くだらな日記(2002年6月)


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6月30日(日)
 ワールドカップ騒動の蔭でひっそりと行われていたのは阪神の転落だけではなかったようで。
 愛知万博って強行されるのですね。新聞の片隅で開催がひっそりと告知されていました。ちーとも知らなかったよ愛知県。末広マキ子が万博反対を訴えて当選し、万博推進派に寝返って落選したんだから、とうに民意は決定済みだと思っていたのですか、そうですか民意を無視して開催するのですか愛知県。だいじょうぶですか愛知県。また名古屋が世界の笑い者になる覚悟はあるのですか愛知県。みっともないことはしないでよ愛知県。


6月29日(土)
 そういえば清末の太平天国の乱もキリスト教徒の洪秀全によってひきおこされた千年王国的反乱でした。
 しかし、混乱した社会のなか、神に祝福された理想社会がそのうちやってくるという信仰を人々が信じはじめることは、キリスト教に限らず、かなり人類社会に普遍的な現象なのかもしれません。
 日本でも平安末の乱世で弥勒信仰がありました。中国でも清より前では五斗米道とか白蓮教とかが千年王国的反乱をおこしました。パレスチナでいまやっているジハードとやらも千年王国的といえるかもしれません。インカ帝国ではケツアルコアトルがまたやってくるという千年王国的信仰をスペイン人に逆用されて帝国がほろびてしまいました。ソ連で言っていた共産主義社会の実現というのも一種の千年王国といえるかもしれません。
 千年王国信仰というのもうさんくさいですが、それよりもさらにうさんくさいのがアメリカとイスラエルです。千年王国信仰が「神に祝福された理想社会が、近い将来に実現する」というのに対し、アメリカとイスラエルは、「今あるこの国こそが、神に祝福された理想社会なのだ」と信じこんでいるのですから。うさんくさいというかやっかいです。自国への信仰に茶々入れる奴はたちまち叩きつぶされますし。今回のアメリカの違憲判決のように。


6月28日(金)
 古本屋でジェイムス・ムーニー「ゴースト・ダンス」(紀伊国屋文化人類学叢書)を見つけ、喜び勇んで買う。なにしろこの本は数年来探し続けていたのだ。
 ときは明治維新前後、ところは北アメリカ。そのころアメリカ先住民、いわゆるインディアンの社会は、白人の迫害により崩壊の危機に瀕していた。そのときどこからともなく、次のような風説がインディアンの間で語られるようになった。「救世主キリストは、やがてインディアンの前にふたたび姿を現す。そのときすべての白人は血へどを吐いて死に、いなくなったバッファローは大群を引き連れて戻り、すべての山野は豊穣なる実りに満たされるであろう。踊れ。救世主の再来を喜んで踊れ」
 いわゆる千年王国といわれるこの宗教運動は、キリスト教と白人にはじめて接した社会で普遍的に起きる運動である。メラネシアやニューギニアでは今世紀初頭あたりに「カーゴカルト」という、やがて白人はこの地を去り、どこからかやってくる巨船が、白人に奪われた富を先住民に返してくれる、という信仰が蔓延した。同じ叢書の「千年王国と未開社会」(ピーター・ワースレイ)にこの現象は詳しい。
 千年王国運動に私が興味を持つのはほかでもない。水木しげるの「悪魔くん」はもちろんのこと、敬愛してやまないアニメ「魔法のプリンセスミンキーモモ」のテーマがまさに千年王国を取り扱っているからだ。ミンキーモモで語られる、「人間になったモモが成人になったとき、フェナリナーサはふたたび地球と接する。そして、地球の人々が抱いていた夢や希望が現実のものになる」という未来図はまさに典型的な千年王国思想である。そしてこれこそが、ミンキーモモをそれ以降の凡百の魔女っ子アニメと区別する分水嶺であるのだ。


6月27日(木)
 阪神タイガース弁当を食す。
 サンクスというコンビニで売っている弁当なのですが、これが呪われている。以前はワールドカップをあてこんでフランス弁当というのを売り出したそうなのですが、ご存じの通りまさかの予選敗退。この阪神タイガース弁当も期間限定で六月中旬から七月一日までの販売らしいのですが、この期間中に阪神は首位からいっきに四位へと転落(予定)。いや、なかなかの呪われっぷりです。
 外見はこんな感じ。ゴーゴーゴーで555円という洒落らしいのですが、五位へゴーゴーという気もしないではない。ふたをあけてみるとこんな感じ
 ご飯に海苔の佃煮で阪神のHTマークを描き、まわりを玉子と青菜のふりかけであしらってグラウンドの緑と阪神のチームカラー黄色を出す。そこまではわかります。そこからがわからない。たしか前の阪神弁当は、ライバル五球団を象徴するおかずがあって、五球団を食う、という定番があったらしいのですが、今回はどうなのでしょうか。
 エビフライは名古屋=中日、これは問題なし。ワンタンのカレー風味は、中華とカレー=中華街とカレー博物館=横浜という寓意なのでしょうか。広島は……鮭=魚類=鯉=カープという、かなり苦しいこじつけをしないと。そうしたところでジャイアンツとスワローズを象徴しそうなおかずはどこにもありません。さてはこの二球団を追うのは既に諦めたのか?
 そして残りのおかずとなると……桜漬けは「サクラサク」、一口カツは「勝つ」という定番だからわかるとしても、おでん、マカロニサラダ、牛カルビ焼き肉、タコ入りかき揚げはいったい何の象徴なのですか?ええい、わからないなら俺が定義してやる。そこへなおれ。
 まずおでんは「打てん」の駄洒落だ。チクワは穴だらけの守備を象徴し、コンニャクは星野監督の前でぶるぶる震えるだけのヘタレ選手どもを象徴している。そしてガンモドキはコピー食品の元祖。つまり一見プロの選手に見えるが、じつは似て非なるプロ選手、プロを名乗る資格のない阪神の選手を象徴しているのだ。
 そしてマカロニは螺旋状にひねってある。これはうねり打法の象徴だ。そしてマカロニといえばマカロニウエスタン。つまり濱中選手はそのうちウエスタンリーグに落ちますよという予言なのだ。
 さらにタコ入りかき揚げは、むろん四タコポップフライ。阪神のクリンアップを象徴している。牛カルビはバラ肉、つまり、チームはバラバラだと言いたいわけなのだ。ついでにいうと一口カツもひじょうに小さかった。これは「あまりにも少ない勝ち」という花言葉だ。
 というわけでこんな弁当を食べたら油が多くて気持ち悪くなりました。これはつまり、阪神なんか応援するんじゃなかった、という象徴なのですね。もうしないよ。


6月26日(水)
 豚タンの下ごしらえ。
 帰り道の肉屋で安く売っていたので買ってきた。牛タンはすっかり有名になって値段も高くなってしまったが、豚はまだ安い。二本で四百円。
 買ってはきたものの処理がよくわからない。牛タンと同じように、熱湯でゆがいて皮をむいてから二時間ほど下煮する、という説もあれば、そのまま皮もむかず焼いたり煮たりすればいいという説もある。とりあえずごろんとまな板の上に転がしてみたその形状が、人間そっくりというかなんというか、味蕾のぶつぶつとか、さすがの私でも食欲に影響しそうなので、皮はむくことに決定。
 熱湯でさっとゆがいて熱いうちに皮をむく、などと本には書いているが、どっこいそう簡単に剥けない。しばらく悪戦苦闘しているうちに気がついたのだが、剥く、というよりも爪で引っ掻いて垢をかき落とす、という感じでやればいいようだ。しかしこの作業、なまあったかい舌の感触といい弾力といい、やっぱり人間そっくりというかなんというか、形状と感触を実感しつつ、これって猟奇的にいうとどういう作業にあたるのだろうか、などと考えるとやはり食欲に影響するので、そそくさと済ます。掻き落とせない垢、じゃない皮は包丁で適当にこそぐ。
 一本はそのまま一時間ほど下煮して、明日タンシチューでも作ることにして、もう一本はそのまま薄切りにしてタン塩に。フライパンで焼いて塩とレモン汁だけで食べたが、臭みもなくけっこううまかった。こういうときは昔の姿を想像せずに食べるのがコツ。
 それにしても奥さん、まだ皮を剥かない豚の舌を茹でてしばらくおき、なまあったかくなったところで寝ている旦那のほっぺたでもそっとなででやりなさいな。たいがいの旦那は悲鳴をあげますぞ。リアリズム。旦那がサッカーばっかり行って欲求不満が溜まっている奥様、どうかひとつ。


6月25日(火)
 いやぁよく効いた。
 「これ、よく眠れるよ」といってもらった錠剤一錠。月曜日の晩、たしか十一時頃飲んだらてきめんに寝ました。途中、電話で叩き起こされたりしても引きずり込まれるようにまた寝てしまう。けっきょく目が覚めたのは火曜日の晩の十二時過ぎ。二十五時間寝ていたわけだ。すごいぞ錠剤。すごいぞこんなに効くオレの身体。

 おとついの日記で漱石が味音痴のような印象を与えたとすれば謝ります。夏目漱石という人は味がわからない人というより、生涯幼児的味覚に執着した人なのだと思います。英国でビスケットばかり食っていたのは、たぶんビスケットが好きだったからでしょう。日本に帰ってもジャムだとかアイスクリームだとかピーナッツを砂糖で固めたものだとか蕎麦饅頭だとかざぼんの砂糖漬けだとか笹飴だとか甘い菓子類を好んで食っていたそうです。砂糖ピーナッツなどは食べ過ぎるので夫人が隠しておくくらいだったそうです。それから蕎麦も好きでした。蕎麦は通みたいな印象がありますが、もともと蕎麦、うどん、ラーメン、スパゲティといった麺類は子供の好むものです。そういえば漱石の弟子でやはり幼児的感覚を死ぬまで持ちつづけた内田百間(本当はもんがまえに月)も、昼食にずっと英字ビスケットか蕎麦を食っていたそうです。麺類と幼児的感覚には掘り下げるべきものがあるような気がします。某ろりぷにの人もうどんが好きですし。


6月23日(日)
 必要あって夏目漱石「坊っちゃん」を再購入。しかし旧仮名遣いでなかったので、けっきょくあまり役に立たなかった。
 夏目漱石といえば江戸っ子で英国留学したので、うまいものを食べることがほとんどできなかった。だから松山に行っても蕎麦や団子みたいなものばかり食べて、瀬戸内の魚の美味さは「鮪みたいな分厚いの」などとわけのわからない片づけかたをしている。分厚くても淡泊なのがいいところなのに。蒲鉾は「どす黒くて竹輪の出来損ない」と書いている。漂白剤でぼろぼろになった東京の蒲鉾しか頭になくて、魚本来の味を出した瀬戸内の蒲鉾のよさを知らない。まあ英国でビスケットばかり食って、日本に帰ってからはタカジアスターゼばかり食ってた人だからな。
 もっとも松山まで行って蕎麦ばっかり食べてうどんを食わないのには理由がある。ちょっと地方が違うが、いわゆる讃岐うどんが有名になるのは、昭和三十年代以降、製麺機が普及してうどんの生産が過剰気味になってからのことである。それまでは各家庭でうどんを打っては食うので、旅行者がそれを食う機会はなかった。むろん漱石も食えなかったろう。讃岐うどんは手打ちだとか利いた風なことを言う人が多いが、そもそもは機械製麺こそが讃岐うどんのキーワードなのだ。


6月22日(土)
 韓国のワールドカップ準決勝進出おめでとう。日本からなんやかや言う声があるようだが、負け惜しみはみっともない。


6月20日(木)
 サッカーについてはいろいろと悪口やら苦言やらを呈してきましたが感謝することもあります。ひとつはプロ野球の試合数が少なくなったこと。あれで阪神の堕ちるスピードがなんぼか弱まってくれました。例年のスケジュールならいまごろヤクルトと中日と広島に抜かれてあっという間に五位転落でしょう。もうひとつは宮本選手のマスク。笑いました。貧相なベイダー選手(プロレスリングNOAHと契約)みたいだ。怒ったらあれをむしり取るというパフォーマンスをやってほしかったなあ。そうすればトルコに勝ったんじゃないだろうか。

 職場の人にもらった電子レンジゆで卵作成器「タマゴフレンド」を試してみる。おお、ちゃんとゆで卵が作れる。鍋で茹でたときのように卵黄が偏ることもない。時間を守ればちゃんと半熟も温泉卵も作れる。
 どうもゆで卵作成器というと、かつて東芝が社運を賭けて開発したタマゴクッカーなるものを連想するのです。このタマゴクッカー(商品名うろおぼえ)、東芝技術陣の惜しみない努力により、電磁波やら回転数やらで卵黄を中央にとどめる工夫がなされ、タイマーとセンサーによって常温卵も冷蔵卵も特売卵も有精卵もタイマーセットの指定通りに固ゆで半熟温泉卵自由自在に作成するというすぐれものでした。ただ惜しむらくは、技術の精粋を集めすぎてしまったため、価格が一万円をはるかに超えてしまったこと。たかがゆで卵に万金を投じる酔狂な人はそうはおらず、この製品、あっという間に製造中止へと追い込まれたのでした。いまでもフリマの投げ売りやイヤな引き出物などで活躍しているかもしれません。電動かつおぶし削り器やホーム流し素麺器などと並んで。


6月17日(月)
 道頓堀にサッカーファンが飛び込んだそうですね。
 だからサッカーファンって奴はよう。
 道頓堀ダイブとカーネルサンダースは阪神ファンの持ちネタだから、てめえらは使うな、とはっきり言ってやらないと、あいつら今度はカーネルサンダースを投げ込むぜ。日本のサッカーファンって創意工夫というものがまるでないもんな。


6月15日(土)
 ほぼ一週間棒に振ってしまった。
 手ひどい夏風邪にやられ、そのうち治るだろうとたかをくくっていたら悪化する一方。木曜日には最大瞬間発熱を誇り、昏睡状態に陥るありさまとなってしまった。
 ずっと寝込んでいたため食い物がない。幸い、いまはコンビニ宅急便という便利なものがあるのでポカリスエットとサンドイッチを配達してもらい、ようやく露命をつないだ。つなぐ必要ないんだけどね。
 今晩、ようやくなんとか動けるようになったので、冷蔵庫の整理。食えるものが家にないのに反し、食えないものが冷蔵庫にたまってしまったので、それを捨てなければならない。五日前の水菜のおひたし、ピーマンのピリ辛炒めがあるのは、これは病気になる前に食うつもりだったものだからまあいいだろう。野菜庫に、芽を出したまま立ち腐れとなっているジャガイモの袋があることも許そう。しかし、冷蔵庫の奥から、たしか一月前に作って半分食べたままでジップロックに保管していた鳥はむが出てきたのはどういうことか。
 そもそも今回の風邪も痛んだものを食って体力を損ねたのが原因と思えなくもない。半月ほど前、冷凍庫の扉が半開きとなって冷凍食品がすべて融けてしまうという大惨事があった。そのときの薄切り肉を再冷凍して保管していたのだが、今週のはじめにそれをふたたび解凍して炒めて食おうとしたのだ。なんか肉が紫色して妙な臭いがするのでやばいかなと思ったが、まあ冷凍してたんだし、融けたといっても冷たい状態だったし、などと自分を納得させて料理を遂行したのだ。ところができあがった料理はあやしい香りを発している。無理をして食ってはみたが、なんとも気持ち悪く味も悪く臭いも最悪で、思わず吐いてしまった。私が主婦だったらつゆ知らぬ旦那に食わせてしまうところだが、さすがに料理人本人はごまかせない。あれで体力が削られたような気がする。みなさまもこの時期は食物を捨てる勇気を。


6月10日(月)
 そろそろ夏。カツオの旬はますます最盛期となり、スーパーでもずいぶんと安く売られるようになってきました。そこでカツオを使った簡単な料理をふたつ。
 まずはカツオの鼈甲漬け。さくで売っている刺身用のカツオをおおまかにぶつ切り(つけこむのに便利なように、四分割くらい)にして、砂糖醤油に一晩ほどつけこむ。一晩たったら取り出して薄切りにし、からし醤油で食べる。そんだけ。簡単だがけっこううまい。これは子母沢寛「味覚極楽」(中公文庫)に載っていた、永見徳太郎氏の語る長崎料理のうけうり。
 次はカツオの生節。さくどりしたカツオにざっと塩をして蒸す。蒸し器があればよいが、なければ深い鍋にうすく水を張り、鍋の真ん中に茶碗をさかさにして、その上に皿を置き、カツオを載せて蓋をして火にかければよい。蒸す時間はさくの大きさにもよるが、強火でだいたい十分から十五分。蒸しあがったら、ザルに載せるか割り箸で井桁を作った上にカツオを載せ、風通しの良いところで二時間ほど表面を乾かす。切ってみてまわりは火が通って灰色に、真ん中は半生状態でピンクのままになっていれば成功。しっとりして風味のある生節が食べられます。これは東海林さだおのうけうり。スモーキングが好きな人は、蒸す時間を五分ほど少なくして、風乾のかわりに温燻をすれば、生臭さが消えて香ばしい生節になります。


6月9日(日)
 いまさら小泉内閣が出した有事法案や福田官房長官の核兵器歓迎発言や安倍官房副長官の核兵器合憲論に驚いたり怒ったりしてもなあ。三人とも自民党の元福田派じゃないか。福田派といえば中華人民共和国の存在すら認めないごりごりのド右翼であることは三十年前からわかっていることだ。しかも福田と安倍は父親が派閥領袖だったお坊ちゃんだ。小泉だって三世政治家のお坊ちゃんだ。いってみれば世間知らずの純粋培養右翼だ。右翼でも選挙区の動向が気になるような叩き上げは発言に慎重だが、ああいうお坊ちゃん右翼がああいうことを言うのはあたりまえだろう。ついでに言うと、福田官房長官を激励した石原都知事は、その福田派にも入れてもらえなかったみそっかす右翼。みそっかすだから根拠のないいいかげんな発言でデマゴーグするしか能がない。

 きょうはタイソンが久々に世界タイトルマッチに挑戦する。楽しみなのだが、残念ながらきょうは遊びに出かけるので見ることができない。ビデオ録画しようにもうちのビデオはずっと壊れている。とほほ。タイソン対ルイス、いい試合になりそうなんだがなあ。

 きょうは国立の駅前にある札幌スープカレーの店に行ってきた。札幌ではいま、ラーメンよりも豚丼よりもキャバクラよりも、スープカレーがブームなのだそうだ。ラムカリーを頼むと、皿にサフランライスっぽいご飯と、丼に大盛りのカレー。ラム肉のぶつ切りやニンジン、ピーマンが丸のままごろごろしている、たしかにスープのようなさらさらのカレー。普通のカレーだとカレーをライスにかけて食するのだが、スープカレーの場合はライスをカレースープにひたして食する。その味はなんというか、数十種類のスパイスが利いていて玄妙にして美味、食べるほどに美味の食域が深まるといった感じの美味しさ。なんというかえもいわれぬ馥郁たる美味でございました。辛さもいわゆる辛カレーの速攻で効く唐辛子そのものの辛さではなく、薬膳を使った、じわりとボディブローのように効いてくる辛さ。胃に優しい辛さ。ううむ、これはいい。札幌スープカレーを食わずしてカレーを語ることなかれ。


6月5日(水)
 サッカーのワールドカップでアメリカが強豪ポルトガルに勝った、という話を聞いて、「またポルトガルの選手を4人ほどいわれのないレッドカードで退場させて勝ったな」と反射的に思ってしまいました。どうやら今回は、ソルトレークのアポロ選手のようなインチキではなく、まっとうに勝ったらしいです。どうも最近アメリカの勝利というと眉に唾をつける習慣がついてしまった。太平洋戦争も、実は日本が勝っていたんじゃないだろうか、とか。

 しかし稲本のファールってそんなに論議を呼んでいるのか? あれは「そらファールだよなあ」というプレイに見えたのだが。

 ところで世間一般に広く信じられていることに「大便と小便を同時にすることはできない」というものがある。私の体験からすると、これは一部正しく、一部は正しくない。堅い大便の場合は、それを出しているとき同時に小便をすることはできないようだ。おそらく大便によって尿道が圧迫されているのが原因ではないだろうか。しかし軟便の場合は、小便と同時排出が可能である。
 この感覚は何に近いのかとつらつら考えてみたのだが、大きなお兄さん向けの本(大きなお姉さん向けの本の場合もある)によく登場する、女性の前の肉穴と後ろの肉穴にふたりの男性の肉棒が侵入する、という事態がこれに近いのではないか。「はぅ、あぁあたしの薄い肉壁をへだててふたつの肉棒がこすれているぅぅぅ。気持ちいぃぃぃ」という、よくある事態ですね。
 本当にこのふたつの感覚が近いのかどうなのか、男性の場合は想像することしかできないのでよくわからない。かといって、女性は「このふたつの感覚は近いですか?」などという質問に答えてくれるとは思えない。というわけでやはり、こういう粘膜系の疑問は迷宮入りするしかないのでしょうね。


6月4日(火)
 ここんとこむし暑いので涼しげな料理を、ということでキュウリもみと水菜の一夜漬け。ああ、よく冷やした生酒がよくすすむ。もうサッカーなんてどうでもいいや。

 とはいったものの。日本はホイミスライムだし試合を見ててぜんぜん面白くないし、さっさと連敗して決勝トーナメントから姿を消してしまえ、と思っていたのだが、ちょっと気持ちが変わった。ベルギー戦のような取ったり取られたりの試合をやってくれるなら、世界のサッカーの中で存在を許可してもいいかな、と。まあ、むろんベルギーと日本のどちらが決勝トーナメントに進出しても、しょせんは噛ませ犬確実ですが。どうせならいさぎよく負けちまえ、と思ったのも真実ですが。横パスの危険性を解説の人は主張していたが、中途半端なクリアはもっと怖いと思う。その怖いプレイをしているのが日本とベルギーだ。世界レベルでは負けること必至。ま、韓国が決勝トーナメントに行くなら、それで義理は果たせるから日本はどうでもいいのではないか。


6月3日(月)
 テレビ東京でカレーの特集をするので見てしまったのだが、なんかガルシニアとかいう柑橘類の粉末にダイエット効果があるというのでえらく持ち上げていたのですが。
 ガルシニアにダイエット効果があるというのは広く信じられていて、ダイエットサプリメントにもよく混ぜられているのですが、危険です。ガルシニアの過剰摂取により生殖機能が萎縮した、という動物実験のデータが出ています。原因は不明ですが。ちなみにダイエット効果も実験によると認められなかった、とのことです。
 むろん、ガルシニアで痩せなかったのみならず子孫も残せなくなったからといって、テレビ東京は責任を取ってはくれませんよ。取るもんか。
 カレー食って痩せるというほど世の中は甘くない、ということか。


6月2日(日)
 N間口さんと霊界のヒエラルキーについて論争する。
「ルーテーズもワフーマクダニエルもデービーボーイスミスもジョージゴーディエンコも荒井さんも死んじゃったし、霊界ではこれからプロレスが盛んになりますね」
「いや、荒井さんは自殺だから天国に行けないだろ。もっと暗いところへ」
「暗いところでマイクフォンエリックやドンイーグルを集めて興行しているのかなあ」
「あとあれだな。ルーテーズが霊界に行ってもまだグリーンボーイ。霊界ではいまだにガス灯プロレスで、メインはハッケンシュミット対コンデコマ」
「とすると落語でも、小さんが死んでも志ん朝が死んでも……」
「もちろん前座。松鶴や春団児でも二つ目。だいたい霊界に行くと小さんの初代や二代目がいるので、小さんを名乗れない。いまだに霊界落語会のボスは円朝で、出し物は牡丹灯籠」
「霊界にはむいてないネタだなあ、とか色川武大がぼやくんですな」
「それにあきたらない新作派が新しい団体をつくる。ボスは歌笑。円丈と三枝はまだこないかな、と待っている」
「枝雀はひとり暗いところでぶつぶつと練習してる」
「霊界少年マガジンとかも凄いでしょうね」
「表紙が北斎、裏表紙が暁斎。グラビアは堀江しのぶと岡田有紀子」
「岡田有紀子は暗いところですよ」
「巻頭カラーは毎回田川水泡。巻末は福地泡介と園山俊二が隔週交代。手塚治虫なんかペイペイの新人で、持ち込みしてはかがみあきらに『こんな雑なペンタッチじゃダメだ!』と怒られてる」
「音楽界も凄いだろうなあ」
「音楽と文学だけ例外的に、暗いところの方が元気がいい。『暗いところ新潮』は三島由紀夫、川端康成、太宰治、芥川龍之介のビッグ4執筆陣。たまにシュテファン・ツワイクやヘミングウェイの翻訳が載る。『ザ・暗いところベストテン』では、尾崎豊とヒデとフランク永井が熾烈なトップ1争い。それにアイドルチャート一位の岡田有紀子が絡む」
「すると政界は」
「むろん田中角栄なんかパシリで、伊藤博文に『おい新潟の、パン買ってこい!』なんて言われている。竹下や金丸なんか政治家としてすら認められない。吉田茂がかろうじてヒラ大臣。政局は伊藤派と山県派、あと原グループで動いている」
「暗いところで近衛文麿、東条英機、中川一郎あたりが『暗いところ新党』を旗揚げ、スローガンは『霊界浄化、明るく楽しい霊界に』」
「暗いところにいる奴に言われたくないなあ」

 などといって呑んだ翌朝、ぼんやりと起きてまったりとした朝を過ごし、昼からサッカーでも見るか、とまったりビールを飲み始めたころ、電話。そうか、きょうは男の料理教室の日だったのだ。三ヶ月も前の話だからすっかり忘れていました。すんません、スケジュールとか予定表と無縁なその日暮らしの生活を送っているので。あわてて駆けつけたころには、半分くらい料理が進んでいた。鯛そうめん、ナスとニシンの煮付け、鶏ざく、山芋の冷やし鉢、豆かんなど美味しくいただく。作る方は、豆かんを半分ほど手伝っただけ。山芋の冷やし鉢はすごいよ。何をどうやって作ったか、食べてもちょっと分からないくらい玄妙な味。山芋とだしと生クリームと寒天のハーモニーに、海老と鶏の具がアクセントをつけ、葛のあんがとろりと絡む。

 たしか昔、学生の制服坊主頭の廃止存続論争があったころ、「欧米では坊主頭は囚人しかしていない。日本の学生が海外旅行をしたら、囚人と間違えられる」という説があったと思うのですが、あれどうなったのでしょうか。あれが正しいとすると、サッカーのイングランド代表は半分くらい囚人ということでよろしいのでしょうか。サポーターは全部囚人。中には、レクター博士のようなペイントをしている奴もいたし。なるほど、それで恐れられているのか。


6月1日(土)
 私のようなサッカー素人でもワールドカップを見ていて楽しいのは、ワールドカップがいわばサッカー内異種格闘技戦のようなものだからなのだろう。ブンデスリーガとかスペインリーグの試合は技術的に高度ではあるが、同じようなテクニックを身につけた同士のせめぎあいのような感じで、素人にはその微妙な駆け引きがわかりにくい。野球でいえばセリーグの公式戦、プロレスでいえばノアの試合のようなものだ。それに対して、ワールドカップは異なる哲学を持つチームのぶつかりあい。野球でいえば日本シリーズ、プロレスでいえばPRIDEの試合のようなものか。
 その中で日本の地位はどうかというと、まあ強豪の練習台というかかませ犬のようなものではないか。全体的にバランスがとれていて、しかも攻撃力がやや低く、守備力がやや高い。世界一を目指すチームが真剣勝負の前にコンディションのチェックをするには理想的なチームではないか。
 ドラゴンクエスト7のモンスターにたとえれば、フランスはペイルライダー、ブラジルはビッグスロース、スペインはあくま神官。セネガルはバーサーカー、ドイツはダゴンといったところか。そうすると日本はホイミスライム。守備力と回復力はそこそこだが、攻撃力は低く、かいしんの一撃は絶対に出さない。前回大会のときはスライムベスだったことを考えると長足の進歩だが、いまいち。もうすこし成長してベホマスライムになってくれれば世界のサッカーの中でもそれなりの存在感を示すことができるのだが、なにせホイミスライム。


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