野村用語の基礎知識

 野村監督の就任以降、サービス精神に富んだ同監督によって、さまざまなマスコミ発言があり、阪神が新聞紙上を賑わす日も多くなりました。
 しかし若年のファンの中には、野村監督の性癖を知らず、監督の発言を誤解している人も多いように思われます。
 ここではそのような方のために、実際に報道された発言に即し、その真意を読解していきます。(発言は日刊スポーツなにわ版Webサイトから)
 これをもって野村監督を理解するための手引きとしていただければ幸いです。

(安達のコンバートの話題に)「いろんな人に言われる通りにやってたら、おかしくなったというじゃない。ピッチングなんて足がどうとか、腕がどうとか言われると、難しくなって訳が分かんなくなるからな。99番を付けているから大したふうに見えないが、あの身体と風貌で、18番でも付けてマウンドに立てば、雰囲気は大投手ですよ」

読解
 これは安達投手を褒めているようですが、実は全然褒めていないのです。「ピッチングなんて〜訳が分かんなくなるからな」で、頭が悪いということを言っています。注意すべきは、これが一般論であること。つまり、野村さんは、「投手は頭が悪い」と言いたいのです。もちろん、その裏には、「捕手は頭が良い」という言葉が隠れています。
 最後の、「18番でも付けてマウンドに立てば、雰囲気は大投手」が、野村さんのいちばん言いたいことなのです。もちろん、安達を褒めているわけではない。真意は、「エースなんて、わしが作るんや」つまり、素材なんて田畑程度で充分。大投手なんて言われたって、江夏も江本も山内もわしがおらんと碌に勝てんかったやないか、という、すがすがしい自己主張なのです。

(西武とのトレードで)「トレードマネーはどれくらいだったのかな。西武のことだから商売が上手だからね」
「僕はまだヤクルトと契約してるんですよ。12月までまだヤクルトの人間。給料もヤクルトからだし。だから無料奉仕の秋季キャンプだね。だから見物客なんだ」
「マスコミの協力なくして、観客も人気も出ない。監督の人気で客が呼べるのか? 来年は取締役営業本部長やな。ヤクルトでは広報部長やった。無給でな」
(裏金がまん延している事態に)「プロ野球界全体、アマもプロも国税の査察か何か入らないとな。高校野球だってアマチュア精神なんてやってるけど、お礼もらったら申告しなくていいのかな。高校野球はみんなそうだな。水面下で(裏金が)はびこっているが、国税が入っていいんじゃない。高橋(巨人)なんて、どうしてるんだろうね。法の抜け道があるんだろうね」

読解
 これはわかりやすいです。要するに、「ヨソに出す金があったらワシによこせ」この一言に尽きます。新外人獲得に関しても、ダンが連れてきたポンコツを獲得するのでなければいいのですが。

(2番坪井デビューを予告も、故障で出場回避) 「すいません。太ももが張ってるということらしいんで…。(坪井2番と)見出しをとってるスポーツ紙もありましたからね。広報の連絡不徹底で申し訳ない」
(坪井の打撃に)「難しいバッティングにチャレンジしているよ。(例えば)これから先、イチローがどれくらいまであのバッティングで生きていけるか。あれだけの天性があり、努力家だから長く出来るでしょうが、興味持っているんだけどね」
(坪井との野球談義の中で)「(ヤクルトの)古田さんは僕のことどういうふうに見ているかと(坪井が)聞いてきてね。以前、ミーティングで古田に『坪井は分かってんのか』と聞いたら『分かりません』と答えた記憶があるよ」

読解
 ああ、坪井選手のレギュラーは風前の灯火です。ここには出ていませんが、野村さんは坪井を、「天才」と呼びました。
 喜んではいけません。野村さんは選手時代、ささやき戦術で打者を悩ませました。要するにバッターの横で、「あんた、最近グリップが下がり気味やなあ。筋力落ちたんとちゃうか?」などと呟いてバッターの集中力を奪うというセコい戦術ですが、これが効かなかった選手が2人だけいました。長嶋と張本です。
 長嶋は人の言うことを聞いちゃいないアレだったのですが、張本の場合は、「だってバッティングにかけては、俺の方がノムさんより上だもの。聞いちゃいられないよ」と本人が語っているとおりです。
 つまり、野村用語では天才=長嶋=箸にも棒にもかからない、もしくは天才=張本=ワシの話を聞かない、ということなのです。どっちにしろ、「ワシの手におえん。使いたくない」ということなのです。その真意が「分かりません」「難しいバッティング」などに透けて見えます。もちろん、2番構想も、坪井のレギュラーおろしの布石です。「いやー、2番はやっぱり天才よりサインの送りやすい凡人がええわ。和田やな、やっぱり」ということです。

(安芸を離れる際に)「新庄はあれだけ右で飛ばすんだから最初から左打者、またはスイッチでもよかった。ピツチャーもやって内野もやって全部できて、スイッチもできて…。まあ、強いて言えばキャッチャーだけは、頭脳が要求されるから分からないけど…」。
「新庄がプロ1年目からピッチャーをやってたらすごい投手になってたんじゃないの。本人は目立ちたがり屋だし、自己顕示欲が強いから絶対にピッチャーをやらすべきだった」
(新庄に投手兼任指令)「ハンパやない。低めは野手球やけど、高めはホップしてすごい。フォークもよう落ちるし、練習したら150キロは出すで」。(練習後の会見では)「もっとはように新庄と会いたかったな。何でヤクルトは指名しなかったんや。(ドラフトの)指名あいさつには『ヤクルトを除く11球団が来ました』って…。それってオレの1年目(89年オフ)ちゃうか。しかも5位やろ。信じれんな」。
(シート打撃でホームランを打ち打撃開眼を言う新庄に)「ワッハッハ。1日で満足できるようなことはありえない。そんなに簡単に変えられないでしょう」。
「新庄は2、3度タイトルを獲れば、長嶋の後継者になり得る。天才的なところは似てるよ。体からにじみ出るというか、ギャルにキャーと言わせる雰囲気を持ってる。本人がこんなもんだとあきらめの境地に入ってるのを改めないといけない。夢とかビジョンをもつこと。豪邸に住むとか、いい車に乗るとか、野球がうまくなってお金を持てば、女もわんさかついてくると先輩から習ったもんや」

読解
 こちらは坪井と違ってわかりやすいですね。野村さんは新庄に期待など、カケラもしていません。単にからかって遊んでいるだけです。それにしても、「スイッチ」だの「読み」だの「投手」だの、酷いからかい方ですね。新庄が馬鹿でなかったら激怒するところです。ああ、新庄も天才と呼ばれ、長嶋に比べられていますね。危険です。

檜山の打撃について話している時に)「野球は失敗のスポーツ。バッティングの7割は打ち損じ。そこに野球の本質があり、じゃどうするか。それは謙虚さ。オレはたった600本しかホームラン打ってないけど、狙って打ったなんて話は考えられない。謙虚だと、いやでも育つ。真剣に取り組めば、取り組むほど育つよ。個人差はあるがな。(報道陣に)明日は檜山が一面か。古田でも1面飾れないのに」
(関本のケガに)南海監督時代、巨人とのオープン戦でセカンドがいなかった。若い鶴崎に「あす先発や。はよ帰れ」とワザワザいったのに、次の日ほおは傷だらけ。「合宿所の溝へ落ちた」といってたけど後で聞いたらウソ。酔っ払ってケンカして殴られたそうや。で結局桜井にポジションを取られた。きょうの関本を見て、思い出したよ。

読解
 ああ、早くも見捨てられた選手がふたり。桧山のレギュラーと関本の一軍入りはもはや100%ありません。


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