メジャーリーグの二球団削減案がオーナー会議で決定し、いま選手会と折衝をかさねている。具体的にいうとモントリオール・エクスポズが削減決定。あとミネソタ・ツインズとフロリダ・マーリンズのどちらかを削減ということらしい。さてこのチーム、どんな理由で消滅しようとしているのか。
日本でもナベツネが二球団削減案を打ち出して注目を集めたことがあった。こちらの理由はわかりやすい。自分の言うことを聞かない球団オリックスブルーウェーブと、日本一の貧乏球団広島カープ。これを潰して十球団とし、自分の言いなりになるチームばかりで一リーグ制に移行しようということだ。
言いなりにならないブルーウェーブはともかくとして、カープは貧乏ゆえに江藤、川口など主力選手をジャイアンツに譲渡してくれた球団。人材バンクとして活用しそうなものだが、どうも、あまりに貧乏すぎるのがいかんらしい。貧乏で貧乏でどうしようもないので、お手頃の値段でミンチー、ロペス、ソリアーノ、加藤などの選手を他球団にも売り渡してしまうのだ。ジャイアンツにとっては、他球団には手のでない程度の高額をつけられる程度には裕福であってほしいわけだ。
ツインズは二十世紀初頭からあった由緒あるチーム。三回の世界一もある。八十年代後半から九十年代にかけての黄金時代(ワールドシリーズ二回制覇)もある。マリーンズは歴史の新しいチームではあるが、九十七年にワールドシリーズを制したのはまだ記憶に新しい。エクスポズは世界一こそないが、八十一年と九十四年には地区優勝がある。こんなチームが消えるなら、もっと消えるべき球団が日本にはあるよね。阪神とか阪神とか阪神とか。
しかしながらこの三チーム、困ったことに今ではじり貧状態に陥ってしまっているのだ。客が来ない。儲からない。選手の給料が払えない。有力選手がFAで出ていく。チームが弱体化する。負ける。客が来ない。儲からない。選手の給料が払えない。FAの補償金でなんとかやりくり。主力選手がいない。弱くなる。負ける。客が来ない。儲からない……もういいかな。
そんなわけでこの三チーム、選手の年俸総額ではメジャー三十チームの最低額を争う。そして観客動員数でも最低を争う。はっきりいって、メジャーのお荷物球団と化してしまったのだ。
メジャーリーグとしては構想があるらしい。いま、アメリカンリーグ十四球団、ナショナルリーグ十六球団。それぞれのリーグが西地区、中地区、東地区の三つの地域に分割されている。これを再編成しようというのだ。
まずアメリカンリーグは今まで通り西地区、中地区、東地区の三地域とする。そしてナショナルリーグを北東地区、南東地区、中地区、西地区の四地域と変更する。そしてこの七地域に四チームずつを配置する。これで二十八球団となるわけだ。
もっともこの構想がそのまま行くかどうかはわからない。というのは当初の構想では、アリゾナダイアモンドバックスがナショナルチーム西地区からアメリカンリーグ西地区へと移動することになっていたからだ。ところがダイアモンドバックスは悲願のメジャーリーグ初制覇。まさか世界一のチームをそう簡単に動かすわけにもいくまい。
また削減対象チームにも意地がある。当初から削減対象と噂されていたのかどうかは知らないが、ツインズは夏場まで首位を走る健闘でアメリカンリーグ中地区の二位になった。エクスポズとマーリンズは相変わらずだったが。
これが日本球界にも波及してくる。ナベツネ発言もそうだが、まず二球団削減によって数十名のメジャーリーガーが路頭に迷うわけだ。むろん、有力選手は他球団が引き取るが、その結果メジャーと3Aの境界線上の選手が3Aに落ち、その中には日本球界を狙う選手も出てくる。今年は思わぬ大物外人選手が発掘できる可能性が高いのだ。
そのため各球団とも、外国人選手には今のところ消極的で、メジャーの動きを静観している。あの阪神ですら、外国人野手の獲得にはまだ動いていない。おそらく年末のメジャー再編成後か、春のロースター後に大きく動くのではないか。と信じたい。動かなかったら殺す。
もっとも横浜はさっさと外国人枠をテスト選手で埋めてしまったが、あそこは牛込さん退団後はフロントがアレだから。
また日本人選手の去就にも影響を及ぼしている。川尻、小宮山、谷繁、田口など、メジャー移籍を考えている選手たちだ。球団削減によってメジャーリーグの門は狭くなった。メジャー移籍を断念し、日本球界に残留する可能性は高くなる。
そして川尻は残留、田口は阪神移籍、おまけにロースター漏れの大物外国人野手が大当たりで阪神大躍進、なんてことになったらいいのだが、そんなことにはならないでしょうな。夢物語とお笑い下されい。