当たるを八卦なぎたおし

「なんや、最近えらい占いブームらしいな」
「そうやな。動物占いがばーっと流行ったやろ。そんで二番煎じで寿司占いが登場したわな。もう後はネットで無差別爆撃や。職業占い家電占い焼き肉占いむし占いカクテル占い……最近では、病気占い悪女占いなんてのもあるらしいで」
「要するにワンパターンやからな。生年月日と、あと血液型とか好きなものとか選ばせて、はい、貴方は○○タイプです。××タイプと相性最高、△▲タイプとは反発しますよ、なんて言うだけやろ」
「ま、そう言ったら身も蓋もないが……」
「そやからわしらもこの風潮に便乗しよ。占いページでどっかんどっかん大儲けや」
「儲からんとおもうけどな。ネットじゃ」
「まずは怪獣占いや。貴方はデットンです。優秀な兄貴と目立つ親友の間に挟まれていつもいじけています。まずはメイクからやり直しましょう、なんて」
「それは、そこそこいけそうやな」
「続いてときメモ占いや。あなたは紐尾さんタイプ。世界征服がラッキー。あなたは虹野さんタイプ。ずん胴です」
「ゲームそのまんまやないか。少しはひねれや」
「それから阪神占いや。あなたは阪神の選手だと大豊タイプです。負け犬です。あなたは今岡タイプです。負け犬です。あなたは山田タイプ。負け犬です」
「負け犬ばっかしやないか」
「そやかてあのチーム、負け犬しかおらんのやもん」
「そんな不景気な占い、誰が見に来るか」
「そしたら天皇占いや。あなたは崇徳天皇です。祖父には嫌われ、父には疎まれ、やっとの思いで自己主張したら人生が台無しになりました。あなたは後鳥羽天皇です。上司に逆らったら左遷されちゃいました」
「そんな不敬な占い、怖くてできんわ! だいいち、危ない奴が信じ込んで、『ワシは天皇でおじゃる!』とか殴り込んできたらどうすんねん」
「そやな。ほしたら国占いや。あなたは日本。お金持ちなのをひけらかして、みんなから嫌われていませんか。あなたはアメリカ。わがままでいつも自分の言い分を通すので、みんなから敬遠されています。あなたはカンボジア。貧乏なうえに家族喧嘩が絶えないみじめな生活です」
「それ、絶対、大使館から抗議が来るで」
「じゃあお国占いはどないだ。あなたは東京。ファッションセンスが抜群と、思いこんでるのはあなただけですよ。あなたは埼玉。目立つ友人の陰で、いつも惨めな思いをしてませんか。ラッキーアイテムは合併。あなたは岡山。しつこくて陰湿で権力志向で陰謀好きで面倒見が悪く、いつもみんなの嫌われ者」
「岡山をそこまで言わんでもええやないか」
「いや、タモリや清水義範の名古屋苛めみたいに、そのうち芸にならんかなと……」
「なるかいな」
「つぎは文豪占いや。あなたは芥川龍之介タイプ。自殺します。あなたは太宰治タイプ。自殺します。あなたは川端康成タイプ。自殺します。あなたは三島由紀夫タイプ。自殺します」
「自殺ばっかりやないか」
「いやあ、文豪ちゅうのは、自殺ばっかりしとんねんなあ」
「あほ、自殺だけやないわい。小説も書いとるんじゃ」
「戦争占いちゅうのはどないだ。あなたは百年戦争です。だらだらと締まりなく続き、女の手を借りないと終わらないなんて、あなたはちょっといくじなし。あなたは関ヶ原の合戦です。根回し上手なのはいいのですが、つまんないと言われたことはありませんか。あなたはレニングラード攻防戦です。敵味方あわせて数百万人は死ぬでしょう。なかでもボスに粛清されるのがいちばんの死因」
「物騒な占いやな」
「最後はとっておきや。雪印占い」
「いきなり名指しかい」
「あなたは毎日骨太。最近カルシウム不足でイライラしてませんか。あなたはとろけるスライスチーズ。ピザ以外の用途も考えましょう。あなたは……」
「いや、雪印占いだけはやめた方がええ」
「なんでや」
「占いやから売らなければええんやが、黙って売ればぴたりと当たる」


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