センバツ21世紀枠を考える

 春のセンバツ高校野球がはじまった。
 ほぼ同時にパ・リーグも開幕。大相撲も千秋楽を迎え、優勝争いが熾烈になっている。
 きょうの日曜日などは、これらすべてを見るのでとても忙しかった。
 朝からNHKで開会式など見て、放送が教育テレビに切り替わると急いでチャンネルを切り替え、昼になるとTBSの西武ロッテ戦に切り替えてミンチーの好投を楽しみ、ときどきはNHKにチャンネルを戻して試合の展開を確認し、またTBSで西武のチャンスの場面を見守り、またNHKに戻して福井の大逆転を見逃したことを悲しみ、NHKで例のバカ総理がロシアでなんかほざいている場面になると教育テレビにチャンネルを切り替え、すぐさまBSに切り替えて相撲も鑑賞し、教育テレビに戻して試合終了を見てからBSで魁皇の優勝を見届け、また教育テレビで高校野球を見る。
 こんな具合で、とても忙しい一日を過ごしたのだが、ハタから見ると、「いい年をした中年男が、朝からベッドに寝っころがってテレビばっかり見ている。なんと暇なことか」と思われたことだろう。やむを得ないことではあるが。

 さて、そのセンバツ高校野球だが、今回から「21世紀枠」ということで、福島の安積高校と沖縄の宜野座高校が特別に選ばれた。この21世紀枠とはなんぞや。
 高野連の発表によると、「秋季大会の成績だけでなく、部員不足、天災、施設面などさまざまな障害を乗り越えてきた学校、他校の手本となるマナーを実践してきた学校を選ぶ」というものだそうだ。
 秋季大会の成績に関わらず、といっても、あんまりヒドい高校に出てこられては相手が迷惑、ということで、「県大会ベスト8以上」という条件が付いているらしい。あと、「今まで甲子園出場経験のない学校、あるいは最近30年以上出場していない」という条件もあるらしい。ま、そらそうだろな。PLとか選ばれても困っちゃう。

 そういう条件で各地区から9校が選ばれ、その中から安積と宜野座が出場することになったのだが、その選考理由が発表されている。これが面白い。いや、面白いといっては不謹慎か。
 甲子園出場の安積(東北地区)は、「グラウンドが狭く他の運動部と共用」というのが決め手となった。ただ貧乏なだけ、という気もする。
 これも甲子園に選ばれた宜野座(九州地区)は、「公立校で、野球部員が全員通学区内の出身」とのこと。越境入学がない、ということですな。ま、これは順当か。浦和学院なんかは、寮の共通語が大阪弁だった、という噂もあるくらいだし。
 帯広南商(北海道地区)は、「いままで退部した部員が3人しかいない」だそうだ。ひょっとして、入ったら逃げられないタコ部屋のようなところかも。
 稲毛(関東地区)は、「選手各自が7年連続で野球への取り組みをつづって作文コンクールに参加し、特別賞も受賞した」という理由。道を誤って野球雑文など書きだしたりしないか、ちょっと心配。そのうえエロサイトに認定されて、出場取り消しにされたりしたら、目もあてられない。
 町野(北信越地区)は、「過疎化、少子化が進み、2004年には廃校の予定。部員はたった11人」ということで選ばれた。なんか昔、「ドカベン」で、こういう学校があったような気がする。
 常葉学園橘(東海地区)は、「付属中学校で読み聞かせのボランティアを実践」で決定。読み聞かせ、って、どういうボランティアなのだろうか。お白州で、「このもの、不法なる抜け荷をおこない、しかもご禁制の阿片で数多くの女性をたぶらかした罪により、財産は没収のうえ、打ち首獄門に処す」とかやるのだろうか。
 桐蔭(近畿地区)は、「創部103年で甲子園出場35回の輝かしい歴史を持つが、進学校であるため部員が減り続け、いま16人」なので選抜された。でも、これまで35回も出てるんだから、いまさら選ぶ必要もないと思うなあ。
 境港工(中国地区)は、「昨年10月の鳥取県西部地震の直撃で、学校の施設、生徒の自宅などが倒壊。「がんばれ境港」をスローガンに健闘し、被災地住民に勇気を与えた」から。なんだか、聞いたことのある話ではある。
 富岡西(四国地区)は、「創立百余年の伝統を誇るが、あと一歩で甲子園出場の機会に恵まれていない」というのが理由。弱いだけじゃないか、などという気がしないでもない。

 この「21世紀枠」が今後も設けられるのかはよくわからないが、今後常設されるとしたら、こちらの枠を専門に狙ってくる高校も出場しそうだ。
「校長、ウチは県大会の準決勝で負けちゃったんで、地区大会に出られません。こうなったら、特別枠狙いでいきましょう」
「よし、さっそくチーム改革だ、部長」
 なんてことを密談したりして。
 いきなり野球部員を大量に解雇して12名だけ残すとか。
 グラウンドをぶちこわして、今後は河川敷で街灯を頼りに練習することにするとか。
 離島の学校で、島がとても狭く、外野フライを打つと海にボールが飛び込むとか。
 貧乏でユニフォームが買えないということにして、ジャージに背番号を縫いつけるとか。スパイクも買えないので、運動靴に画鋲を刺したら、足が血まみれになったとか。
 部員が少ないので、お山で鹿とか熊あいてに稽古するとか。そのため部員3名が熊に食い殺されたとか。
 キャッチャーが不始末をして指を詰めたため、サインが出せないというハンデを背負っているとか。しかも監督が対立組織のヒットマンに射殺されたため、いまだに監督不在だとか。
 エースの家に火をつけて、お母さんを焼き殺し、エースは毎日お墓に水と花を欠かさず供えるとか。エース自身も顔にひどいヤケドを負い、二目と見られない顔になったため、ゴムで作ったマスクをつけて試合するとか。
 貯水池に毒を放り込み、その県の住民の三分の一を殺害し、「がんばろう遺族」と袖に縫いつけ、遺族に勇気を与えるとか。
 部員がみんな、ボランティアで日本政府を倒すための革命活動に従事しており、官憲の目を逃れるため地下に潜って所在地不明とか。
 日本征服のため、部員みんなに、イカとかカニとかバッタとかとの合体手術を施して強化しているとか。

 部員がみんな、長打力もないくせに三振だけ多く、バントもできないし盗塁する勇気もないとか。しかも監督に怒られると萎縮するフヌケばっかりだとか。おまけに捕手は弱気の外角変化球一辺倒のリードで、投手はそのサイン通りのところに球がいかないとか。内野手はぽろぽろこぼすし送球が乱れるし、外野手は守備範囲が狭くて肩が弱いとか。せっかく呼んできたプエルトリコからの留学生も、変化球に対応できないしサードを守らせるとエラーばっかだし、箸でウドンを食うのだけ上達したとか。
 なんか親近感が持てるチームだな。でもこんなチームで、どうやって県大会ベスト8に入るのだ。最下位脱出だって難しいのに。


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