足して二で割れ

「ねえねえ、先週大阪に行って来たんでしょ」
「うん」
「面白かった?」
「むっちゃ面白かった。りんどんさん除いて、全員初対面だったし」
「人見知りするあなたには珍しいわね。ね、どんな人だった?」
「ううむ」
「説明に困るような人だったの?」
「いや、知らない人に説明するのって難しいよ」
「じゃあ近似値でいいから。くたさんって、誰に似ていた?」
「そうさな。喋り方は、掲示板での書き込みそのまんまの人だったけど。りんどんさんなんか、『もう、許さないんだから!』なんて本当に言われるとは思わなかった、もう死んでもいい、と感動してたからな。そうだな、見た目は……ううむ、ちょっと藤崎奈々子に似ているかな」
「くた=藤崎、という数式が成り立つわけね。どのへんが似てるの?」
「ちょっと天然風味が入ってるところかな」
「失礼な人ね。ういろうさんは?」
「あ、あの人は、アレだな、形容とか誰に似てるとかいうのが思いつかないな。河内のオッサン、というイメージ100%。純粋のまじりっけなし」
「あなた、しまいにゃ怒られるわよ。くろさんは?」
「そうだな、元大阪パフォーマンスドールの武内由紀子と、本人のページに描いてあるねこを足して、二で割った感じかな」
「くろ=(武内+ねこ)/2、という数式ね。でも武内を知らないわよ。わたし」
「ううむ、ちょっとマイナーな形容だったか」
「あなた昔から、松たか子は矢部美穂に似ている、なんてことばっか言ってるからオタッキー呼ばわりされるのよ。マイナーなものでメジャーを形容するなんて手法があるもんですか。だから押しが弱いのよ」
「押しは関係ないだろ。……たしかに、海遊館でも、エイが泳いでるのを見て、『エイはええなー』と二回も言ったんだけど、誰も反応してくれなかった。ちょっと寂しかった」
「押しというより、それはギャグに問題があるわね。ぽいうさんは?」
「ええとね、新屋さんから軽率を抜いて、みやちょさんから行動力を抜いて、そのふたりを足して二で割ったような人」
「いきなり数式が複雑になったわね。ええと、ぽいう=((新屋−軽率)+(みやちょ−行動力))/2、でいいのかしら。砕天さんは?」
「そうだな、いをりさんを五割増しくらいに恰幅を広げて、宇都宮先生を足して二で割ってから、浅井慎平のカメラテイストをふりかけて、最後に手塚治虫のベレーを被せたような」
「そういう、互いに交友範囲の違うひとを足しても、結局だれにもわからないわよ。まあいいわ。砕天=(((いをり*1.5)+宇都宮)/2)+(浅井慎平/カメラ)+(手塚治虫/ベレー)、で、いいのかな?」
「その、ベレーで割ったりカメラで割ったりするのはなんなんだよ」
「いいの! それで、みんなで新世界に行ったのね。鶴橋にも行ったのね。どんなところだった?」
「浅草に似てるかな。浅草から通人気取りと『浅草の灯を消すな』と言ってる連中と、浅草寺参拝客を追放して、倍に凝縮して、三倍呑気にしたようなところだった」
「つまり、新世界=((浅草−エセ通人−時代錯誤−参拝客)*2)+((浅草/呑気)*3)ってことね」
「だから、呑気で割るなってば。鶴橋はね、秋葉原ガード下のパーツショップ通りと、新橋の裏通りを足して二で割って、歌舞伎町のコリア通りの焼肉を三倍おいしくして値段を半額にしたようなところ」
「わからなくなってきたわ。ええと、鶴橋=((秋葉原+新橋)/2)+((歌舞伎町/焼き肉*味)*2)+((歌舞伎町/焼き肉*値段)/2)でいいのかしら」
「オレもその数式見たら、よくわかんなくなっちゃったよ」
「来週は神戸に行くのね。よくよくヒマな人だこと」
「うるさい」
「主催者のMICKさんって、どんな人?」
「そうだな、山口組系暴力団の三次団体の組長45%、ハードロックミュージシャン15%、スケベなおっさん15%、お笑い芸人20%、塾講師5%の配合ってとこかな」
「こんどはカクテルのレシピみたいね。MICK=(ヤクザ*0.45)+(ロッカー*0.15)+(スケベ*0.15)+(お笑い*0.2)+(真面目*0.05)なのね。はるばる仙台から来るという、こうしゃくさんは?」
「まだ会ったことはないけど、写真を拝見した感じでは、元女子プロレスラーの府川由美とアイドルの藤崎奈々子を足した感じかな」
「どうでもいいけど、あなた、今のアイドルって藤崎以外知らないんじゃないの? まあいいわ、こうしゃく=(府川+藤崎)、と……あれ、なんで二で割らないの?」
「……それは言えない」


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