはいきなりカグラ滝下まで巻いたのだが、今回は水量少なく、出合の滝を左から登った。朝イチから微妙なフリクション。CS4mを左から巻く。残置スリングで懸垂下降。カグラ滝は快適に越える。次の釜付きは左から巻いたが、右の方がよかったようだ。続く釜付き2つを胸までつかって通過するとスノーブリッジ。上を歩いて行くと、スノーブリッジが切れた先に立った連瀑が現れる。「関東周辺の沢」のサナギ滝の写真に似ていて、これがサナギ滝だと思った。枝を埋めてスノーブリッジから懸垂下降し、ブッシュを登って行った。連瀑上段の右岸にチョロチョロ流れる岩棚の下に出る。ここから再びブッシュを腕力で登って沢に出る。やれやれサナギ滝がやっと終わったかと思って歩いて行くと、本物のサナギ滝がド迫力でそびえているではないか!
最下段がドーム状にへこんでいるので左から巻いてドームの上で水流の近くに行くのだが、手前のブッシュを嫌っていったん奥に行ってからスイッチバックで登ることにした。スイッチバックせずに直登した踏み跡もあった。スイッチバックが悪く、カラ身の腕力登り。どんどん登ると岩壁に行きづまったので少し下がって水流近くへのトラバースルートに乗った。さてこれから岩登りだというところで雨がポツリときた。見た目より快適に岩を登り、3ピッチ目で右に曲がって最上段の滝の横に着く。後で登った中村さんたちはこれを曲がらずに登って苦労したそうだ(「上信越の谷105ルート」と同じ)。垂直の凹角に取り付くためにやや右から近づいたがここも少し悪い。凹角が不安なので空身で登ることにし、凹角下でピッチを切って佐藤に来させた。この核心部でにわか雨が降り、雨具を着ての登攀だが、じきに小降りになった。凹角を抜けると落ち口に出た。
サナギ滝は越えたのだが、さてビバークできるのか?落ち口の岩に寝られなくはないなと思いつつ、次の釜付きを巻いたが、次のが泳いでも通過できるかどうかわからない、あるいは高巻きか。そしてその後ろにはスノーブリッジが見える。時間も遅いのであきらめて落ち口に戻りビバークした。タープを張ったが、さすがにサナギ滝の落ち口は気持ちいい。下がドーンと切れ落ち、正面に八海山。最高のビバーク地だ。

8/13 はれ
朝イチで泳ぎ。すぐにスノーブリッジ。中に入るとまず泳ぎ。出口が悪く、やや左に抜けるのだがここもきびしくガタガタ震えながら空身で登る。巻いて沢身に下りるもその先が歩けない。100mほど先には20mほどのナメた滝が見えるが雪渓がグシャグシャに壊れて登れなさそう。左から巻き、支沢(池ノ塔の南)に降り、支沢を20mほど登ってからヤブに突入。沢に戻れず登りすぎた感じだがどうせさっき見えた滝が登れないからそのまま高巻き続行。下にはスノーブリッジの切れ間に滝が見えたが大滝だろうか。途中から尾根状をヤブコギしていたがマツとシャクナゲにうんざりしてきたので懸垂下降してみた。1/25000図の「ズ」の右上か。さらにトラバースぎみに巻き続け、岩っぽいルンゼ状を下ってやっとスノーブリッジに降り立った。支沢から3時間半も高巻いた。「上信越の谷」ではもっと沢寄りにトラバースぎみに巻いている。交信が取れた。やれやれとスノーブリッジの上を歩いていると30m2段が現れ、これも巻く。ああ疲れた。これで苦労は終わりだった。
たっぷり休み、あとはるんるんのスノーブリッジ&沢歩き。一つのスノーブリッジが迷ったが、へつって下に入り、泳ぎと胸までのつかりで突破。あとのスノーブリッジは上を歩く。大きなスノーブリッジを歩いていると飯豊川を思わせる。右から支沢が入り、スノーブリッジが切れてクランク状に曲がるところを巻くと沢登りになる。ここからは数mのてごろな滝が連続し、とても楽しい。フキギより下の3:1支沢の分岐でビバークにした。気分のいいところで、高台に逃げることもできる。疲れてるし、台風は来なくなったし、小屋に泊まる必要はない。ちなみに翌日少し歩くと流木がたまっているところがあり、焚き火可。フキギ上の二又は開けているが平らな場所がない。
8/14 くもりのちはれ
夜は寒かった。きびしさのなくなった小滝たちを越えてゆくと崩れそうなスノーブリッジを歩き、フキギが後ろに見える1:1二又で花を見ながら休む。その次の次のスノーブリッジに乗っかると落ちた。80cmほど落ちただけで何事もなかった。その次のスノーブリッジの先は崩れていて歩きにくいので、くつを履き替えて稜線に上がることにした。登山道を歩く人が見える。草原の若い緑、残雪の白、空の青の取り合わせがなんともきれい。よく見ればニッコウキスゲの黄、コバイケイソウの白がちりばめられ、紫はショウジョウバカマか。二人ともしゃべらない。客観的にも素敵な場所だが、我々ほどその風景を心に染み込ませていた者はいなかったろう。
ヤブ3分で小屋に出、1年間に3回目の駒ケ岳に登った。ちなみに雪がなければさらに沢を登り、小屋のすぐ上で道に出るのがよい。山頂までつめることも可能。山頂の20mほど下には雪渓が残り、その下からはジャンジャン水が流れているのは驚きだ。あとはグシガハナ尾根をひたすら下り、疲れを復活させてBCのビールに迎えられた。

下山した後で大雨が降り、カグラ滝上のスノーブリッジは崩壊して取り付けなかったそうである。その他のスノーブリッジも容易に上や下を歩けた。今年は残雪が多いので苦労すると各地で報告されていたが、オツルミズは特に多いわけでもなく、我々のときはぎりぎりうまく残っていて非常にラッキーだった。
入れ替わりでサナギ滝まで行った中村パーティは全くちがったルート取りだし、その上に関しても資料によってずいぶん記述が異なる。踏み跡はついているがそれが正解というわけでもなく、スノーブリッジの状態やパーティの実力、ルートファインディングで自分なりの登り方ができる沢である。
技術度****、体力度*****、雰囲気*****(*最低−*****最高)