タイガース・ジョークよ永遠に

 阪神、ついに単独首位から陥落。岡田監督は悲しくて夜も寝られない。強力な睡眠薬を飲んで、やっと眠った。
 夢を見た。
 日本シリーズ開幕、巨人が快勝! ナベツネがただちに命令する。
「日本一の最大の功労者、岡田監督を、ただちに留任させよ!」


 巨人戦の結果に気をもんでいる岡田監督に、球団の広報が言った。
「いいニュースと悪いニュースがありますが、どちらから聞きます?」
「そやな、まず悪いニュースから聞こうか」
「巨人が優勝しました」
「ほなら、ええニュースは?」
「球団はこの大逆転失速優勝逸失を『岡田の悲劇』と呼ぶことにしたんで、あなたの名前は永遠に残りますよ」


 岡田阪神の宣伝。
 1年目。「われわれは勝利するであろう」
 2年目。「われわれは勝利した」
 3年目。「われわれは勝利しなければならぬ」
 4年目。「われわれは勝利を欲している」
 5年目。「われわれが敗北するなどということがあってはならぬ」


「必死のパッチは、いったい、どうなったんだい?」
「とっくに品切れだよ」


 先発に勝ち星がまったくつかず、リリーフに勝ち星がつくとしたら?
 野村的偏向である。
 先発に勝ち星がつき、リリーフにはホールドかセーブしかつかないとしたら?
 星野的偏向である。
 先発もリリーフも、勝ち星とはぜんぜん無縁になったら?
 阪神タイガースにおける正しい岡田路線である。


 岡田イズムと星野イズムの違いはなにか。
 岡田イズムでは、選手の活躍はすべて起用した監督の功績とされる。
 星野イズムでは、選手の活躍は選手の功績になるが、その選手をそこまで育てたのは星野である。


 野村元監督、星野前監督、岡田監督、木戸解説者の違いはなにか。
 野村は自分が信じたことを言った。
 星野は自分が言ったことを信じた。
 岡田は自分が言ったことを信じていない。
 木戸は自分が信じたことを言っていない。


 ここ数年の阪神の快進撃は、3人の監督の能力によりなしとげられた。
 野村元監督の洞察力とアイディアと問題提起。
 星野前監督の説得力とリーダーシップと実行力。
 岡田現監督の強靱な神経。


 大阪のとある小学校で、神様はどこから来たのか、生徒が議論していた。
 結論が出ないので、先生は、「ではみなさん、お家に帰ってお父さんに聞いてみましょう」とみなを帰した。
 翌朝、児童たちは意気揚々と登校して先生に告げた。
「神様は野村監督が見出して星野監督が育てたって、お父さんは言ってました」
「おやおや、岡田監督はなにもしなかったのかい?」
「岡田監督は神様をこき使ってるって言ってました」


 甲子園球場の前で、横浜ファン2人が会った。ひとりは頭と腕に包帯を巻き、顔がひどく腫れあがっていた。
「いったいどうしたんだ?」
「騒ぐなよ。ぼくはアンチ阪神の根も葉もないデマなんだ」


 甲子園球場のチケット売り場の前は、当日券を入手しに来た観客の長蛇の列。
 アナウンスが流れる。「アンチ岡田のお客さんには売らないから、並んでも無駄だよ」
 数十人の客が悲しげに行列から立ち去る。
 数時間後、やっと入場できた甲子園の試合が終わった。ひとりの男が言う。
「アンチ岡田め、また、うまいことやりやがった」


 阪神のコーチ同士の会話。
「和田コーチが辞めさせられるらしいぞ」
「え、なんだって。あんな立派な人間で選手にも人望があり、コーチングにも戦略眼も定評がある人が、なぜ……」
「だからクビになるんだよ」


 岡田監督が遠征先のホテルで、尿意をもよおした。トイレの場所が分からなかったので、ボーイに聞いた。
「ここからまっすぐ先の突き当たりを右に曲がると、左手にドアがあります。『Gentlemen』と書いてありますが、気にせずお入りになっても結構ですよ」


 広沢コーチに選手が相談した。
「ここんとこいい当たりが出なくて、打率がどんどん下がってます」
「当たりがよくなったらまたおいで。たちどころに直してあげよう」


 久保コーチに投手が相談した。
「疲れが溜まって、肩が張っているんです」
「そうか、じゃあ気分転換に、先発で投げてみるか」


 岡田監督は史上最高の名将である。
 名将と呼ばれた故仰木監督は、選手起用の妙から「仰木マジック」と呼ばれたが、岡田監督はそのマジックを8回も消滅させることに成功したのだから。


 岡田監督が短期決戦で勝利するのはいつの日か?
 金村が移籍後初勝利を挙げる日。


 阪神はなぜ、なかなか優勝しないのか?
 短期決戦にプライドを持つ岡田監督は、クライマックスシリーズの優勝アドバンテージ1勝などという、インチキな勝利を手に入れることを嫌うからである。


 横浜が阪神から勝ち星7つを受け取った。
 巨人に渡すために。


「岡田監督が13ゲーム差からの大逆転失墜に責任を感じて辞任したぞ」
「あっはっは! これは、今年一番のナイスなジョークだ」


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