ヤニキアン・ジョーク

 金本監督がぼやいた。
「またサンスポの越後屋がオレの悪口書いてるよ」
 矢野二軍監督が慰めた。
「気にするな、あいつに自分の意見なんかないんだ。いつもみんなが言ってることを繰り返すしか能がないんだから」


 片岡コーチが言った。
「最近頭が痛むんで、病院で頭をCTスキャンしてもらったんだが、なにも見つからなかったよ」
 香田コーチは言った。
「当たり前のことだな」


 金本監督が夫人と散歩していると、黒い背広、黒いサングラスで小指の無い男が金本に「やあ、ひさしぶり」と挨拶して去っていった。
 夫人は尋ねた。「あの人、誰?」
 金本は答えた。「ああ、仕事上のことで知り合った人だよ」
 夫人は言った。「あなたの仕事?それとも彼の仕事?」


 原口は念願の捕手復帰を果たし張り切っていた。
 第1試合。ホームランを含む3安打。しかし矢野二軍監督は言った。「まだまだ、足りないものがある」
 第2試合。投手をうまくリードして完封。盗塁も2つ刺した。でも矢野は言った。「まだ足りない」
 原口は矢野に直訴した。「ぼくのどこが足りないんでしょうか」
「信心が足りない」


 原口は試合中、ファウルボールが頭に直撃し昏倒。病院に運ばれた。
 しばらく後、病院のベッドで気がついた原口は、
「あれ、ここは天国かな?」
「いや」病室にいた矢野二軍監督は言った。
「俺がここにいるんだからな」


 中谷は20ホーマー打ったが、三塁に走者を置いて初球ポップフライや三振など、チャンスを潰すことが多かった。そこで金本監督は片岡コーチに中谷の打撃改造を命じた。
 半年後、片岡は意気揚々と報告した。
「中谷はもう、チャンスで打てない選手じゃありません」
「でかした」
「いつも打てない選手になりました」 


 完封勝利のメッセンジャーにノムさんがインタビューした。
「ポイントは7回のワンアウト満塁、坂本を迎えた場面やと思うんやが、あそこでゲッツーに抑えたのが大きかったな。あの場面、梅野のリードはどやった」
「梅野?さあ知らないな。オレが投げたのはカーブだったよ」


 谷本球団本部長は金本監督、矢野二軍監督と会って来年のことを話していた。
「矢野君には、来期は一軍のヘッドコーチになってもらう。金本君を支えて、次期監督としてふさわしい人物かどうか、じっくり見させていただく」
 そこへ揚塩球団社長がやってきて、あたふたと告げた。
「金本君、君には辞めてもらう。次期監督は矢野君、君にお願いしたい」
 これまでしていた話をすべてひっくり返された谷本は激怒した。
「それじゃわざわざここまで来た私がピエロじゃないですか! 矢野君だってこんな筋違いの話、受けるわけがない!」
 矢野は静かに答えた。
「一軍監督の話、お受けしましょう。谷本さん、これでわかったでしょう。私がどんな人物か」


 阪神はドラフト1位で近本選手を指名した。矢野監督のコメント。
 「近本くんはタイガース二軍と試合したことがあるから知っている。とてもいい選手だ」
 翌日、揚塩球団社長がとびこんできた。
「矢野君、近本選手は肩を壊して遠投50メートルがやっとというじゃないか! どうして、いい選手なんて言ったんだ!」
 矢野は答えた。
「彼がセンターだと、うちの選手がとってものびのびと走塁できました。うちの若手には本当にいい選手でした」


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