インドシナ・ジョーク

 インドシナの農業。
 タイ人が田植えをする。
 カンボジア人は稲が育つのを見てる。
 ラオス人は稲が伸びる音を聞いてる。
 ベトナム人は実った稲を盗みに来て、タイ人が掘った落とし穴に落ちる。


 インドシナの工業。
 タイ人がモノを作る。
 ラオス人が敷地と工業用水を提供する。
 ベトナム人が横流しする。
 カンボジア人がアンコールワットの前で観光客に売りつける。


 インドシナの観光資源。
 タイのワット・ポー。
 カンボジアのアンコールワット。
 ラオスのルアンパバーン。
 ベトナムのボッタクリ。


 インドシナの物乞い。
 タイ人は花束を売る。
 カンボジア人は絵はがきを売る。
 ラオス人は地雷を見せる。
 ベトナム人は経済協力を呼びかける。


 インドシナで物乞いをする理由。
 ベトナム人は対米戦争の傷痍軍人。
 カンボジア人はポルポトの犠牲者。
 ラオス人は地雷の被害者。
 タイ人はタクシン派。


 インドシナの風俗営業。
 タイの繁華街にゴーゴーバーを作る。
 ラオスから娘を連れてくる。
 カンボジアから下働きを傭う。
 ベトナムのポンビキが客引きをする。


 インドシナ人が困ったとき。
 タイ人は困ったら、国王に救いの手を乞う。
 ベトナム人は困ったら、ホーチミンだったらどうしたかを考える。
 カンボジア人は困ったら、ポルポトの時代よりはマシだと考える。
 ラオス人は困ったら、フランスにまた来てもらおうかと考える。


 インドシナ人の困ってること。
 タイのタクシン派。
 カンボジアのポルポト協力者の処遇。
 ラオスの学校建設。
 ベトナムの存在。


 インドシナ人が頭を悩ませること。
 カンボジア:元ポルポト派の処遇。
 タイ:元タクシン派の処遇。
 ベトナム:元南ベトナム国民の処遇。
 ラオス:元ちとせはどこに行った?


 インドシナの全盛期。
 カンボジアは13世紀のアンコール王朝。
 ラオスは15世紀のランサン王国。
 タイは現在。
 ベトナムは永遠に10年後。


 インドシナのボッタクリについて。
 タイ人は5倍にふっかけ、3倍で手を打つ。
 カンボジア人20倍にふっかけ、仕入れ値の半分まで値引きする。
 ラオス人はタイ人店主の言い値を伝えるだけ。
 ベトナム人は半額ともちかけ、贋物をつかませる。


 インドシナでうまいもの。
 タイのカオマンガイ。
 ベトナムの生春巻き。
 ラオスのビール。
 カンボジアのポルポト協力者の逃げ口上。


 インドシナの交通機関。
 タイの地下鉄。
 カンボジアのバス。
 ラオスの筏。
 ベトナムの戦車。


 インドシナで流行っている犯罪。
 ベトナムの汚職。
 タイのテロ。
 カンボジアの賄賂。
 ラオスの牛泥棒。


 インドシナ人が、それぞれの国の偉業について議論した。
 カンボジア人「なんといってもアンコールワットこそ、インドシナの偉業であり、インドシナの誇りだ」
 タイ人「過去のことより現在を見よう。わが国はいちども植民地になったことなく、現在に至るまで繁栄し続けている」
 ベトナム人「いやいや、あの超大国アメリカと戦争して勝利したわれわれこそ、現代史の偉業だ」
 ラオス人「いや、ラオスのほうが偉大だ。なにしろわれわれは、アメリカと戦争したわけでもないのに、アメリカに勝利したんだから」


 インドシナの領土観。
 カンボジア人「アンコールワット様式の寺院がある地域はカンボジア領」
 タイ人「タイの通商圏内はタイ領」
 ベトナム人「インドシナ人民が立ちあがった地域、また立ちあがるべき地域はベトナム領」
 ラオス人「ラオスってどこにあるの?」


 ベトナムのグエン・タン・ズン首相が外遊の途中、飛行機が故障して不時着した。
 窓から手を出してみた。拳銃で撃たれた。
「いて! ここはタイだぞ」
 しばらく飛んで、また不時着した。窓から手を出すと、石を投げられた。
「あいた! ここはカンボジアだな」
 しばらく飛んで、またまた不時着した。窓から手を出すと、キスされた。
「ふん、ラオスだな」
 またしばらく飛んで、またまたまた不時着。窓から手を出した。腕時計を盗まれた。
「ああ、やっと祖国に帰ったぞ」


 ひとりの華僑系ベトナム人共産主義者が、ベトナムから亡命しようとボートに乗っていたところを警察に捕らえられた。警察は党本部に連絡し、党幹部が男を取り調べることになった。
「グェン同志、おまえは理想的な共産主義者で、祖国解放の戦いでもりっぱに戦った古参の党員じゃないか。なぜ、いまさら亡命しようなんて気を起こしたんだ?」
「理由はふたつあります。第1に、もしベトナムの現政府が倒されるようなことがあったら、真っ先に命を狙われるのは、私のような華僑系住民です」
「しかし同志、それはありえないよ。わが政府は盤石だ。倒れることなどありえない」
「それが第2の理由なんです」


 バンコクでタクシン派の武装蜂起。バンコクから軍隊もかけつけ、軍勢はにらみあいになった。暴徒を説得しようと、司令官はメガホンを持ち出す。
「おまえたちは国王陛下への反乱分子となるのだぞ。タイ人ならただちに悔い改めて武装解除し、手を挙げて出てこい」
 暴徒側から怒鳴り返してきた。
「おれたちイサーン人は、どうすりゃいいんだ」


 日本から技術者がラオスの工業視察に訪れた。ラオス人はスプーン製造工場を見学させる。
「ここでは、ラオス内戦のとき、撃墜されたアメリカ製戦闘機の機体を加工して、スプーンを製造しています」
 日本人は感心して「なるほど、廃品利用か。エコロジカルな工業ですね。問題点はありませんか?」
「原料不足で困っています。アメリカに原料をまたよこすよう頼んではいるんですが」


 インドシナ人のあいだで、嘘つきコンクールが開催された。もっとも大きな嘘をついた国が優勝。
 タイ人「タイ製の兵器は世界一優秀だ。なにしろアメリカの最先端の技術と、アジアの器用さをもって開発しているからな」
 ベトナム人「ベトナム製の兵器が世界一優秀なのは、あの超大国アメリカに勝利したことからもあきらかである」
 ラオス人「ラオス製の兵器は世界一優秀である。ラオス製のライフルは、アメリカの戦闘機F14を撃墜するという偉業をなしとげた」
 カンボジア人「カンボジア製の兵器は……」
 タイ人、ベトナム人、ラオス人は目を丸くしてカンボジア人に「きみの勝ちだ」


 ビルマ人「俺はどうなるんだ?」


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