へるぷれ日記

1月4日(土)
 ヘルプレスというネットバトルゲームが流行しているそうなので、やってみようと決意。とりあえず他人のサイトの悪口を書き散らしてみたりする。

1月5日(日)
 まだ正月休みなのだからか、私の正論に屈したのか、だれも反撃してこない。

1月6日(月)
 アクセス解析してみたら、ページを読んだのは私だけだった。
 数少ない知人が電話して、そういうのはネットバトルゲームではないし、ましてやヘルプレスとは何の関係もないと教えてくれた。ついでに、あなたのは正論でもなんでもない。
 それならばヘルプレスはどうやってやるのか、と聞いてみた。知人はしばらく沈黙した後、まあいいでしょう、まずは鯖を手に入れなさい、と教えてくれた。

1月7日(火)
 魚市場で鯖を購入。外国の鯖でないといけないらしいので、ノルウェー産のを買う。1尾350円。
 まずは鱗をとって頭を落とし、腹を割いてみたら、なんかよくわからない白い虫がうようようようよ出てきた。無視してはらわたを捨て、三枚におろす。
 とりあえず昆布と一緒に酢で締めてシメサバにしてみた。美味。

1月8日(水)
 腹が痛い。

1月9日(木)
 

1月10日(金)
 

1月11日(土)
 

1月12日(日)
 どうも方向性が違ったらしい。やり直そう。やりなおせるさ。きっと。ふたりで。いまでも。これから。

 曾根崎や揃えた雪駄を履いていき
        虎玉

1月13日(月)
 ヘルプレスを始めるには、まずキャラクターの設定が必要となる。まず最初に、馬鹿で融通が利かぬ力まかせの戦士になるか、陰険で姑息で卑怯者のメイジになるかを決定し、それによってパラメータを配分する。戦士になるには強さ、頑丈さ、力に多く配分し、メイジになるには素早さ、賢さ、姑息さ、魔力に多く配分する。むろん賢い戦士を作ったり素直なメイジを作ってもいいが、それはヘンプ(変なプレイ。変態性愛のこと)に属する。
 次に職業を決める必要がある。おおまかにいって、ヘルプレスには以下の職業がある。

クロメイジ
 1.墨のような色のメイジ。2.濃紫・褐色・にび色などの、黒っぽい色のメイジ。3.日に焼けているメイジ。4.よごれている、きたないメイジ。5.悪い、不正である、公明でなく悪心があるメイジ。6.原爆被災者の悲惨なメイジ。7.有罪のメイジ。
シロメイジ
 その存在を確認されたことはない。
魔法戦士
 魔法が使える戦士。中途半端になりやすい。たまにアトランティスの末裔だったりする。
長芋検事
 長芋が使える検事。精力がつくし粘っこいので検挙率が上がる。まぐろの山かけなんかいいねえ。
フラン戦士
 腐乱した戦士。殺された呪いがこもっている。関ヶ原や壇ノ浦によく出没する。別名くさったしたい。
ジャイアン戦士
 歌いながらやってくるわがままな戦士。とても強い。「メイジの癖に生意気だぞ」などと理不尽なイチャモンをつけ、アイテムを取りあげる。妹もとても強いが、ヤワラちゃんに似ている。
グレソ戦士
 クールボー戦士とともに活躍するが監督と対立し退団。「タイラのいるベンチは監獄のようだった」という名言を残す。スマソ。
バックス戦士
 アリゾナ・ダイアモンドバックスの選手たち。ジョンソン・シリングの二枚看板を筆頭にものすごく強い。
パン屋
 create foodsという魔法でパンをつくり販売する。メイジはすぐお腹がすくから上得意であるらしい。明治屋のパンなのかどうかは知らない。ときどきcreate cakeといってケーキを食べる奴もいるが、よくギロチンで首を刈られる。駅前によくいるのはNOVAのパン屋。
鍛冶屋
 武器防具をつくるらしい。たぶんcreate armsなどと呪文をとなえるのだろう。「あらあら、腕がこんなにぞろぞろぞろ」「おやおや腕の毛もぞろぞろぞろぞろ」(ぞろぞろ)
鍛冶手伝い
 24歳。「まさかあの人が」と近所の人は口々に語る。
釣り師
 ヘルプレスのマップにある沼や川で魚を釣り販売する。ときに龍の末裔だったりする。しかし、あんなきたならしい川で釣れた魚がなぜ高価に販売されるのかわからない。ひょっとしたら廃水を垂れ流す企業からの口止め料かもしれない。たまに挑発的な言辞を吐くことがある。
炭鉱夫
 ヘルプレスのマップにあるダンジョンにもぐり、ツルハシで鉱石や宝石を掘り出す。忠臣蔵の時代からある由緒正しい職業。かぁちゃんのためなら塩治判官。ヨイトマケ。新幹線よりも速く弾丸もはねかえす。それはエイトマン。不精な青年の押入れに群生している。それはサルマタケ。プレイガールのリーダーで通称姐御。それはサワタマキ。アホネンに続くフィンランドジャンプ界の副将。それはハウタマキ。カウント20でマットに戻れず。それはリングアウトマケ。
従軍慰安婦
 お金はもらえる(おもに軍票で支給)が、後世になるといなかったことにされる。
アサシン
 つねに単独行動し、死ぬ直前にだけ恋人に本心を明かす。クククとしか笑ってはならない。
サムライ
 片手にピストル、心に花束、唇に火の酒、背中に人生を装備するとジョブチェンジできる。のち太る。

 とりあえずシロメイジになってみました。ケツメイシに似てるし。
 でも、ケツメイシって何?

 次にスタイルを決めなければならない。ヘルプレスでは職業同様、髪型や体型や皮膚色や性別も選択することができる。
 性別はむろん女性だな。これって……ネカマ?
 髪型は長髪のブロンド。瞳は紺碧の色。むろん皮膚は透きとおるように白いが、ひ弱ではない。女とはいえ頑健で疲れを知らない、大地に根ざした民族の姿。典型的アーリアン北方民族。
 これって……ネゲマ?

1月14日(火)
 とりあえずプレイをはじめてみよう。
 スタートしたら、いきなりバラックの建物の外に出現した。ここが初心者ゾーンらしい。
 それはいいとしてまだ装備品ゼロ。全裸である。これって野外露出プレイ?
 ああ、なんか男の人たちがにやにや笑いながら近づいてくるわ。いやっ、やめて、こないでっ。
 あああああああ。

 男たちが暴風のようにあたしの肉体をむさぼりつくして去っていったわ。
 ひどい、ひどい人たち。
 あたしの足のつけねから、血が流れている。
 きのう設定したとき、「処女」を選んだのがよくなかったのかしら。
 それともパンツの色に「スケスケ」と答えたのがよくなかったのかしら。
 そういえばあのとき、「乳頭の色は?」「いま着てるのはパジャマ?ネグリジェ?」とも聞いていたわね。
 鶴光だったのねあのひと。

1月15日(水)
 気を取り直して再度挑戦。今度はなけなしの金でぬののふくを装備したから大丈夫。
 農場へ行ったらスライムがいた。よし、戦うぞ。
「こんにちは」
 挨拶モードだった。戦いは礼に始まり礼に終わる。まるで柔道のように礼儀正しい格闘だ。
「じろじろ」
 偵察モードだった。まず敵を知りおのれを知れ。戦いの鉄則だ。
「うっふーん」
 パンツを脱いでどうするのだ。悩殺モードだったか。
「ちょいなちょいな」
 ああパンツを脱いだと思ったら、手ぬぐい頭にのっけて風呂に入っちまったよ。これが草津モードか。
 さあいよいよ戦闘モードだ。
「ごき」
 スライムの一撃でKOされてしまった。しまった相手は秒殺モードだったか。

1月16日(木)
 ヘルプレスでは戦闘だけでなく、他のプレイヤーとのコミュニケーションも大事な要素になる。
 日本人同士の場合は日本語で会話するが、それ以外の国の人間とは、基本的に英語で会話することになる。
 このときの表記法にも、ヘルプレス特有の癖がある。
 たとえば、Youをuと書くだけで済ます。これでキーボードのクリックがだいぶ短縮できる。
 ああ、向こうから外国の戦士がやってきた。
"Hi!"
"Hi"
"Do u have red potion?"
"Ys(Yesの略)"
"Gv me(Give meの略)"
"No"
"50G!"
"200G!"
"Ing od!(Ingo Oyadhiの略)"
"SOB!(Son of a bitchの略)"
"u bst!(You bastardの略)"
"Ku!!(Kill Youの略)"
"Yl Jp!!(Yellow Japの略)"
"Gdu!!(God dumn youの略)"
"foolish Bush!!(Saddam Hussein has been under a duty to disarm for more than a decade. Yet he has consistently and systematically violated that obligation and undermined U.N. inspections. And he only admitted to a massive biological weapons program after being confronted with the evidence.Now the U.N. Security Council and the United States have told Saddam Hussein, the game is over. Saddam Hussein will fully disarm himself of weapons of mass destruction, and if he does not, America will lead a coalition to disarm him.As the new inspections process proceeds, the United States will be making only one judgment: Has Saddam Hussein changed his behavior of the last 11 years and decided to cooperate willingly and comply completely, or has he not? Inspections will work only if Iraq complies fully and in good faith. Inspectors do not have the duty or the ability to uncover terrible weapons hidden in a vast country. The responsibility of inspectors is simply to confirm evidence of voluntary and total disarmament. Saddam Hussein has the responsibility to provide that evidence, as directed, and in full.The world expects more than Iraq's cooperation with inspectors. The world expects and requires Iraq's complete, willing and prompt disarmament. It is not enough for Iraq to merely open doors for inspectors. Compliance means bringing all requested information and evidence out into full view, to show that Iraq has abandoned the deceptions of the last decade. Any act of delay or defiance will prove that Saddam Hussein has not adopted the path of compliance, and has rejected the path of peace.Thus far we are not seeing the fundamental shift in practice and attitude that the world is demanding. Iraq's letters to the U.N. regarding inspections show that their attitude is grudging and conditional. And in recent days, Iraq has fired on American and British pilots enforcing the U.N.'s no-fly zone.Iraq is now required by the United Nations to provide a full and accurate declaration of its weapons of mass destruction and ballistic missile programs. We will judge the declaration's honesty and completeness only after we have thoroughly examined it, and that will take some time. The declaration must be credible and accurate and complete, or the Iraqi dictator will have demonstrated to the world once again that he has chosen not to change his behavior.Americans seek peace in the world. War is the last option for confronting threats. Yet the temporary peace of denial and looking away from danger would only be a prelude to a broader war and greater horror. America will confront gathering dangers early. By showing our resolve today, we are building a future of peace.の略)"
 …………
 殺されました。だからアメリカ人って嫌いさ。

1月17日(金)
 メイジの戦いはなかなかたいへんだ。
 力不足なので魔法で勝負することになるが、この魔法がなかなか相手を倒すほどのレベルにならない。イエーなどと高嶋忠夫のような掛け声をかけつつ魔法を使うのだが、最初はESやLSといった初歩的な魔法しか使えない。ちなみにESはESPの略で、他人が見ているとかからない。LSはLSDの略で、とりあえず気持ちよくなる。
 魔力が尽きたらポーションで回復するしかない。ポーションにもいろいろな種類がある。「あかぽ」は赤ポーションの略で、飲むと大きくなる。「あおぽ」は青ポーションの略で、飲むと小さくなる。「あんぽ」を飲むと自衛隊が大きくなる。「だめぽ」を飲むと生きる意欲が小さくなる。
 メイジは体力がなくてすぐに小腹がすくので、しょっちゅう飯を食う必要がある。さいわいメイジは、create food(おぜんや、ごはんのしたく!)という魔法でいくらでも食料を作ることができる。ところが宿屋のおかみが悪心を抱き、魔法のおぜんを普通のおぜんとすりかえてしまいました。食べるものがなくなったメイジはまたお婆さんのもとに戻り、今度は金の糞をするロバをもらいました。けれどもこれも宿屋のおかみによって、ただの老いぼれロバとすりかえられてしまいました。三度目にメイジは、こん棒を入れた袋をもらってきました。宿屋のおかみがそれを盗もうとした瞬間、メイジは「こん棒、袋から出てこい」と呪文をとなえました。すると袋から何本もの太いこん棒が飛びだし、おかみの背中をどんどんとどやしつけました。おかみは痛くて痛くて、ひいひい泣きながら、「いままでに盗んだものはみんな返しますから許してください」とあやまりました。こうしてメイジは、ごちそうを出すおぜんと、金の糞をするロバと、悪人をどやしつけるこん棒袋の三つを持って家に帰り、それからはのんびりと暮らしました。どっとはらい。

1月18日(土)
 農場で小動物を狩って経験値を稼ぐ。
 このへんは蟻や蠍や蛇や蛙などといった小動物ばかりいるので、レベルの低い者にはちょうどよい。
 小動物が出たら、遠くから先制攻撃する。
「うぜぇぇぇぇぇぇぇぇく!!」
 こう一喝すると、たいがいの小動物は逃げていく。
 戦闘に勝つと、イヤッホーというかキャッホーというか仏法僧というかぬっへっほぅというかヨーレイヒーというか、なんだかえたいのしれない発声で勝ち誇る。なんなんだこいつは。
 ときどき兎も出るので、一喝すると飴玉を尻から吐き出して逃げてゆく。これ、本当に飴なのだろうか。
 たまにサイコロも出る。たかがサイコロとなめていると、いきなり6の目を出したりアン入りだったり1の目から墨粉が出ていたりコロ助だったりして惨敗することがある。バクチは禁物である。

1月19日(日)
 ちょっとレベルが上がったので思い切って初心者ダンジョンにでかける。
 ストーンゴーレムやサイクロプスが出没する地下の迷宮。
 いまのレベルでは、いちどに一匹倒すのがやっとだ。
 「イエー」と叫ぶと、70%の確率で相手も「イエー」と返してくれるので(きょうの客はノリがいい)、その隙にパラライズの魔法をかけ、固まったところでぺちぺち叩くか、ESでポルターガイスト現象を起こして鍋や釜をぶつける。
 ところがいきなり8匹も登場しやがった。
 ボコボコにされて箱に詰められてコンクリートを流し込まれて大阪南港に捨てられた。いわゆるBOXというやつだ。
 復讐を誓う。

1月20日(月)
 復讐してやったケケケ。

1月21日(火)
 すこしレベルが上がったので、骨ピットにでかける。
 ピットはイギリスの元総理大臣。骨になってもブリテン魂で大英帝国を守りつづけるすごい奴だ。大骨ピットと小骨ピットがいる。小骨ピットが喉に刺さったときは、ご飯を噛まずに飲み込めばいい(豆知識)。他にも骨グラッドストン、骨ディズレリ、骨チャーチル、骨サッチャー、骨ブレアなどが出没する。
 骨チャーチルと骨チェンバレンにABCD包囲網をされてBOXされた。
 復讐を誓う。

1月22日(水)
 復讐してやったケケケケケケケケ。

1月23日(木)
 レベル19までは初心者ということで、どちらの国にも属さず気楽に暮らしていたのだが、レベル20になったらどちらか国民にならなければならない。
 さて、アレスデンとエルバイン、どちらの国民になろう。
 アレスデンはなんだかドレスデンを連想させる。空爆されて全滅しそうだ。それに語感が弱っちい怪獣っぽいのも気にくわない。日光を浴びたら死んでしまいそうだ。
 エルバインもエルバ島を連想させて、やっぱり負け犬っぽいが、ナポレオンだからまだましか。

1月24日(金)
 城の外を散歩していたら、アレス人につかまって麻袋に入れられた。

1月25日(土)
 むりやりアレス人にされてしまった。エルバインの言葉や習慣を教えろと強制された。

1月26日(日)
 将軍様の教えに従って、憎むべきエルバ帝国主義を倒し南北統一するその日まで、がんばるぞ!

1月27日(月)
 クロメイジさんからお手紙ついた。シロメイジさんたら読まずに食べた。しかたがないので殺して証拠隠滅した。ククク。

1月28日(火)
 ある日森の中くまさんに出会った。でもスタンさせてインビジで殺したのであとのことは知らない。ククク。
 貝殻のイヤリングをゲット。装備したら呪われた。

1月29日(水)
 なんでも、今月いっぱいでヘルプレスのベータ版は完了し、来月初頭から正式稼動をはじめるらしい。
 それに伴って有料化するらしい。月10ドルとか。
 いきなり言われても困るなあ。

1月30日(木)
 国際電話をかけて管理人にイチャモンつけたら、なぜだか10ドルのところを220バーツに負けてもらった。
 しかも部屋がスイートルームになっていた。なんでだろ。

1月31日(金)
 ひとりで蛇を狩っていたら、わらわらと戦士がやってきて、「うちのギルドに加入しないか?」と誘われた。
「全員レベル100超、ムキムキの戦士ばかりだ。メイジが欲しいんだ」
「君はただ補助魔法を唱え、メシを作ってくれるだけでいい」
「たったそれだけで、がっぽがっぽ金も経験値も入ってくる」
「しかも全国の旅館の宿泊、スポーツ施設、映画館の優待券がついてくる」
「今月までの特別キャンペーン価格だ。政府主催のイベントだから安心さ」
「なんと今ならこの優れもの包丁をもう一本と、とっても便利なレシピブックをプレゼント」
 などと言われて年会費5000G先払いしたのですが、まだ約束の場所に誰も来ません。
 なんでだろ。 

2月1日(土)
 今日はレイドデー。敵国での滞在可能時間が延長される日。敵が攻めてくる日だ。
 わかりやすく言えば南京大虐殺やソンミ村大虐殺のような、無辜の住民虐殺の日だ。
 幸せに暮らしている村に突如として押しかける屈強な戦士と残虐なメイジの群れ。たちまち起こる阿鼻叫喚のひびき。女は犯され老人子供は殺され、鉱夫や漁師たちは全財産を奪われたあげくはらわたをえぐり取られる。役立たずは殺され、屈強な男と美しい女は奴隷としてエルバに強制連行される。虐殺者どもが去ったあとに残るものは、死体と血の臭いと廃墟だけ。レイドデーとは、奴隷デーの業界用語である。
 私も殺された。なけなしの宝石も、鬼畜兵士どもに奪われてしまった。
 ああ、このような悲劇はくりかえしてはならない。
 ひとつの民族が分断されたために起こる悲劇は。
 いまこそ将軍様の指導のもと、武力で南北統一を。
 そして帝国主義の傀儡どもを皆殺しに。

2月2日(日)
 エルバの帝国主義者どもに報復するため、アレスの国力をこぞって攻め込む。いよいよ南進だ。
 武装している人間はすべて敵だ。敵に情けをかけてはならない。これは戦争なのだ。
 商人や漁師も許すな。奴らはわれわれの財産を奪ってきた、憎むべき資本家階級だ。
 女子供といえど油断してはならない。刃向かう気配があれば、すみやかに処置しなければならない。
 もしも両国の友好的な未来に貢献できそうな人材がいれば、ぜひともわがほうの教育施設で再教育をおこなわねばならない。そこではエルバの歪んだ洗脳教育から解放する教育とともに、労働のよろこびを実地に教える教育もほどこされ、心身ともに健康な有為の人材を育成するようなシステムとなっている。
 すべての財産は、最低限必要なものを除き没収される。なぜなら奴らの財産は、かつての両国間の不幸な歴史を通じて、われわれから搾取してきたものなのだ。謝罪と弁償を。そして報復を。
 統一の日は近い。

 殺した連中の中に、前からの知り合いが混じっていた。瀕死の彼に話しかける。
「なんだにょろすけさんじゃない。ま、このことは水に流して」
「ふつー殺したほうがそういう言葉を吐くか。それって人間としてどうよ」
 なんでだろ。

2月3日(月)
 今日はラグがひどい、とみんな言うので、ラグナロクにつないで目につく人間みな殺しにしてやった。ひどい奴はわしが許さん。

2月4日(火)
 インビジの魔法で透明になって敵国へ潜入し、殺しまくってやろうと思った。しかし耳に経文を書いておくのを忘れ、耳をちぎられてしまった。痛かった。

2月5日(水)
 インビジの魔法で透明になって敵国へ潜入し、殺しまくってやろうと思った。しかし雨が降ったら灰が流れ落ちてしまい発見されてしまった。殺された。くそぅ。

2月6日(木)
 インビジの魔法で透明になって敵国へ潜入し殺しまくってやろうと思ったら床にまいた小麦粉に足跡がついてばれてしまった殺されたあいつらなんとしても許せんわしを舐めるな天誅を下してやる天罰を与えてやる天網恢恢接して漏らさず天上天下唯我独尊天よ我に七転八倒を与えたまえノゾミカナエタマエコノウラミハラサデオクモノカ

2月7日(金)
 電車の中に敵国人がいたので殺してやった。一般人のふりをして近づき、つねに用意しているバタフライナイフで腹を刺してやると、内臓をはみださせながら「HELP!!」などといって逃げ出すので、「バーカわしの素早さは300だぜ逃げられるもんかククク」といいながら追いかけ、とどめをさしてやった。
 そしたらなぜか牢獄に入れられた。同国人を殺したわけでもないのに牢獄に入れられるはずがないと看守に抗議したら、警官とお医者さんがやってきていろいろ質問した。とりあえず病院へ行きましょう、と言われた。
 病院でもなんかいろいろ質問された。メイスやマントや血痕や蛇のシルエットを見せられて、これはなんだ、とか変なことを聞いてくるのでそのまま答えた。そしたらお医者さまは頭を抱えていた。なんでだろ。

2月8日(土)
 朝刊を読んだらわしの名前が書いてあった。「ネットゲームと現実とを混同 中年男電車内で外国人を刺殺」と太い字で書いてあった。その下に小さく、「原因となったネットゲームは即日廃止」と書いてあった。もうヘルプレできないのかぁ。なんでだろ。
 とりあえずいっぺんうちに帰りなさい、と言われたので、付き添いをひきつれて帰る。なんだか偉くなったような気分。
 うちに帰ったら、入り口のドアに「氏ねこのクソ野郎」と大きな貼り紙がしてあった。家に入ったら変な臭いがした。窓ガラスが割られて、そこから糞が投げ入れてあった。パソコンを開いたら、「氏ねやヘルプレスを潰した基地外め」などというメールが大量に来ていた。ネットサーヒンしたら、どこかの掲示板にわしの本名と住所とメルアドが書き込まれてあった。どうやら住基ネットからハキングしてきたらしい。

2月9日(日)
 もう誰も助けてくれない。


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