スポーツの祭典は珍名の祭典でもあるのだ

 何やらワールドカップであるらしい。
 メキシコと親善試合したとか、「岡のカーテン」だとか、カズが代表に入れないとか、中田が取材拒否したとか、いろいろとにぎやかなことである。

 中で笑った記事は、フランスでサッカー嫌いが「サッカーの無い生活を送る会」を設立したとのこと。非常な盛り上がりで、会員は850人を突破したとか。こらこら、850人でどこが盛り上がっておるのだ。
 私はサッカーには疎いので、あんまり関係ない話だが、どんどん報道が加熱してくれるといい。その間にひっそりと阪神は最下位に落ち、目立たずに監督を交代させるから。

 しかし折角の大会なのだから、疎いとか言っておらず、私もワールドカップのお役に立ちたいことだと思う。
 といっても戦力分析や選手紹介は公式非公式いろんなところで行われているから、私がやってもしょうがないだろう。
 国際大会の華は珍名である。かつての大リーガー、マンコビッチに始まり、マラソンではメコネン、ロバ、水泳のスピッツ、最近の長野ではノルウェーのアホネンとソヤネンが活躍してくれた。ここでは各国の代表選手から珍名さんを紹介してみよう。ソースは日経のワールドカップのページから。

 まずAグループ。モロッコが傑出している。DFアブラミ、MFサラミ、MFシッポなどおいしそうな名前が並んでいる中に、FWのロキがいる。北欧神話ですべての災いの元とされる、悪ふざけとシャレにならぬ悪戯が大好きな邪神である。必ずや同グループのノルウェーとの対戦で力を発揮してくれるだろう。ただ、ノルウェーは今回あまり面白くない。長野五輪のアホネンほどの逸材がいればよかったのだが。

 Bグループは珍名の宝庫と期待されるカメルーン。MFのジャン・ジャック・ミセミセである。ジャン・ジャック・・・とくると誰だって「ルソー」か「バルロワ」を期待するだろう。そこへ、「ミセミセ」。他にも、パトリック・エムボマ(FW)やデビット・エムベ(FW)など、ファーストネームとラストネームの落差で笑いをとる人が多い。
 同グループのチリとオーストリアも頑張っている。
 オーストリアはDFのファイアージンガー。永井豪の巨大ロボットみたいで、むちゃくちゃ強そうである。GKもウォールファールトという選手がいて、スポーツ新聞は今から、「鉄壁のウォールファールト!」などと書きたくて待ちわびている。ぜひとも決勝リーグに進出して、ベルギーのGK、バンデウォールと鉄壁GK対決をやって欲しい。
 チリは個人技よりチームプレーで勝負。テリス、レイエス、ロハス、ラミレスなど、代表選手のうち12人が「何とかス」という名前である。

 Cグループの注目は南アフリカ。FWにマシンガという、これも強そうな選手がいる。ベルギーのファイアージンガーと対決してほしいものである。同じFWにはマッカーシーもいる。人種差別撤廃の国でマッカーシーは穏当ではない。また、モコエナ、ムカレレ、シコサナ、モエティという、並べると何だかいやらしくなる選手が揃ってもいる。アーノルド(MF)などという普通の名前が恥ずかしくなるようなチームである。

 Dグループは最大の激戦区といっても過言ではないだろう。スペイン、ナイジェリア、ブルガリアがレベルの高い争いを繰り広げる。
 スペインは小技で勝負。DFがイエローである。出場早々の警告である。和訳するとFWのキコになる。
 ナイジェリアは豪快である。いきなりDFにババヤロ。おなじくDFのババラデ、FWのババンキダとババ3兄弟を形成する。オビエコ(DF)などと不憫な選手もいる。
 しかし何と言っても最強はブルガリア。ここはチリをはるかに上回るチームプレーである。ズドラフコフ、イワノフ、ミハイロフ、ペトコフ、ストイチコフ・・・なんと25人代表全てが「何とかフ」なのである。恐るべしブルガリア。

 Eグループにはあまり珍名はいないが、アナウンサーにとって最大の試練といえるのがこのグループの試合中継である。ベルギーには前述のバンデウォールを始め、フェルストレイテン、ファンケルクホーフェン、ムボ・ムベンザ、バンデルエルストなど発音しにくい長い名前が並んでいる。これをオランダのハッセルバインク、ファンホーイドンク、ファンデルサル、ファンブロンクホルストが迎え撃つ。更に異質な言語体系の韓国がソ・ドンミョン、チャン・ヒョンソク、ソ・ジョンウォン等を送り込む。このブロックの中継が無事やり遂げられれば、アナウンサーも一人前である。

 Fグループはやはりユーゴスラビアである。ブルガリアに次ぐチームプレイを見せてくれる。レコビッチ、イエブリッチ、ミハイロビッチ、サビチェビッチ、スタンコビッチ・・・メンバー26人中22人が「何とかッチ」なのである。中にはユーゴビッチなどという選手もいる。これって、和訳すると「日本左衛門」とでもなるのだろうか。
 Gグループではルーマニアがスティンガチュ、ブルニャ、チョボタリュ、ポペスクなど小ネタで笑いをとっている。しかしエースがハジというのはいかがなものか。
 イングランドはアダムス、ルソー(DF)、オーウェン(FW)と哲人を並べている。中にバット(MF)などという選手もいるが、この男は野球に転向したほうがよかったのではないか。
 残念ながらコロンビアにはあまり珍名がいない。このチームの興味は、「エスコバルに続く自殺点被他殺男は誰だ?」に集中しているようだ。
 チュニジアにはサルヒ、ジャバラ、フキ、スアヤが並んでいる。ジラシ(FW)という選手もいる。粘っこいプレーが得意と見た。何より変なのは、この日経のチーム総評で主力として名前が出ているセリミ、スリマネが代表メンバーに入っていないことである。どうしたのだろう。

 日本も参加するHグループはクロアチアが優勢。スタニッチ、ラディッチなど「何とかッチ」が25人中15人を占めるチームワークのよさ。しかもユリッチ、シミッチ、マリッチなど女学生の渾名のような可愛い名前が多いのが特徴である。更に、ユルチッチ、アサノビッチなど笑いをとる波状攻撃である。
 アルゼンチンはアフリカの死神ロア(GK)、サッカーのために生まれたような名前のパス(DF)などを並べて対抗するが、劣勢覆うべくもない。ジャマイカはシンプソンやバートン、ホールなど欧米のありふれた名前が並んでいて、ジャマイカらしくもない・・・と思ったら、そのはず、大会用にイギリス人を大量に帰化させたのだそうだ。

 以外と、クロアチアの対抗馬として戦えるのは日本かもしれない。ナナミ、ナラハシなんてのは結構変な名前である。ソーマはインドの聖なる飲料である。オノは英国人には「Oh,No!」と聞こえるに違いない。ハットリもアフリカでは「ハタリ!」であるし、うまくゆくとハットトリックと間違えられるかもしれぬ。コジマはワグナーの妻である。
 しかし、最大の珍名はロペスであろう。彼を見た外国の観客は言うにちがいない。
「ロペス?日本人にしては妙な名前だな。日本にそんな名前があるのか?どんな漢字を書くのだ?」


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