ダンゴ三兄弟の謎を解く

 ダンゴ三兄弟というものが流行っているらしい。

 と、それだけの情報である。
 果たしてそれはアニメ?歌?ドラマ?
 それは人間ですか?動物ですか?植物ですか?
 それは身の毛がよだちますか?恐ろしいですか?美しいですか?
 と、ナムコが誇る育成ゲーム「子育て物語マイエンジェル」めいたイエスノークイズをやってしまいそうなくらいあやふやな情報なのだ。余談だが、いくら得意でも「身の毛がよだつ問題」だけは選ばぬがいい。おたく度ばかり上昇する。ところで、余談と書けばなに書いてもいいと思っているらしいが、それは止した方がいいぞ。

 それよりもダンゴ三兄弟だ。まったくといっていいくらい情報量のない状態だが、ここから妄想と捏造で「わたしのダンゴ三兄弟」なるものを作っていくのも駄文書きらしいのではないか、と考えたわけだ。要するにネタ切れ。

 まず、それはどのくらい流行っているものなのか。ダッコちゃんくらい流行っているのか。フリスビーくらい流行っているのか。シーモンキーくらい流行っているのか。いかん、また例が古い。アガリクスくらい流行っているのか。フェレットくらい流行っているのか。いかん、中途半端に新しくて、かえって分かり難くなってしまった。ここはとりあえず、にゃんまげくらい流行っている、というところで手を打とう。誰と打つんだよ。

 次はダンゴ三兄弟の実体だ。この言葉は「ダンゴ」という名詞、「三」という数詞、「兄弟」という名詞から構成されている。
 まず、「ダンゴ」だ。普通に考えると、「団子=米や蕎麦、キビなどの穀類を蒸して丸め、味を付けたもの」のカタカナ表記だ。いや、甘いぞ。ダンゴではない、考え方がだ。こんなありきたりな発想ではとても流行など起こせまい。流行を巻き起こすには、意表をつくことが必要なはずだ。ダンス音楽の「タンゴ」が若干訛ったのかもしれないぞ。東北の神武たちならぬ、東北のタンゴだ。ひょっとしたら渋滞で有名な「談合坂」の略語かもしれない。暴走族の隠語だ。「ガメラ4」で登場する深海怪獣の名前かも。身体中にチューブワームが張り付いているので剃刀も通らない硬い皮膚だ。怪獣としては弱い気もするが、気のせいだ。チューブワームが海底火山のイオウを分解し、ひとつの生態系ができているので、酸素も餌もなくても生きられるのだ。特技はイオウを使って温泉玉子だ。いやいや、あるいはアルゼンチンのノーベル文学賞候補の文豪かもしれぬぞ。国際ペンクラブの副会長もやっている。大統領に立候補したが、日系人の富豪に負けた。日本通で、恋川春町と三島由紀夫をスペイン語訳したこともある。なぜか日本の作家はみなハラキリで自殺すると信じ込んでいる。そういえばdangerousを「ダンゴラス」と発音した同級生がいたぞ。まあ、私もbusyを「ブッシイ」と言ったのでおあいこだが。危険か。危険なのか。私の発音も、濁音と半濁音を間違えるときわめて危険だ。

 「ダンゴ三兄弟」というからには、上記のいずれかのダンゴが三兄弟なのか。白団子よもぎ団子小豆団子の三色団子かな。それとも「魔法使いサリー」のソラマメみたいな同じ顔の三兄弟(トン平チン平カン太だったかな?)がダンゴを持って走っているのか。ちょっと「おそ松くん」のチビ太が入ってるぞ。いやいや、そこが畜生のあさましさ。「三」という数詞が「兄弟」にかかるとは限らないのだぞ。「三つのダンゴを持つ兄弟」かもしれぬ。007みたいだし。かっこいいぞ。きっとダンゴを喰った後で串を吹いて敵を倒すのだ。米粒がこびりついた串を眉間に刺して倒れる悪人。這いのぼる蟻。

 ちょっと待て、「三」が「ミ」の転記ミスという可能性はないか?つまり、「ダンゴミ兄弟」だ。とすると、「ダンゴ」について思いめぐらせたのは全くの無駄だったのか。「ダンゴミ」について考えなければならぬ。「ダンゴミ」とはなんぞや。「醍醐味」に似ているがそれの発音ミスか。混雑している有様を「ちょい混み」「むちゃ混み」「ダン混み」と三段階に表現しているのか。その場合、ダンって何だ。ウルトラセブンで押し合いへし合い、なのか。

 あ、今思いついたのだが、古典落語で「どぜう汁」を「とせうけ」と読む噺があるよな。「ダンゴ汁」の「十」が何かの加減で失われたという仮説はどうだ。失われた十文字だ。水底の歌だ。梅原猛が喜ぶぞ。失われた十支族はユダヤ人だ。日本人だったりモルモン教徒だったりもするぞ。聞いて驚くな、天狗だったりもするのだ。本人がなりたいってんだからいいのだ。とりわけ天狗にはなりやすい。お前もおなり。ドラえもんではスペインの船乗りだったがあれは嘘だ。私と藤子不二雄、どっちを信じる。しかもあいつはAだぞ。酒も麻雀もやらず、品行方正で先に死んだ方だ。相棒はバーをハシゴに連夜の徹マンでまだ生きておるぞ。閑話休題。また脱線かよ。こう書けば無茶苦茶書いても許されると思っているのは甘いと思うぞ。

 ともあれ(またこう書けば前後の繋がりを無視しても許されると思っておるな。仏の顔も三度まで。もはや許せぬ、そこへなおれ!)、その仮説を立てればすべての現象が説明できるぞ。つまりだ、東北出身で踊りの上手な雲助兄弟が江戸へ向けて旅立ったのだ。もちろん本当の兄弟ではない。ホモ義兄弟だ。キャスティングは、吉田戦車描くところのマリオとルイジだ。談合坂まで来たが腹が減っていたので、茶店に入ったのだ。そこは「談合坂の醍醐味」をキャッチフレーズにとても繁盛していて、混みあっていたのだ。兄弟はようやく腰掛けて注文する。ところが文盲で漢字が読めなかった兄貴は「ダンゴ汁」を「だんごけ」と読んでしまったのだ。満座の前で笑われた兄弟は逆上する。もともと十人力の剛勇だ。それに凶状持ちの無法者だ。鬼のような形相ですっくと立ち上がるや、椅子を振り上げてぶんぶん振り回す。いろりに掛けられた馬鹿でかい鍋を頭の上まで差し上げ、えいっとばかりに煮えたぎる団子汁もろとも投げ飛ばす。店の中は阿鼻叫喚。とても危険だ。ダンゴラスだ。茶店の娘はうろたえ、逃げ惑いながらも、涙ながらに店を救ってくれとウルトラセブンに祈る。しかしダン隊員はウルトラアイをまたもや色仕掛けで奪われており、変身できない。じつは茶店の娘が盗んだのだ。マゼラン星人だったのだ。ええい、子娘、余計なことをしおって。やむなくダンは、カプセル怪獣ダンゴを送り込む。……とまあ、このような大河歴史SF義理人情食味やおい耽美小説を、アルゼンチンの国民的文豪、日本で言えば早乙女貢クラスの文豪、ホセ・オルテガ・ムーニョス・ダンゴが書き下ろしたのだ。それがにゃんまげと同じくらいのベストセラーになったのだ。そしてノーベル賞を取ったのだ。

 こらこら、ちょっと待て。茶店の娘はどこから出てきたんだ。勝手に出すなよ。
 だからな、後でよく調べてみたら、その娘の名はダン子だった。


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