真夏の怪談

 夏といえば怪談の季節。ということで怖い話を集めてみました。できれば、真夜中、ひとりきりの時に読んでください。

 まずは正統派の怪談から。「廊下に何か居る」(秋日和の丘)。始め陽気に、だんだんと怖く、という怪談の基本線をきっちりと抑えています。夏祭り、なんてのも、陽気なだけにその裏が怖かったりするのですね。
 「怖くない怪談」(雑文館)。怖くない、と言いながら、きっちり怖がらせるあたりが怖い。脅かしていたつもりが逆に脅かされた、という話のバリエーションなのですが、さりげない書き方が逆に怖い。ところで新屋さん、現在消息不明なのですが、それも怖い。まさか。

 都市伝説、というものがあります。まあ要するにマク○ナルドのハンバーガーはミミズが原料だとか味○素は蛇が原料だとか新政府の血税は百姓の血を絞って西洋人に葡萄酒として売りつけるのだとか、そういうたぐいの噂が民衆の間で定着したものなのですが、怪談化した都市伝説、あるいは都市伝説化した怪談、というものもあります。有名なのは「トイレの花子さん」「口裂け女」「赤マント青マント」などですが、「本当にあった怖い話」(補陀落通信)などというのも。執刀医の松木さん、というのは、笛吹き獣医さんを予知したのでしょうか。ああうえださん去勢の危機。
 「星を見る人」(腰原伊織という者がいる)というのは、筑波学園都市に伝わる都市伝説なのだそうですが、妙なリアリティがあります。ラブコメっぽい出だしからいきなり落とす手法はさすがです。
 「しまっちゃうおじさん」(混沌の館)というのも、昔の「サーカス団」「人さらい」などの系譜を嗣ぐ都市伝説の一種ですね。どうも「しまっちゃうおじさん」と聞くと「ぼのぼの」のしまっちゃうおじさんを連想してしまうのですが、あれも考えてみれば妙に怖い。
 「自殺しないで」(MindRefugee)は、怖い話というよりは、嫌な話でしょうか。筒井康隆の「二度死んだ少年の記録」のような、生理的な嫌悪感があります。
 「夢について」(森で屁をこく)は、都市伝説が発生して伝播する経路を書いています。怪談自体も怖いのですが、伝播する経路を明らかにしていくのがいっそう怖い。

 霊が見える人、というのが世間にはいます。中には祈祷してお金をふんだくったり壺を売りつけてお金をふんだくったりする悪質な人もいますが、まっとうに普通に暮らしている人もいます。そういう人が、ふと、「あ……あそこに、」などと口走るのです。わしには見えないんだけどな、などと言っても無駄です。見える人には、道理は通用しないのです。怖いです。
 「霊視」(それだけは聞かんとってくれ)のようにはた迷惑に見えてしまったりもするのです。
 さらに、「霊魂2」(笛吹き獣医の雑文日記)のように、理不尽に宣告だけして逃げたりもするのです。
 しかし、霊視者だけを責めてはいけません。「霊障」(Watcher of the skies)のように、彼らも辛かったりするのです。


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