くだらな日記(2002年7月)


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7月31日(水)
 ヤクルトの私設応援団長の岡田さんが急性肺炎で死去。「がんばれタブチ君」で有名になった、あのメガネの八百屋さんです。ガン!ガン!ガン!と相手チームに打ち込まれて目を点にして口をあけっぱなしにしてた、あの人です。
 1985年の阪神優勝の試合、神宮球場の一塁側まで埋めつくしたわれわれ阪神ファンに向かって、「優勝目前めでたい。めでたいがしかし、われわれもヤクルトファンとしての矜持にかけて応援はしなければならないのです。一塁側にも阪神ファンがほとんどだということは承知していますが、どうかヤクルトの応援をすることをお許しください」と挨拶していたことが忘れられません。合掌。

 埼玉県では浦和学院が甲子園決定。予選7試合中5試合がコールド勝ち、しかも失点は決勝戦の1失点のみ。強すぎるよ。そもそもここ数年、埼玉県では浦和ひとり勝ち状態が続いていて、強すぎる浦和の猛打を、かろうじて春日部共栄の中里(2000年度中日1位)、花咲徳栄の宮崎(住友金属鹿島)、児玉の新井(2000年度阪神4位)、埼玉栄の大島(1999年度西武3位)とドラフト上位クラスの超高校球児たちの力投力戦で防いでいたのです。もっとも浦和にも大竹(2001年度広島1位)や阪元(2000年度ヤクルト4位)がいましたが。それが今年、超高校級と言えるのは浦学の二年生エース須永のみ。というわけで春夏と独走してしまいました。でもこんなに県内で強くても甲子園ではベスト4がやっとなんだよね。


7月28日(日)
 まもなく夏の甲子園、高校野球がはじまる。
 注目選手は残念ながら決勝で負けてしまったが、栃木県は宇都宮学園のエース泉投手(ぢゃあ甲子園の注目選手じゃないじゃん)。一年生のときから甲子園に出場してリリーフで球速142キロをマークし、「宇都宮の大魔神」と呼ばれた逸材。今年の夏はますます威力を増し、145キロはコンスタントに出るらしい。日米のプロ球団が注目しているとか。
 とはいってもガラスのエース。連投はできない。先発しても完投しない。百球投げると降板する。というのも一年生のとき肩を壊した後遺症がまだ残っていて、ちょっと投げると肩が痛み出す。その後の尻拭いをするのが控え投手の赤萩投手。今年はこちらのほうがよほどチームに貢献している。
 これほどの逸材がなぜ二年生の去年はまったく出てこなかったのか、というのも、この肩の故障が影響しているらしい。肩を壊して自暴自棄となり、素行不良のため野球部を退部処分、おまけに学校も停学処分(休学扱いとのことだが)になっていたらしい。投手としては逸材だが、高校生としてはろくでなしといったところか。野球をやってなかったら、たぶんただのばかだ。
 しかしこういうろくでなしが欲しい。肩の壊し癖は治っていないらしいが、それでも欲しい。阪神に。
 阪神の選手というと公私ともにおとなしくて、星野監督の一喝にびびるようなヘタレが多すぎる。もっと破天荒な選手が欲しいのだ。今年、嫁さんとの離婚も辞さずアイドルの乳を揉みまくった片岡選手、PL学園で後輩をパイプ椅子で殴打して訴えられた桜井選手、などのろくでなしが入団したが、他人の話を聞かない(聞けない?)世界規模のろくでなし、グローバルスタンダードろくでなしの新庄選手がアメリカに行ってしまったせいもあって、まだチームカラーが変わるには至っていない。
 泉投手、阪神に来てくれ。そして阪神をろくでなし球団に変えてくれ。そのときはじめて、優勝を口にできる。ヘルメットに怪我した選手の背番号を書くような選手はもうたくさんだ。高橋ヨシノブの顔面にデッドボールぶつけて、ぺ、とか唾吐いてくれ。長嶋がインタビューに来たら「誰? この爺さん」と言い捨ててくれ。佐藤投手コーチになんか言われたら「あんたみたいにヨレヨレになってまで投げ続けたくないもんね」と言い返してくれ。星野監督に殴られたら殴り返してくれ。その指で髪をかきあげてくれ。ダーリング。
 ……ええと、ただ、はっきりいって肩を壊した選手は回復の可能性が低いので(特に阪神では劇低。奇跡的に治った投手もサイドスロー転向して球速が十五キロ落ちるの法則)、ダメモトで五位くらいの指名ということで……ダメ?

 ついでに長野知事選挙。女というだけがとりえで出馬させられたのとか、右翼新聞の元論説委員とか、ゼネコン土建屋の代弁者とか、唯我独尊都知事のダミーとか、糞つまらない候補者ばっかりでどうしようもなかったのだが、羽柴誠三秀吉、あなただけは応援するぞ。泡沫ならあなたくらい楽しくなけりゃ。長谷川とか花岡とか中川とか市川なんてつまんない泡沫じゃダメダメ。


7月26日(金)
 中野坂上の「なかむら」で味噌ラーメンを食う。
 平日の昼間だからか、一階の十五席くらいあるカウンターのみ営業。席がちょうどいっぱいになるくらいのお客さん。
 顔を近づけると、ケダモノの香りがぷんとするスープ。でも臭いのではなくいい香り。味噌よりもこのダシで飲ませるスープです。うっすらと脂の膜が張っている。
 麺はカン水たっぷりの真っ黄色な太め真っ直ぐ麺。やや柔らかめ。これにモヤシ、ニラ、ネギ、焦がしネギ、チャーシューの具。
 このチャーシューがうまい。一枚きりなんだけど、豚ロースが分厚く、かつ柔らかく煮込んであり、ほどよい脂身と赤身のバランス。味はついてないが、スープが濃厚なのでこれがちょうどよい。
 なんでもこの店は小倉というタレントの人が、北海道の焼き肉屋のテールスープに感動して作った店らしい。だから焼き肉もやっている。名物はテールスープラーメン。なるほど、ともかく肉に関しては、どこのラーメン屋にも負けない、という意気込みだ。
 おまけにご飯がついてくる(お代わり自由)。このスープをレンゲに残して、それでご飯をすくって食べると、うまいんだな。テールラーメンでこれをやってみたい。


7月25日(木)
おさかな天国・パンクバージョン。

 ウマヅラハギの悲しみを知っているか?
 ウマヅラハギの悲しみを知っているか?
 優勝劣敗! 適者生存!
 優勝劣敗! 適者生存!
 食物連鎖はあざなえる縄の如く続き
 殺生の輪廻ははてしなく回り続ける
 イワシはプランクトンを サバはイワシを
 カツオはサバを マグロはカツオを
 クジラはマグロを そして
 ヒトはクジラを食いつくす
 優勝劣敗! 適者生存!
 優勝劣敗! 適者生存!
 有機水銀は等比級数的に濃縮し
 恐るべき毒物があなたの身体をむしばむ
 肌はかさかさに荒れ どす黒くメラニンが沈着し
 運動性能低下 猫のように踊り歩き
 脳神経は乱れ狂い そして
 あなたはなすすべもなく涎を流すだけ
 優勝劣敗! 適者生存!
 優勝劣敗! 適者生存!
 ウマヅラハギの悲しみを知っているか?
 ウマヅラハギの悲しみを知っているか?


7月23日(火)
 鈴木さんのところからはじまってぽいうさんへと、「気持ちの悪いたべものの話」が連鎖しているようなので便乗してみます。おなかをこわして自分が食べられないのではらいせに、てなわけじゃありません。

 こういうことを書くとまた故老扱いされてしまいますが、昔、便所は水洗じゃありませんでした。子供から通称「ボットン便所」と呼ばれる汲み取り式でした。それをお百姓さんがコエタゴ担いで汲みに来る、というのはさすがに私の時代にはなくて、でっかいタンクとぶっといホースを積んだ汲み取り自動車が走り回っているのでありました。われわれ子供は、「あの自動車にできるだけ近づいた者が勇者」というルールで遊んだり、タンクをぺたぺた叩く勇者が誕生したとたんにいきなり「あの車に触った奴はえんがちょ」というルールに変更したりして遊んでいたものでした。
 そして近所の田畑はまだ有機質天然肥料でした。あちこちに「野ツボ」というものがあって、あの車で汲み取ったものをそそぎこんでいるのでした。どうやらあれはワインと一緒で、寝かせれば寝かせるほど上質なものになるようです。あの、ミルクパンでミルクを沸かすと、薄い膜が張りますよね。ああいう感じで膜が張って、そこにカエルがお休みしたりしているのでした。そのカエルめがけて石を投げる馬鹿者がかならずいて、大騒ぎになったりするのですが、それはまたの話で。
 とりあえず今回は野ツボの話ではなく、汲み取りの話です。便所の汲み取り口を玄関に作るとか床の間に作るとか(山上たつひこの漫画でそんなのがありましたが)そういう趣味の人は少なく、たいがいは裏口に作ります。それもじめじめした湿気の多い薄暗いところに作ります。で、そういうところには有機質天然肥料と湿気と暗がりを好む生物の天国となったりするのです。植物ではシダ、動物ではダンゴムシとヤスデと、そしてカマドウマですね。
 カマドウマ。直翅目キリギリス亜目に属する昆虫。なんかすらっとしてかっこよい名前ですが、実体はおそるべきものです。まず、ふつうの昆虫にありがちな羽根とかそういったものがカマドウマにはありません。毛も生えていません。全身ぬらっとした裸体です。ぬらぬらしています。しかも不健康な薄ピンク色の体色に不健康な黄土色の斑点を散らしています。どうみてもなにかの病気にかかった人間のようです。おまけにせむしです。あえてなにかにたとえるなら、梅図かずおの名作「漂流教室」の未来世界に出てくるけったいで不気味な未来生物です。わたしら子供は昆虫採集が好きで、カブトムシやクワガタ、果てはオサムシやクソムシまでつかまえていたのですが、カマドウマを採集しようとした子供は、さすがにいませんでした。同じクソ食う虫でも、クソムシは陽性でカマドウマは陰性なんですよね。
 しかもこのカマドウマ、そういう陰気で不健康そうな外見でありながら、意外と敏捷で行動性能が高かったりします。さすがはキリギリス亜目の末席を汚すだけのことはあります。それを思い知らされたのは、ある日の午後、よせばいいのにカマドウマにちょっかいかけたときのことでした。
 若き日の私に棒でつつかれ、身の危険を感じたカマドウマは、その後肢の力のありったけで跳躍します。高く、どこまでも高く。そして私は、子供によくあることですが、ばかのようにぽかんと口を開けておりました。ばかだったのですが。そこで、悲劇が起こりました。
 そこで得られた教訓。カマドウマはぬらぬらしているが、意外ととげとげもしている。
 私は食物だったら犬からコオロギまで食べる準備はありますが、カマドウマはいやです。汁気たっぷりで、慣れればイナゴやコオロギより美味しそうな気もしますが、慣れたくありません。あのときの味については思い出したくありません。


7月20日(土)
 うどんを食す。
 うどん愛好家&ぷにぷに愛好家&好青年として有名な徳田さんのお宅にお邪魔してうどんをご馳走になりました。
 まず家に入ると目に入ったのがことごとくうどんの設備。うどんこね用のでっかい鉢、うどん延ばし用のだだっぴろいまな板、うどん切り用のうどんカッター。しかもその道具のどれもこれもが、普通のうどん制作用具とちょっと違っているのです。
 たとえばまな板。これはだだっぴろくて便利なので、漫画を描くときにも利用しているそうです。なるほど。そのせいで、うどんをまな板の上で延ばしたとき、どういうわけかうどんの表面に「あふん」とか「ずぴゅ」とか「ぷに」とか、謎の文字がレリーフとして浮かび上がったわけですね。
 そしてうどんこね鉢。なんだかかすかに酸の臭いがするので不思議に思っていたのですが、これは面積の大きさを利用して、写真現像用のバットとしても活用しているそうなのです。家の奥に、黒いカーテンで仕切られた小部屋があって、そこで事情あって街の写真屋に頼めないような写真の現像を行っているそうです。その写真のごく一部を見せてもらいましたが、私としてはかかわりあいになりたくないので何も言うことはありません。
 さらにうどんカッター。なんだか製本で使う裁断機に似ていると思ったら、やはり製本にも使用しているらしいです。まな板の上で描いた漫画にこね鉢で現像した写真を添え、同人誌を作ります。これが世間の製本屋ではなかなか印刷してもらえないため、自宅に地下出版局を作り、そこで印刷した同人誌を、このうどん切りで隅を切って製本するそうです。製本したものを見せてもらいましたが、いやぁ。
 最後になりましたがうどんもおいしゅうございました。見た目は茹ですぎて延びたかに見えますが、最初の口当たりは柔らかでも芯は強い。腰が強く、あくまでも存在を主張するのでした。いわゆる「腰が強いうどん」というのは単に茹でたりなくて固いだけだったりしますがその正反対。これなら鍋焼きにしても煮込みうどんにしても溶ける心配は絶無。最初柔らかでも芯は強い、幼女なのに成年男子より絶倫、という、徳田さんの漫画の理想型をうどんにしたような存在でございました。


7月16日(火)
 「太宰治に聞く」(井上ひさし:文春文庫)を読んだら、そういえば太宰治の「惜別」をまだ読んだことがなかった、と気づき、購入。なにしろいまワープロ変換してみるまで「しゃくべつ」と読むものと思いこんでいたくらいだ。ううむ、でも、再読の「右大臣実朝」とともに、あまり面白くなかった。戦争中のことだからこういうふうに書かねばならなかったんだろうな、という部分が多すぎて、それはそれで同情すべきなのだが、でもそう思わせる作品はやっぱりよいものではないわな。
 「惜別」にしろ「右大臣実朝」にしろ、魯迅や源実朝のことを書いているようでいて実は太宰治が変装して喋っているだけ(「右大臣実朝」で公暁がカニを食い散らしながら喋るところなんて、もろに太宰治そのままですな)、という手法は、そういえば井上ひさしがやたらに十返舎一九や太宰治を作品の中で登場させて喋らせる、という手法と同じで、だから井上ひさしは「惜別」を高評価したのか、と気づいたり。
 井上ひさしの本の中では、太宰治と坂口安吾、織田作之助の無頼派三人の鼎談がいちばん面白い。いきなり三人で「小股の切れ上がった女というけれど、小股っていったいどこにあるのだ?」と悩んだりして。


7月14日(日)
 悪いブランデーを誤魔化す方法として、ざく切りにした干しぶどうにブランデーを注いで一晩おき、翌日漉して客に出す、というものがあるらしい。ためしにそれをやってみた。
 特に会社名は秘すが、国産の安物ブランデーを買ってきた。ひとびん千円しないということから、その等級が推察できるだろう。そのまま飲んでみたが、味も香りも乏しく、合成で作った酒のようだ。
 包丁でざくざくと切った干しぶどうをこの瓶に放り込む。半日ほどおくと干しぶどうがふやけて、なんだか中国によくある、妖しい生物を漬け込んだ酒のようになってきた。
 飲んでみると、葡萄の甘味と香りが酒に映り、たしかにふたつみっつ等級が上がったような気がした。洋酒には詳しくないのだが、どうやらブランデーやウイスキーは、いいものほど甘くなるらしい。甘いものがいいとは限らないのだが。
 調子に乗って半分くらい飲んだせいか、翌日の夕方まで熟睡してしまった。二日酔いではないが、なんとなく朦朧とした気分。もとが安物だけに、酒に混ざった雑成分がよくない働きをしたのかもしれない。ブランディに何か、イヤなものでも入っていたのかしら。

 田中康夫知事をめぐる泥沼情勢はますます泥濘が深く汚くなっているようだ。徳島の自民党バカ議員が長野の自民党バカ議員に激励の手紙を送ったり、自民党バカ議員が知事選出馬を要請した相手がみんな断ってきたり。まるでバカのいぶり出し。百馬鹿。
 だいたい必要もない公共事業を食いつぶして生活する地方財政というものが変態的体制であることに疑いはないのであって、こういうものから脱却して健全な体制に戻るということに反対する人間はバカである。できるかできないか、ではなく、やらない人間はバカなのだ。
 もっとも公共事業に頼り切っている変態的体制というのは長野に限らない。岡山でもそうだ。農家はだいたい農業だけでは食えない。コメは売れない、野菜や果物は輸入品の低価格攻勢に勝てない。どうするかというと、道路工事や建設工事のバイトに出かけるのだ。若い農夫は道路を掘り返し鉄骨を運び、年老いた農夫は道路脇で旗を振って交通整理する。その収入が、ヘタすると農業以上になるらしい。長崎県の壱岐でも、漁夫の多くは、壱岐のようなちっぽけな島には不相応なくらい広く立派な舗装道路の工事で生活費を稼いでいる。たぶん多くの県で同じようなことになっているだろう。
 長野みたいなバカ議員が落選して失職して全員首を吊って死んでもまったく同情しないが、地方財政を健全化することは、おそらく住民のほとんどの生活に恐るべき影響を及ぼす。土建屋の八割か九割は倒産し、農家のほとんどは生活が立ちゆかなくなり、失業者やホームレスが地方都市にあふれる。天明の大飢饉のように人が人を食うまでにはならないかもしれないが、昭和初年のように農家が娘を売るような事態くらいにはなるかもしれない。
 でも、健全化しないと、将来さらに怖ろしい事態になるのだ。


7月13日(土)
 先週からパソコンと本棚と机と寝室のある私の部屋でエアコンが壊れてしまって、暑くてどうにもならない。やむなく布団だけ隣の部屋に移したのだが、ここは長いこと物置にしていたせいでエアコンのリモコンがどこかにしまわれてしまっている。やむなく本体のスイッチで作動させているが、固定で摂氏24度に設定されて寒くてたまらない。寒暖地獄。
 そんなわけでパソコンのあるこの部屋に長居ができない。せっかくジャッキーさんとこから廃墟雑文祭が始まったというのに雑文を書くことができない。短くしようとしたら、たった十行ほどでそれまでのすべての文章を片付けてしまう、とても凶暴なものができそうになったので慌てて消去。
 どうも前の「猫が行く」といい、私が凶悪無惨なことを書いてジャッキーさんが温暖融和なことを書くという役割分担ができているのかもしれない。天使と悪魔。雑文を書くような人は悪魔が多いかと思ったら、最近は天使の方がむしろ多め、というのが最近の発見。
 それにしてもうちの家はどうしてこうも物がなくなるのだろうか。リモコンのついでに捜してみたのだが、新潮文庫を二十冊読むとくれる文豪ウォッチ(今は三十冊になっている)、たしか去年、赤い太宰治ウォッチと黄色い夏目漱石ウォッチをもらったはずなのだが、黄色い夏目がどこにもない。赤い太宰は腕にしているのだが。どうも赤い太宰を腕に巻くようになってから咳が出たり薬を飲んで昏睡してしまったり、体調不良になることが多いので、そろそろ黄色い夏目に切り替えたいのだが。もっとも夏目にしたら今度は胃が痛くなるかも。


7月12日(金)
 昨晩はパリーグをぼろくそに言ったから、罪滅ぼしに打線をほめてみよう。
 パリーグの打線は凄い。カブレラ、ローズ、中村、小笠原、小久保と誰が四番でもおかしくない中心打線に、松井、井口、金子といった一癖も二癖もある脇役陣が絡む。まさにオールスター打線。
 これに比べるとセリーグ打線の貧弱さは否めないが、しかしヤクルトのチワワが言っているような清原四番はないだろう。規定打席にも足りないステロイド漬けのポンコツがセリーグの四番など、百億年早ーい! やはりクリンナップは、四番ライト松井、五番ファーストペタジーニ、これで決まり。 ……と思ったらペタジーニ出ないじゃんか! しゃあない、五番はラミレスか古田。三番は桧山、高橋、清水、福留のまわりもち。ちょっとパリーグには遜色があるけど。でもなあ、なんでペタジーニ……せめてディアス……我ながらアリアスにはなんも期待できないと思うぞ、マジで。


7月11日(木)
 三井って誰だよ。いやオールスターの先発の話なんだけど。阪神の井川はいいだろう。今年は防御率と勝ち星のトップだ。しかし三井は。松坂の代役だろ。ムネヲの応援してる以外にとりえのない奴だろ。いやもう全西武ファンを敵にまわす覚悟で言うが、三井先発はないだろ。西武ならせめて西口だろ。え、西口も出ないのか。西武は松坂と西口を欠いて、それでも首位独走なのか。よほど他の五球団が阪神並にだらしないんだろうな。などとパリーグ全球団のファンを敵に回す覚悟で言ってみる。それにしてもパリーグ、よくもこんだけろくでもない投手ばっかり選んだな。早晩潰れるぞ。


7月9日(火)
 カツオが安いので買ってきたら、皮も腹骨もとっていない、半身におろしただけの奴だった。まあ、いいけどね。
 不器用に皮をはぎ、身を崩しながらも腹骨をすきとっていると、なにやら白く細いものがぞろぞろぞろぞろと身のあいだからご登場。なんかこれって、去年目黒寄生虫博物館で見たような気がするぞ。ひょっとして、アニさん、アニさんじゃござんせんか?!
 まさかとは思うが腹痛でも起こしたらシャレにならないので、刺身にする予定は急遽中止。明日まで冷凍し、生節にして食べることにする。そのため今晩は塩豆と炒り空豆の夕食。夕食ちゃうって。


7月7日(日)
 だいぶ体調も回復してきたので、久しぶりに料理などしてみる。
 魚屋でホヤが四つ三百五十円と安かったのでダメモトで買ってみる。赤紫色のごつごつした殻を包丁で割ってみると内部の汁が出てくる。これを捨てないようにボウルで受ける。堅い殻の中にはぶよぶよした身があるので、これは容易に手で引き出せる。ワタと身を別にする。身は水で洗わず、さっきの汁で洗うのがコツらしい。水で洗うと独特の香気が抜けて水っぽくなってしまうんだとか。
 ひとつは身を細切れにしてワタと一緒に塩と酢をふりかけ、塩辛に。ひとつは身を短冊に切ってキュウリと一緒に二杯酢でいただく。臭みはほとんどなく、いわく言いがたい独特の涼しげな風味がする。壇一雄が「後頭部にすっと抜けるような味」と表現していたが、まさにこの通り。こういう表現ができる人を文豪というのだな。
 主食はカレー。村井弦斎という明治の小説家が「食道楽」という本に書いているレシピにのっとって作ってみる。まずタマネギとニンジンをみじんに刻み、バターでゆっくりと一時間ほど炒める。これはすべてのカレーに共通しているオマジナイなので、カレーを作るには避けて通れない。これに小麦粉をまぶしてさらに炒め、スープで溶いて、フードプロセッサーでペースト状にしたピーナツとすりつぶしたセロリを加え、ココナツミルクを入れ、ジャガイモと炒めた牛肉を加え、最後にカレー粉とチャツネを加えてことこと煮込む。
 市販されているカレー粉を入れるなどとおきかげ&けいさん(カレー愛好家)が聞いたら激怒するだろうが、今回は本格カレーを作るのでなく村井カレーを再現するのが主眼なので、これでいいのだ。しかしこのカレー粉は失敗だった。単なるカレー粉だと思っていたのだが、よく見ると各種スパイスにくわえ小麦粉も含まれているのだ。要するに、スープにこれを加えればそのままカレーになるという代物だったのだ。それを知らず事前に小麦粉を炒めていたので小麦粉がかぶり、きわめて粘性に富んだカレーになってしまった。もっとも、ナンにつけて食べるにはどろどろ加減がちょうどよい。味はかなり甘口。ミルクとチャツネとピーナツでマイルドになっている。
 ちなみにホヤとカレーというと、古谷三敏の「寄席芸人伝」にあったエピソードを思い出す。傍若無人にギャグを言いまくって客を爆笑させるのだが、寄席の雰囲気を崩してしまってまわりの芸人に迷惑をかける落語家を、先輩の落語家が料理屋に呼ぶ。きゅうりもみ、鯉のあらい、ホヤの酢の物と出てきた最後にカレーが出てきて、せっかくの日本料理の雰囲気が台無しになる。「そのカレーが今のあんただよ」と諭す先輩。「寄席ってのはこの日本料理と同じだ。前座、二つ目、色物、真打ち。ぜんぶのハーモニーがなきゃならない」これに反省した落語家は、ふたたびまっとうな落語道を歩むことを決意したのでした。
 というわけでさすがの私もホヤとカレーを一緒に食べてはいません。夕方にビールでカレー。夜に日本酒でホヤ。これなら寄席も大丈夫。


7月1日(月)
 サッカーのワールドカップ期間中も数多くのたわけた番組が放送されましたが、一夜明けた今日も、バカな選手にバカなアナウンサーがバカなことを聞くという趣向の番組が各局で続々と放送されておる。なかなかいいぞ。


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