落選確実選挙演説

 ただいまご紹介にあずかりました。
 さて、きょうは皆様の迷妄を解いてあげようと思います。
 選挙が近づくと、新聞やテレビはいつも、「棄権せず投票に行きましょう」「あなたの一票が政治を変える」などというキャンペーンをしていますよね。ばかばかしい。
 私は言いたい。棄権する奴はどんどん棄権しろ。投票なんかしてくれるな、と。
 棄権するような奴は、政治に無関心な人間か、馬鹿です。どっちにしろ、まともな投票なんかできません。
 浮動票だとか無党派層だとか立派そうな名前をつけていますが、要するに馬鹿の層です。馬鹿に投票させると、ろくなことになりません。
 いままでこういう馬鹿どもがたまに投票して、そして選んだのが東京の青島都知事です。大阪の横山ノック知事です。愛知の末広マキコです。自民党の大仁田厚です。社民党の田嶋陽子です。田嶋は今回も神奈川県知事選に出馬するそうじゃないですか。アホですか。どこまで選挙の予算を浪費させれば気がすむのでしょう。

 こういう馬鹿げた事態が起こった原因は何か。ただひとつです。馬鹿が立候補して、それに馬鹿が投票するからです。
 私はまず、選挙前に立候補者の資格審査を行うことを要求します。立候補する人間は、届け出の際に、過去五年間の政治活動履歴を提出することを義務づけます。これを審査して、政治家としてふさわしい活動を行ってきたと認められた者だけを立候補者として認めるのです。
 漫才ばかりやっていた人間とか、ただのプロレス馬鹿とか、ワイドショーで暴言だけ吐いていたような人間は、ここでシャットアウトされます。
 え、有名人でない人は、政治活動をしようにもできないではないか、とおっしゃるのですか。何を言います。いまの時代、新聞雑誌の投書欄もあればインターネットだってあります。自己の政治信条を述べる機会はどこにだってあります。それにボランティア活動だって政治活動の一部です。そんなこともできない人間に、政治家を目指す資格はありません。

 選ばれる馬鹿をまずシャットアウトして、次は選ぶ馬鹿の問題です。
 私は二十歳になれば誰でも有権者になるという、いまの制度に反対します。かといって、昔のように財産で制限するというわけではありません。
 いま有権者である人間は、五年に一度、有権者資格審査を受け、合格した者だけに投票権が与えられる、そんな制度を要求します。
 つまり投票を本気でする気があるのか、投票できるだけの知能を備えているのか、というテストですね。
 簡単なものでよろしい。いまの総理大臣は誰ですかとか、いまアメリカが戦争している相手はどこの国ですかとか、馬鹿か政治知識皆無でないかぎり答えられるような常識問題でよろしい。往復葉書で全国の有権者にそれを送り、返信で正解した人にだけ、投票用紙を送るようにすればいいのです。
 カンニングの問題ですか。それはいいではないですか。新聞雑誌で調べるにせよ、他人に聞くにせよ、それだけの努力をしたということは、じゅうぶん投票するだけの資格はあります。
 忙しくて返信できない? 甘えてはいけません。それっぽっちのことも忙しくてできないような奴は、どうせ選挙になっても忙しいとかいって投票に行きませんよ。そんな輩に選挙権を与える必要はない。

 これらの施策により、私は議員の半数削減、それにより議員歳費を半数に削減します。さらに有権者を半数削減することにより、投票率を実質いまの三分の二に削減し、よって選挙費用も半数削減いたします。
 これにより削減した経費を、国民年金や健康保険に投入し、健全な財政に立て直すことをお約束いたします。
 ご拝聴ありがとうございました。
 ……おい、誰もおらへんやんけ。


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